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法廷通訳と検事の一発即発的瞬間

裁判の傍聴に行った。傍聴記を2冊続けて読んで、気持ち的には影響されてしまって、入室の状況から観察モードになる。まず目に入ったのが知り合いの警察官。ご挨拶。それから知り合いの元記者。これもご挨拶して隣にくっついて座ろうかと思ったけど遠慮して1個あける。その後に次々と入室者があるが、記者っぽい人が多い。記者っぽいと感じるのは、なんとなく騒がしいのである。静謐感に欠ける。移動が多いしそわそわしているし、そして途中でウトウトしたりもする。なんて…深みに欠ける観察はともかく、この事件の判決がどうなるかは興味があって都合がつく限り通っている。3件の放火事件で、そのうちの1件では妊娠中だった若い女性が死亡しているのだが、被告は全面否認。小火の舞台がタイ人経営のスナックであり、被告が韓国人なので通訳も入る、という私的には、それだけで見所たっぷりなのだが、人間ドラマとしての傍聴記を書けるようなものではなくて、今日の内容も、防犯カメラを解析した警察官の証人尋問だった。防犯ビデオなんてやたらに設置すると煩雑になって人間ドラマからどんどん遠ざかりそうと感じた程度で特に盛り上がりはなし。

そこで通訳に注目することにした。というのは、通訳席に2人着いたことからして、傍聴経験の乏しい私には珍しい。ベテランが研修生を連れて来たのかと思ったら、そうじゃなくて1日がかりなので2人で分担するようにとの裁判所の判断だったのだった。まずベテラン風の女性が担当。検事の尋問は早口でフレーズが長いし、すごく大変そうで、途中で集中力が続かないと休憩になる。次、交替ってところで新通訳が資料を請求。テキパキと同時通訳を始め、ついでに場を仕切り始めた。弁護士が長々話し続けると「途中で切って。私の言葉を聞いてからにして」と注文。正確さを期するためには必要な要望だと思うが、なかなかここまで堂々と命令口調で言い切れる人はいないと思う。次に彼女は検事に向かっても「早口ですから」「私の言葉を聞いてから」と注文。ところが、こう言われて「はい」と素直に従った弁護士とも、ペースを落としたり言い換えしたりした証人とも、検事は違った。彼は通訳の注文に無言という反応を示し、その直後からますます早口で、しかも声を落として話し始めたのだった。さすがの強気の通訳も、それ以上は言わなかった。いっそもう一押ししていたら、どうなったか。いきなり盛り上がったかも。本日も被告の出番はなし。明日は被告人質問があるというのでまた傍聴のつもり。あの通訳さんのパフォーマンスをまた見たいけど、担当はどっちだろうか。北島トロ風の表現だと「華があった」な。
by kienlen | 2007-05-09 22:45 | 言葉 | Comments(0)

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