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『最期の流儀-ガン患者にみる在宅終末期緩和ケアの現実と希望』

視力の落ちた人には優しい大型活字本。読みやすいといえば言えるが、おかげであっけなく読み終わってしまった。自分自身の「生き方」と「逝き方」に向き合う時が来ています、と帯に書いてある。そりゃあ、もう物心ついた時から逝き方を考えること抜きに生き方を考えられないから、なんていう抽象的な逝き方ではなくて、具体的な逝き方のハウツウ本。これを読んで私はモルヒネ使ってもらいたいと思った。それにはどういう医者にかかればいいのか、どういう情報が必要なのか。そこまで指南してくれるわけではないが、痛み治療の専門医としてペインクリニックを開業している医師の本なので、物理的な痛みを取る薬の効果とか最新情報については、ここまできているのだなとなんだかほっとできるような本だった。

ただし、痛みは物理的なものだけじゃなく魂の痛みまであって、これを緩和するのは医師には難しいというところに踏み込んでいる。この種山千邦先生という著者はとってもまじめなお医者さんなんだろうと好感をもったし、ここに引越ししたいと思う。それは本当に要検討である。ガンを罹った人の本は何冊か読んだことがあるが、これを読んで思ったのは、私が読んできたのは日本社会においては例外的に自立した人によるものであって決して一般感情ではないんだろうな、ということだった。だいたい当人が本にすること自体が相当なものである。これは医師の目から、表現者としてでない患者さんたちや家族を見ているからこっちが大方の現状なのかと思うと、かなり考えさせられた。ひとつは、いくら覚悟していたってガンと宣告されるショックは大きいとは思うが、かといってここまで人は、必ず訪れるはずの死について考えずに暮らしているものなのだろうか、というショック。悉く、人は日頃死については考えていないという前提から話しが始まっているのが気になった。でもこれが現実だったら、ふうん、なのだが、医者が患者の死生観をどう見ているかというは、心に踏み込む場合には重要になってくるんだろう。
by kienlen | 2008-08-06 22:05 | 読み物類 | Comments(0)

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