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お行儀

『金閣寺の燃やし方』を貸してくれた友だちに、読み終えましたメッセージを送ったらすかさず返信があり、土曜出勤していて昼には帰るからランチをしようという誘いを兼ねていた。当方は午後に仕事が入っているので多少落ち着かない感はあったが、早めの時間に調整できるというので中華料理の店で待ち合わせ。そこで本を返し「面白いけど、この物足りなさは何でしょう」と尋ねたら「同じく」という感想だった。ただ、彼女にすると、この本を読み始めた直後に私が、吉田司にちょっと似てるけど彼を解毒した感じと述べたのが感覚にフィットしていたらしく、それで物足りなさの正体が分かったとのことだった。

吉田さんのが好きってわけじゃないけど、でもね、でもね、という方向に話しは進む。でもね、あそこまで言っちゃうのは勇気があるしインパクトもあるし、でもそれに比べると、まあ比べるのも何ではあるけど、やっぱこっちはいい子ちゃんだよね、お行儀がいいよね、という点で意見の一致をみた。お行儀の良さに物足りなさを覚える感性は似ているということになる。それからあとがきを描いていた作家のことになる。私はどうも苦手なのです、と言ったらその点も同じだった。今日は、昨日仕入れてきた軽いのの中から何にするか迷いながら読み始め。ごく地味な内職頼まれているのに肝心のブツが届かずやきもき。

by kienlen | 2016-01-31 22:48 | 読み物類 | Comments(0)

『金閣寺の燃やし方』

酒井順子著。三島由紀夫を本気で読み始めた友人が貸してくれた。「これ読むと三島より水上読みたくなるよ」のコメント付で。まさにその通りでした。ひとつも読んだことのない水上勉の、せめてここに出てくる金閣寺関係だけでも読んでみようかという気にはなる。でも時間がある自信がない。酒井順子さんは有名な負け犬の遠吠えを読んだきりで、その時、すごくまっとうな内容だと感じて、今回もそう感じた。そして大変に読みやすい。タイトルも秀逸。著者自身が三島好きで、そこから入ったようだけど調べているうちに水上寄りになっていく様子が感じられて面白い。

三島由紀夫の金閣寺は主人公が実際の犯人とかなり違って三島の造形、対して水上の五番町夕霧も金閣炎上も小説というよりほとんどノンフィクションということ。これを読み比べ、現地を訪れ、たくさんの資料と思索の結果を「母と故郷」「寺と戦争」「美と女」「生と死」という項目を設定して対比させている。このふたりの作家が両極端にいるかのようで実は…という結びの日本論みたいなところも納得で、うんうん。読後感は負け犬の時と似てて、うなづけるし鮮やかと思うのだが、何かもう一味欲しいなあみたいな。これは何なんだろうか。読み慣れていないからかもしれない。


by kienlen | 2016-01-31 11:19 | 読み物類 | Comments(2)

上京

一泊で東京へ行ってきた。仕事からみだけど、その場限りのものなので気持ち的には楽。娘の所に泊まりまた書店へ。このところ古い小説が多く、それはとても満足度が高いのでそのまま浸りきっていてもいいのだけど、でもやっぱりね、ということで新刊を何冊か仕入れてきた。金沢行きの新幹線の高崎と長野しか止まらないのに乗るとたったの1時間。速い。軽井沢でいきなり雪景色になる。信州の景色はやはり好きだ。色々あって深夜にカバンをひきずって帰宅。
by kienlen | 2016-01-30 23:57 | | Comments(0)

安定はない

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夫の店のコックさんが長期休暇を取ってタイに帰省中。それでほとんど1か月、夫が料理を作っている。しばらく現場を離れていたので腕が鈍っているんじゃないかと心配したけど、さすがに子どものころからやっているだけあり、大変美味しくランチに海鮮スープをいただいた。料理名はポ・テークโป๊แตก。酸味と辛味のバランスがほど良くて最高のお味だった。一緒の友人はグリーンカレーとラーメンとパカナ炒めを。冬のタイ料理も温まってよろしい。

