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『国民語が「つくられる」ときーラオスの言語ナショナリズムとタイ語』

薄いブックレット、いつ買ったのか覚えていないがこういう状況下で読むにはいいかなと思って持参していたのを大変興味深く読んだ。タイの東北地方にはラオス語を母語にする人が多く、民族的にも料理もラオスに近いと聞いてはいたが、そういえばどうしてなのか知らなかったことに気づいた。恐ろしい。ラオスという国の統一はされていなくて争いがあったりして弱小化していたのに乗じてタイが属国にしていたそうだが、それをフランスが植民地にする時、タイが領土を守るためもあってメコン川のあちら側を割譲した、というところまではまあかろうじて知っていたが、これをラオス側からみると、タイの東北部は元々ラオス語だったのにタイの辺境の一地方に甘んじて差別されている、ということになるわけなのだ。

で、ラオスはフランスの愚民政策の下、ラオス語の正書法を確立しないままにきたそうだ。ここで問題となるのは、タイ語とラオス語がそっくりなため、タイと同じ、つまりサンスクリット語、パーリ語を語源にする言葉の表記に語源を残すという方法を取るのはラオスの独自性がないようで嫌だ、だったら発音通りに綴る方法にするか、いっそローマ字表記はどうだ、などの議論があったそうだ。とにかくラオスはラオスとして独立した国でなければならないのだから、何とか理屈をつけて実は各地に広がったタイ族はラオスから、みたいなとんでも説を出さざるを得ないなどの小国の苦悩に涙。ラオスに初めて行った時の一番の衝撃は本屋に本がほとんど全くないことだった。この本を読んであの光景と結びついた。コンパクトにまとめてあって読みやすく色々納得できた。

by kienlen | 2017-04-01 07:57 | 読み物類 | Comments(0)

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