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女は二度決断する

一昨日のことだが、久々に映画を見に行った。見ようと思った理由は移民がテーマに感じられたから。ドイツのトルコ人移民といえば昔から移民研究のひとつの代表だったと思うが、で、今は移民問題がもっともっと多様化していているわけだが、この映画も舞台は現代、だと思う。もうまさに直球勝負という感じの作りで、こんなシーン出すのね、と感じるのがたくさんでてきた。まずは幸福な家庭が出る。母親は女友達と会うために子どもを夫に預ける。その様子から夫は小さなビジネスをしているようだ。どこにでもありそうな光景。で、主人公である母親が友達と温泉に行ってリラックスして戻ると警戒線が張られていて半狂乱になった彼女が、警察の制止を振り切って夫のオフィスに駆け付けると、そこは激しく爆破された後。コントラストがいかにも映画だけど、ただこれは十分に起こりうるわけで今も世界のあちこちで起きているわけで、胸が締め付けられる。

警察の調査が始まり、その中で家族像が描かれ、夫がトルコ出身であることや麻薬取引に関係していたこともあることなども明らかになり、そっちの筋にいくのかと思うと、全然違う展開に。裁判の様子はひとつの山場。容疑者の人権尊重の行きつく先がいかにも茶番という風に描かれる、というか極めてまじめに描かれていることで茶番が引き立つということかな。ドイツ映画の裁判ものといえばハンナ・アーレントくらいしか知らないような気がするが、しかし何か似たようなにおいを感じたりもする。茶番の判決の後の主人公の行動はスリリングに描かれている。そしてショッキングな最後へ。しかし彼女の心理状態を思えば妥当な最後と感じる。と思えるくらいに鬼気迫るものがあった。ただ何だか全体の印象が不思議、何を言いたいんだろう、なんて、考える趣味があるわけじゃないのに、何だかふとつぶやいてみたくなると言ったらいいのか…。嫌いじゃないけど、手放しで好きかというとそうでもない。どこがどう物足りないのでもないし、過剰ってのでもないし、なんか、この、そのまんま感が不思議なんだな。

by kienlen | 2018-07-05 19:00 | 映画類 | Comments(0)

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