『変身』

カフカの変身を読み直した。友人たちと行っている読書会で課題図書を決める担当で自分の番になり、どうしよう、と思ってこれにした理由は、まあ、まずは薄かったからなのと、やはり印象深いプラハがカフカの町だったことと、だからその後カフカの生涯についての本を読んだこともあり、肝心の小説の方をちゃんと読むのもいいだろうと思ったからである。それに、何のかんのいっても経験上、評価の高い小説って、時代に関係なく面白いというのは感じている。本当はこの際、城、まさにあのプラハ城なのだろうから、あれを思い浮かべながら城を読みたいと思ったのだが、薄い方に日和ってしまった。そして結局、大変面白かった。朝起きたらいきなり自分が毒虫になっていたというくだりは有名すぎるが、その後どうなったかは、忘れていた。そもそも本当に最後まで読んだのだろうか。虫になったので会社に行けないし普通のご飯も食べられないし、それに家族がその虫を人に見せたがらず、できればなかったことにしたいという態度で接するので、虫は自室を出ることができない。もっとも出たいという風でもないのだが。ただ家族の様子は気になるので、チラチラ見える時は見たりしている。このあたりは実にかわいらしい。

盛り上がりは、あるようなないような。このあたりもとっても日常的である。読書会は自由に話すだけで特に決まり事はないので、テーマも決めないのだが、みなさん、良識のある方たちであり、お互い尊重する雰囲気があり、よって自然に収束的な方向に行ってはまた広がるというような感じで進んでいく。で、何人かが、どうして自分が虫になったかという点への言及なしであるのがすごい、と感心していた。それに触れていたらこのようなまとめ方ができないし、収拾がつかなくなってしまうだろうという方向にいった。確かに。しかしその話を聞きながら面白いなと思った。どうして虫になったのかということを私は考えたりしなかったし、だからその点の説明なんてことにも考えが及ばなかった。この小説がこんなに面白かったなんて、再読してみてよかった。人間って何って感じがよく出ている。滑稽な劇のようで、そのまま映像が浮かんでくる。脚本を意識しているんじゃないかと思うくらい。今回面白かったのは、5人の参加者が読んだ訳本の訳者が全員別人だったこと。だから訳を比べるだけで十分に面白かった。多和田葉子訳がちょっと独特な感じ。ドイツ語が分かればほんとに面白いだろうに、ああ残念。

Commented by jun at 2018-09-14 08:41 x
可笑しな日常を大真面目で詳細に描く、そんな面白さがこの本にはあったように思いました。私は何故か筒井康隆を思いだしました。
お早うございます、kienlenさん。
また、kienlenさんのこの感想や自然な分析批評にはいつもながら驚きました。記録に残すって感動を共有できる良さがありますね。
Commented by kienlen at 2018-09-15 21:02
Junさん、筒井康隆ですか、思いつかなかった。記録に残しておこうと思って書いてるブログなのに、滞ってます…。
by kienlen | 2018-09-10 15:36 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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