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冠婚葬祭のひみつを暴く本を読んだ

斎藤美奈子『冠婚葬祭のひみつ』を読んだ。岩波新書はこのところ苦手だし、テーマに興味があったのでもなく、ただただ、斎藤美奈子だから、という理由で買ったのみ。彼女ので一番最近読んだのは『あほらし屋の鐘が鳴る』。こちらは若い女性をターゲットにした雑誌の連載を中心にまとめたものなので「オネエサンが教えてやるからね。オジサン達に騙されないでね」みたいなメッセージ的とでもいえそうな姿勢でいこう、という意図がはっきりしていて、いつものキレがあってとても楽しかった。それで、この冠婚葬祭の方も、多分、このテーマに興味のある人にとっては重要な本なのだろうと思う。これまでのハウツー本を網羅的に調査して、日本の冠婚葬祭文化の歴史を振り返り、いくつかの節目を発見して、ついには、前例のない少子化や家族形態の多様化で、この儀式がどうなっていくかまでを予想している。親切にハウツー部分もあって、必要な人には役立つようにもなっている盛りだくさんのサービス精神いっぱいの内容。そしてもちろん、斎藤美奈子ならではの、笑いのツボも散りばめてある。

ただ、私のように極端に儀式に無知で関心も薄い者が、こういう本を読むのが間違っているのだろう。こうなってしまったひとつの原因はタイの儀式の影響がある。儀式全般に疎いので見聞きしたり乏しい経験からの印象ではあるが、日本の場合は内向きで、タイは外向きと、目指すところが異なるように感じる。バンコクの団地に住んでいた時に何かの儀式が行われていた。スピーカーが外向きに設置されて、参加者のためというより住民に向かって音楽が流れてきて、うるさいことこの上ない。しかしこれが儀式をする際のサービスなので我慢しなければならない。村の結婚式も住民サービスを兼ねているから、名簿作成なんてケチは言わず盛大に振舞わなくてはいけない。多分日本だって「作られた伝統」でしかない今のスタイルになる前はこんな感じだったのかもしれない。この本では、明治から「伝統」が始まったことを指摘している。なんとなく皆が信じていることを洗いなおして欺瞞を暴くという手法は、斉藤美奈子の得意技。やっぱり、この本もそれが発揮されているといえる。誰にとっても避けて通れない冠婚葬祭文化に得意技をかけるとは、スゴイ本なのかも、と思えてきた。
by kienlen | 2006-06-08 17:20 | 読み物類 | Comments(0)

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