そのコックさんの休暇は近日中におしまいで、やっと戻るねと言うと、どうやらタイで自分で商売を始めるらしく行ったり来たりしたいと言っているそうだ。やっと落ち着いて信用できる仕事人が見つかったと思ったところにまたこれ。もう毎日何があるか分からないので、今さら驚かないし、料理人が人に雇われることを積極的に望むはずもないだろうけど、裏事情を知る者としては、よくまあここまでやってきたものだと改めて思う。それぞれがそれぞれの分野でこんな感じなのでしょう、やってみないと分からない。

by kienlen | 2016-01-28 19:25 | タイの事と料理 | Comments(0)

パスポート

旅行を控えて娘が、そういえばパスポートの期限が切れると言ってきて、急いで書類を送った。それをもって更新手続きをしたそうだ。東京はそういう事務所も混んでいるそうだ。こっちならガラガラなのに。自分のは気になっていて確認したけど、娘のはつい最近作ったばかりのように感じて油断していた。彼女はゼロ歳から移動しているが、その頃はタイと日本の両方のパスポートを作った。そうでないと、日本に入る時にビザを取らないとならなず面倒だったから。日本のパスポートだったらタイに行くのにビザ不要。それで、5年前から日本のだけにした。

あの時、原発事故の時、いつでも国外へ逃げられるように息子と娘のを申請したのだった。そうそう当時は成人前だったので親が一緒に行かないとならなかった。今はそういう役目もない。全く楽になってしまった。息子は使わないまま期限切れ。娘に何年ものにしたのか尋ねたら10年にしたという。となると、次の更新は30歳、次が40歳…。あっという間だよ、と言おうとして止めておいた。言わなくても分かることであり、今さら何よと自答しながら自分に言い聞かせるみたいになってしまう。


by kienlen | 2016-01-27 19:19 | その他雑感 | Comments(0)

リライフ

今日はちょっと呑気な日で、昨日中古で買った少しボリュームのある本を読み始めた。来月の旅行に備えてチェコを舞台にした歴史もので、通りの名前や教会や博物館をメモりながら。面白そうで楽しみ。友だちと3時のお茶の約束があったので出かけて本の貸し借りを清算してから、改めて難しくない文庫を1冊借りる。それからしばらく本を読んで時間をつぶして夜の映画へ。ヒュー・グラントの映画を久り振りで見たけど、相変わらずの感じで面白かった。いつも共通しているのは、ダメとかいけないとか言わないで受容的で教訓たれずに説教もしない役であること、多分。それなのに今回は大学で教える役で、でも教えるのは嫌いなんだと言っていたから豹変したわけでもなさそうだった。

大ヒットした映画の脚本を書いた栄光の過去を持つシナリオライターが、歳取って仕事がなくなり焦っていたところに田舎の大学でシナリオライティングの講座を持つ話があり、気乗りしないまま赴任。いきなりかわいい女子大生にナンパされたんだかしたんだかで仲良くなり、講義は「自分で書け」で休講。同僚との懇親会ではジェーン・オースティンの研究者である上司に向かって、この作家の批判をしてセクハラ発言して顰蹙かって、それ以後も不祥事が続いてとうとうクビ寸前。でも、シナリオライティング講座の方は才能ある学生がいたり指導の賜物もありで首尾上々で人気は高い。同僚の悲哀ありハッピーありの人生が絡まって楽しく進む物語。中高年ならニタニタしたくなる内容で楽しかった。観客8人はまあまあか。女性の単独がなぜか多かった。ヒュー・グラントのファンでしょうか。



by kienlen | 2016-01-26 23:20 | 映画類 | Comments(0)

