2018年 04月 15日 ( 1 )

『言葉の海へ』

高田宏著のこの本はタイトルだけは聞いたことがあった。もうずっと前に出た本なのに読んでみたくなったのは『日本語に主語はいらない』を読んでいる時に、たびたび引用されていたからだった。確かそこでは、今の日本語文法が明治に英語文法を元に作られたものから始まっていて、特に大きな影響を与えているのが日本初の近代的国語辞書『言海』であるというようなことだったと思う。で、この本は言海を作った大槻文彦の伝記。もう絶版になっているのかと思って古本屋に注文して入手したのだが、新潮文庫で新装版が出ているようで読後にちょっと後悔した。昭和59年発行のより、今の新しい本の文字の方が読みやすいのではないかと勝手に想像するからだ。

内容について想像していたのは、日本語に関する細かな話だった。つまり辞書をつくる過程そのものに焦点があるのかと思っていたら、かなり大きく違い、祖父から続く洋学者の家系に生まれた主人公の父の筋金入りの開国論者ぶり、攘夷派の動きとのせめぎあい、大槻家の仙台藩も加わった奥州と薩長との違いなどなど、明治維新の大きな政治の動きがスリリングに描かれていて、予想外の面白さだった。ただテーマになっているのは、とにかく一刻も早く近代化して欧米の列強から日本という国を守らねばならず、そのためには日本語を国語としてきちんと位置付けねばならないという熱意と執念である。さすがにこれは感動する。有名な人物がかたっぱしから登場して、その人間関係になるほどこういうことかと思ったが覚えていられるわけじゃないから知識としては残ってないけど、明治の熱気と大きな意味での愛国心に感動した心持でニュースなんか見てるともうがっくり愕然。

by kienlen | 2018-04-15 13:08 | 読み物類 | Comments(2)

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