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『日本1852-ペリー遠征計画の基礎資料』

草思社文庫900円+税。娘に割引価格での購入を頼み、この間東京へ行った時に受理。すぐに読み始めたが途中で他を入れたり時間がなかったりでやっと読み終えた。この本を知ったきっかけは偶然書店で見つけただけだが、結果的にすごーく面白かった。著者は1858年没というイギリス人のマックファーレンという方。全然知りません。イギリス有数の歴史・地誌学者なのだそうだ。訳者は渡辺惣樹さんという方でやはり知りません。で、この訳者が自分の著書を書いた後に、参考にした文献のひとつであるこれを訳したということのようだ。原著は1852年にニューヨークで刊行され、その後日本に来た西洋人が参考にした文献なのだそうで、ペリー提督もその中のひとりということ。となると、もっと別の内容だったら別のアプローチをされたんじゃないか、強引に植民地化されていたんじゃないか、みたいなことを考えてしまう。ここに出て来る日本はものすごく魅力的だ。政治は別にして。

豊富な資源と美しく豊かな自然環境と、誇り高く盗まず偽らず誠実で勤勉であると同時に娯楽も楽しむ人々。女性は美しく、男性もジェントルマンでどこに出しても恥ずかしくない。何かと比較対照されているのは隣国の支那なのだが、全体的に日本への評価が大変高い。あと、トルコとよく比べていて、言語から日本と近いのは中国ではなくトルコという点も納得って感じ。あとは、まえがきにも書いてあるけど、帝と将軍の権力の二重構造の説明に納得。これが開国交渉に影響しているのではないかと訳者は述べている。漁民があちこちに漂流してそこに住みついたり捕虜になって交渉事に使われる様子が詳述されているのも実に興味深かった。ロシアは漁民を助けてはロシア語を教えて交渉に役立てていた。こういうのは、山の民には想像が及びにくい話。著者は日本には一度も来たことがないそうだ。貿易が許されていたのは中国を別にするとオランダだけだった時代、オランダ人に化けて実は色々な国の人が来ていて、彼らが伝えたものや資料からの分析なのだそうだ。ヨーロッパの国々の中の関係性も大変面白かった。薄っぺらい自画自賛や愛国心云々教育より、こういうのを読んだ方がいいんじゃないかな。権力者がどうすべきかのヒントもあるし。



by kienlen | 2016-12-15 16:44 | 読み物類 | Comments(0)

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