『いねむり先生』

初めて伊集院静の本を読んだ、いや、読んだといえるのかどうか自信がない。読書会の課題だったので図書館で借りて読み始めてみたけど、私にはまったくだめだった。まず文章、ああ文体というのかが苦手でどこにも響いてこない。先生という人物がみんなから一目置かれてひじょうにチャーミングで魅力的だと強調しているけど、どこがどうしてそうなのか分からず、ずっと上滑りしたまま、義務感で目を通した感じ。よって読んだといえそうにないが一応メモ。課題でなかったら1ページで挫折しているに違いない。評判はいいようなので、自分にはその良さが分からないということなんだろう。諸事情を知っている人向け、ファン向けの内輪の話という印象がぬぐえなかった。ちょっとびっくりした。


by kienlen | 2016-01-25 23:26 | 読み物類 | Comments(0)
中島らも著。好きな作家のひとり。かといってそんなに読んでいるわけでもない。読むとさらに酒を飲むようになりそうで怖いというのもある。今回読んだのは、古典が多い読書会の課題になぜか入っていたからで、しかも好きな作家だしで。それにしても私はこれを小説の世界で他人事として読むことはできない。アルコールへの依存度は相当に高いからだ、危機的かもしれない。この小説の最初の方にある、自覚があってその関係の本を読むのは、どこかでそこまでは至っていないと確認したいからであるというようなくだりは、もう本当にリアルであると思うくらいに依存している。これでこれ以上の量になったらアル中になる。母方直系にはアル中で死んだ人とか精神病院で死んだ人がいて、母は自殺なんだから、素質なしとも言えないのだ。そうしたいわけでは断じてないが、そうしたくないことをしないで済むなら人間社会はもっとマシになっていると思われるし、だいたいこんなことを書いていること自体がもうダメじゃないか。ああ、手が震えてきた気がする、という感じを読みながらずっと持っていた。

内容は極めてまじめだった。依存性のない大麻は禁止して使用者を犯罪者にしておきながらアルコールの野放し状況への強い疑問はごもっとも。まあ、かといって禁酒法なんかあり得ないというか弊害が大きいことは歴史が証明しているんだろうけど、もうちょっと買うハードルを上げてもいいんじゃないかと具体的な提案をしているのはうなずける。もっとも今は未成年の飲酒にはかつてよりは厳しいようで、中学生といっても通用しそうな娘など、友だちと居酒屋に入る時、自分だけ身分証明書提示を求められるそうだ。ということはアルコール問題が深刻化しているという証かもしれない。あんまり喧伝して経済に悪影響を及ぼすわけにいかないんでしょうが、それにしてもすさまじい酒の宣伝には疑問を感じなくはない。私は甘いドリンクが嫌いなので女性向けに販売されているようなのは全く興味なしでまだ助かっているかもしれない。いや、逆かな。ああいうので満足した方がいいのかもしれない。いずれにしろ、小説読んでの感想がこれって、アルコールに捕らわれているということに間違いない。ちなみに、大変面白かったし誠実で好感。こういう話を別世界のことと思える人、それはつまりアルコールに限ったことではなくて、何事にも深入りし過ぎないでそこそこで済ませられるタイプってたまにはいるんだろうなということは感じる。羨ましい気もするが、今さら戻れない、いつの時点に戻ったらいいのかも分からない。


by kienlen | 2016-01-24 17:54 | 読み物類 | Comments(2)

『食べる世界地図』

昨年ヨーロッパに行く前に読みたいと思って買ってあった本。それなのに読んでなかったのは、時間がなかったというだけではなくて、文章がすんなり入ってこなかったのにも一因がある。もっとも知らない地方の知らない料理名がたくさん出てくるので読みやすくないのは当然でもある。つまり読む側の問題。来月またヨーロッパに行くことにしたので関係国の料理を見てみようと開いた。でも最初に載っているのはフランス。著者がイギリス人なので日本人が書くのと視点が違って面白い。料理では悪名高いイギリスから見るとフランスの食文化がいかにすごいかがヒシヒシと伝わってくる。別にイギリスから見なくたって、日本人の修行先もフランスが圧倒的に感じられる。この間たまたま友人と入ったフレンチの店でも、包丁1本持ったシェフのフランス修行の話が出たし、特別なんだろうなという感じはあり、この本を読んで、ノルマンディに行こうよと、本気で行きそうな友人に本気でメールした。ノルマンディといえば上陸作戦しか知らないが、なるほどこういう食文化なのか。フランスは4地域の郷土料理が土地柄と共に紹介されている。

