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森達也『死刑』

少し前に読んだのがこれ、森達也の『死刑』という本。森達也は結構好きで何冊かは読んでいるし、この本の存在も知っていたが注文したり購入したりは見合わせていた。なんとなく必然性を感じなかったから。で、年末に書店でまとめ買いした時に偶然見つけてなんとなく買った。なんとなく読み始めたら思っていたより引き込まれて一気に読み終えた。森達也の目線は相変わらず一定していて、手をつないで一緒に思考の森を彷徨う的なスタイル。だからきっとこの目線付近の感性の人にはすごく読みやすくて共感しながらの彷徨になるのだろうけど、そうじゃない人には、どうなんだろ。私が自覚する分には明らかに前者で、そうなると、まあ読まなくてもなんとなく感じるみたいな錯覚も起こしてしまう。しかしもちろん読んでみないと分らないし、いい意味で期待を裏切ってくれたような気がした。死刑制度について断定できない自分がいる→弁護士、元検事、刑務官、死刑囚などなど、いろいろな人の話しを聞いたり読んだりしては考える→最後は○○になる。ミステリーじゃないから最後を隠す必要もないんだろうけど…。

で、森達也なので場面場面で立ち止まっては考えるわけで、その過程も読者に提示する。こっちに聞けばなるほどと思うところがあり、あっちに聞けばそれはそれでなるほどと思うところもある。私はキチンと自論に自信を持って常に自論を正当化しながら、そうじゃない相手を批判のみできるってスゴイな、本当にそれってアリかな、と思ってしまうところがあるので、この迷い方にホッとするところがある。かといって迷ったまま終わったら、ちょっとどうしてくれるんですか、と肩先くらいはつっつきたくなると思うけど、その点はキチンと結論を出している。それで、じゃあ自分はどうかということになると、私も基本的には○○の方に傾いている。この本を読んだから考えが変わったというのではなくて、諸事情からそう思っている。だから衝撃的な感想というのはないけど、涙が出る場面は多かった。
by kienlen | 2009-01-09 10:32 | 読み物類 | Comments(0)

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