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松本健一『近代アジア精神史の試み』

2日もあけてしまった。母の新盆の法事があり、その日の夕方に息子が帰省した。来るという連絡が突然あったのは当日でバス停までの迎えまで要求してきた。それから珍しくそのまま家にいて夕食を共にした。娘は実家に泊まっていて夫は店だし、私も自分の夜の外出予定を告げると「なんか、こう、歓迎ムードがないよね」と息子が言うから日ごろの言動を考えたらそんなこと言えるわけないでしょと言ったら、冗談冗談と言っていた。という我が家は日本人とタイ人だからアジア人であり、例えば法要に夫が参加するとしても、ずいぶん異なるとはいえ仏教国だし、お坊さんも見慣れているし基本的な違和感というのはないが、これが欧米の人だったらどうなんだろうかとか、中国人だったらどうか、とかはイメージしてみたりする。してもみても何も分からないけど。アジアであるということの共通点て何があるんだろうというのは日ごろの疑問。たまたまこういうタイトルの本を2年くらい前と思うが、隣の隣の町の本屋で見つけて買っておいて時間が経ってしまっていた。

自分にとってはとっても刺激的ですごく面白い本だった。自分は基本書というか読むべき古典みたいなのをちっとも読んでないので、そういう基礎なしに評論家の評論を読むのもどうなのって気がしてしまうのだが、今さらそんなことはもうどーでもいいのだ。面白ければいいし、それに、大川周明や吉田松陰や高杉晋作や中国の誰や朝鮮の誰のを読んでないから理解できないというものでもなくて、ポイントを抑えた解説がしてあって、アジアって何なんだという疑問へのある側面からの答えみたいなのが明快に提示されている。新鮮だったなあ。日本で国体論が出てきたのと同時代に中国で民族主義的な太平天国の乱があり、朝鮮では東学というのが起こり、そこに共時性を感じたことが研究の発端だったみたいに書いてある。日本との比較でアジア、東南アジアからインドまでで起きたことを取り上げて、植民地であることを中心にした精神史。タイのクーデターにも触れてあった。興味のある国が軒並み登場するし、なるほど、の連続。少々難解なのを覚悟していたけど、そんなことはなくてとっても読みやすい。こちらも満足の1冊だった。ヒンドゥーナショナリズムに続いて読んだのは単なる偶然だけど、それと呼応するところもあり面白かった。次は、この本にも出てくるスーチーさんのにしよう。買い置きがあるから。
by kienlen | 2012-08-12 01:18 | 読み物類 | Comments(0)

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