来月行くのはオーストリアとチェコとポーランド。この本では中欧と東ヨーロッパでまとまった章になっている。理由はよく似ているからだそうだ。「こうした国々に共通する共産主義の歴史は、キッチンにもよい影響と悪い影響を与えた」のだそうだ。手に入る食材が限られる一方、近代化の波から伝統を守る役目も果たした、のだそうだ。よって東側の料理は、思いがけない組み合わせだったり、別世界のものにみえるそうだ。納得。今になって観光客が食べるような料理がどうなのか、それを楽しみにしておこう。ユダヤ人の料理の影響が世界に広がったのがホロコーストではないかと書いているのも、確かになるほど。世界中の料理を紹介しているので日本もあるが、あんまり力は入ってないようだ。章末に紹介されているレシピがうどんというのも面白い。その点タイは祖父が老後に暮らしていて遊びに行ったそうで細かいことが書いてある。米がメインでおかずは副菜というのがイギリス人からみていかに驚くべきことなのかが、くどくど書いてあるのは面白い。旅の前後に読んでおくのは悪くなさそう。



by kienlen | 2016-01-24 10:37 | 読み物類 | Comments(0)

ブリッジ・オブ・スパイ

打ち合わせ兼のランチを除いて在宅仕事の予定だった。でも、徒歩移動なものだから出ると寄り道したくなってしまう。ランチの後、ベルリンの壁の写真展に立ち寄ったら、やっている人が面白くてしばし雑談。帰路、寒くて知り合いのやっているブックカフェに寄って写真展見てきた話をしたら「ブリッジ・オブ・スパイいいよ」という話しになり、行こうかなと言ったら時間を調べてくれて夕方上映があることが分かった。スピルバーグだよというからミュンヘン見たと言ったら、ああ、あんな感じねということだった。寒い国から来たスパイの世界だよと言うから、ああ、好きだったという話しになって上映時間まで話し込む。そして走って映画館へ。1957年、ソ連のスパイの画家が自画像を描いているところから始まり。そっか、自画像ってこう描くのだ、知らなかったことに気付いた。ギシギシ緊張というのではないが、熟した緊張感がずっと漂い一息つける間もないのに、こういう時に限って電話やらメールやらが来て、平日だし一応仕事気になるが見ない見ないと自分に言い聞かせる。

捕まったソ連のスパイを弁護することになるアメリカ人弁護士が主人公。スパイを弁護するということであらゆるところから国賊扱いとなるどころか、国の機関までがルールなんか関係ないという中、多民族国家アメリカはルールの下にこそ成り立っているとして職務を全うすることに努めるのだが、これって他の映画でも見たことある、そっくりだった。で、この弁護士の強さと正義感が物語を進めていく。実話に基づいているとのこと。興味深かったのは、ソ連と東ドイツの関係。アメリカに東ドイツを国家として認めさせたいというプライドを利用した作戦が功を奏す。東側の冷酷な恐ろしさを感じさせ、西側も冷酷ながらそれでも最低限のジャスティスはあるみたいな感じがプロパガンダっぽかったけど、でも感動、涙が出た。壁を築く時の緊迫感にハラハラ。ずっとハラハラし通し。アンダーでスタイリッシュな映像で、国家の冷徹さと、でも個人の愛と力の強さが強調されて希望があった。はあ、すごく良かった。2時間半があっという間だった。

by kienlen | 2016-01-22 22:31 | 映画類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


by kienlen
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