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何もできなかった最低の日の愚痴

小さな建築会社の社長から電話があった。在宅かと聞くから在宅だと答えたら「じゃあ、行く」と言うから「どうぞ」と答えた。仕事は煮詰まっていてどうしようもないのに、打ち捨てて外出する勇気もない小心者だから、外の空気を持って来てくれる人がいればいたで結構。よほど私が冴えない顔をしていたんだろう、入るなり「景気悪いね」と言われた。景気のせいにできないから冴えないのだ、こっちは。彼は、団塊の世代の移住、田舎暮らしを狙ってリフォームのお客を獲得したい、という話をした。いかにもありふれた話なので「なんか、最近そんなのばっかりですねえ」としか言いようがない。団塊、団塊って、数がいて注目された後の私ら少数世代は見捨てられている、というひがみか。「だからって何もしねえわけにいかないだろ」と社長。それはそう、がんばれ地元小企業、とは思うけど、移住だ、田舎暮らしだって、もうとっくに実績をあげている所は所なわけで、そこに参入するならするで何か新しいアイデアなり、自分たちのこれまでの実績を元に応用できるものがあればアピールすればいいわけで、だから今更なんだというのだ、ということを、社長に言った。

通じているのか通じてないのか分からないけど、彼は彼のペースで話している。引きこもっているようだから心配で様子を見に来てくれた、というなら嬉しいことではあるから、ひとしきり中身のない話を聞いた。すると社長は、低い天井を仰ぐようにして「昔は『頼みますよ』って仕事きたんだからなあ」となつかしむ。「つまり、営業しなくてもオリジナルなアイデアなくても仕事が自動的にきたってことですか?」と尋ねると、どうやらそういうことらしい。「そういう時代があったってことだけで幸福だったじゃないですか」と思うから言った。もっとも幸福な思い出だけでやっていけないし、その記憶がじゃまをするという面もあるかもしれない。ただ「将来○○になりたい」と言えば「そんな男の仕事」と言われ「男子のいる高校に行きたい」と言えば「そんな、赤軍派に入る」と言われ、手に職あったらヨメの貰い手がないなどと言われてきた自分からすると、常に感じていた「なんでこうなの??」という疑問との格闘の時期をここまで延ばせたことは、やはり羨ましいと思ってしまう。しかも景気のせいなんかにもできるようだし。内因より外因を探す方が健全だろうな。考えを変えよう、この社長を見習って。
Commented by tate at 2007-01-23 17:44 x
県外に住むうちの親が最近リフォームしました。話は3年前からあったのに、職人さんの手が空かなくて2年も待ったの。何で〜って聞くと「この家を造った人の息子だから。それに評判がいい!」と言い張る母に何も言えませんでした。頼みますよ、って今でもあるよ。腕と人間のつながりかなぁ。
Commented by kienlen at 2007-01-25 01:15
その意味での「頼みますよ」に徹した職人気質はいいですよね。そういう職人さんを待つご両親のような人がまた職人さんを育てるわけだ。ほっとする話です。
by kienlen | 2007-01-22 23:31 | 仕事関係 | Comments(2)

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