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首相官邸の前で

上京のついでにドキュメンタリーを1本見た。それがこの、首相官邸の前で。小熊英二が監督しているというのを、私が小熊英二の本をいくつか読んでいるのを知っている娘が教えてくれて、前回の上京時に見たかったけど後回しになっていた。地味なドキュメンタリーであろうことは想像していたけど、それ以上は想像できなかった。渋谷の小さな映画館は、さすがに人もまばら、とはいえ平日の昼間で10人くらいはいた。3.11の後で反原発運動が盛り上がり、大飯原発再稼働の決定にますます盛り上がり、結局再稼働をいったんは防いだというところまでを描いたもの。こういう時代になったんだ、と感じたのは制作方法。YouTubeにアップされたたくさんの画像を、許可を得た上で使い、インタビューと組み合わせて作っている。小熊英二が制作費も出しているそうだけど、この方法なら低予算でできそう、という気になる。きっとこれからも増えるんじゃないかな。首相への申し入れの画像にはご当人も映っていた。

日本人と意志表示は似合わない。登場している人たちも、そんなことは考えたことがなかったという人が中心。でもさすがに我慢ができないし、ここまでの規模のデモになっているのにマスコミは報道しないし、という憤りがヒシヒシと表現されていた。市民運動が分裂する過程も学習されてきているので、それを防ぐことへの努力も、それぞれの立場と考えからなされていた。アナーキストなのに政治家に申し入れなんて矛盾していて嫌だけど妥協したとか、黒い服装で怖そうな人たちと一緒にデモするなんて嫌だけど、やってみたらそうでもないとか。私自身はデモに行ってないので友だちから聞いただけだけど、聞いた話しの印象とは合致していた。反原発のデモの規模というのは60年、70年安保の時の学生運動の規模よりもずっと大きかったのだそうだ。知らなかった。日本のメディアのデモ報道のなさは、他と比べたら愕然とするはず。漠然と予想していたよりもずっと面白かったし、感動もした。



by kienlen | 2015-10-31 23:41 | 映画類 | Comments(0)
根っからの本好きの友人が貸してくれたもの。佐伯一麦著。初めて読んだ方。事前にテキストを読んできて会場で感想を書くという講座の記録ということ。講師である著者の解説があり、参加者とのやり取りもある。時には担当した編集者との会話や対談があったりと多彩な構成。まず太宰治からスタートして、私などが知っているところでは吉村昭とか萩原葉子とか島田雅彦とか、合計12作品。一番面白かったのは、同じ作品に対して評価の分かれる選評で、著者も「昔の選評はそれぞれの文学観を賭けて書いてますね」と言っている。作品を読んでなくても楽しめて、読んでみたいなと感じるのもあった。もちろん著者の文学観もでて、読みやすくて面白かった。
by kienlen | 2015-10-30 22:43 | 読み物類 | Comments(0)

軽井沢

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本日は軽井沢だった。昨夜も眠れた気がしないまま久々の早起きして6時半に家を出た。この時間なら道路は空いているのかと思ったら違った。睡眠不足で運転は嫌だった。行きはいいけど、帰りがやはりで、車中で食べながらでもちこたえた。紅葉がきれいでしょう、と言う人もいたが、かなり枯れていた。それはそれでいい。せっかくなので碓氷峠のてっぺんまで行ってみた。
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ここ。人も車もない峠道を群馬の方面に向かって走ってみたが、途中で引き返した。遊びに行ったわけでもないので時間が限られていた。冬にならないうちに峠越えをしてみたいと思った。旧軽を歩いたら、季節はずれなのに妙に人が多い。中国人か台湾人か分からないけど、日本語じゃない言葉の方が多かった。

by kienlen | 2015-10-29 22:37 | | Comments(0)
小説の書き方本の3冊目。1冊目は教科書的で2冊目は前衛的で3冊目はいかに、という期待で読み始めた。そしてこれは、いつどこで買ったか覚えていないけど、本棚にあったものなので私が買っておいたものでもある。読むのは初めて。著者の保坂和志さんの本は読んだことがなくて全く知らなかった。どうしてこの本、買ったんだろうか。どうもだいぶ評判になったもののようであることが読んでから分かった。著者は、実作者がこういうハウツー本を書くのは珍しい、と随所で述べている。私にすると、前2冊も作家によるものだったので、そうなんですか、と意外に感じたが、確かに発行はこの方が古い。まあ、そのあたりの事情は読む側にとっては重要ではないけど。

そういえば小説の定義って何だろうか。この本では小説とはこうあるべき、というのが結構前面にでていて、自分などが抱いている小説のイメージよりもだいぶそれは狭い。であれば私は小説をほとんど読んでいないかもしれない、ということは感じたけど、思わず涙ながらにうなづきたくなるような箇所もたくさんあった。例えば「〝作品〟の完成とは制作のプロセス自体のことなのだ」とか、映画を例に「短いショットには関心がなく、全体の流れを見てしまうのだ。・・努力して変えられるものではなく認識と記憶に関わる、ある種肉体的な特性なのではないか」とか、その他色々。全体的に書き方が大ざっぱだなと思っていたらあとがきで納得。書いていると論旨が厳密になってしまうのであえて口述にしたそうだ。厳密だから伝わるということは決してないから深く納得。しかしここでいう小説のハードル高すぎてさっそく萎えた。

by kienlen | 2015-10-29 19:50 | 読み物類 | Comments(0)

サイの季節

予告を見てて面白そうと思ったわけでもなく、どうしてもと思ったわけでもなく、他を見ようかとの気持ちもあったが、やっぱり行くことにした映画。理由はトルコ映画でクルド人がテーマだから。今思い出しても涙が出る、そして映画好きに尋ねても知っている人に会えない、もうずっと前に見た「そこに光を」というトルコ映画が忘れられないから。

観客は1人だった。1人で見るにふさわしかった。1979年のイラン革命で捕まった詩人と妻。妻は先に釈放され、夫の死を知らされる。遺体はなくて墓石の前で泣き崩れる。夫は30年後に釈放され妻を探しにトルコへ。というストーリーは、ぼうっと立ち上ってくるだけで、全編が詩。詩を映像にしたらこうなるのだ。私はすごく好き。見て良かった。でも見て見てという対象は思い浮かばない。最後の最後まで詩。フラフラ出てきた。
by kienlen | 2015-10-28 19:41 | 映画類 | Comments(2)

戸隠

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仕事で戸隠へ。友人が一緒に行きたいというので自宅までお迎えにあがって乗せて行った。せっかくだから鏡池に行こうということになった。途中で雪山が見えたので戸隠が冠雪しているのかと思ったら違って、あれは北アルプスだったのだ。しかしこのごっつい山肌と、樹木の一部だけが帽子のような紅葉を残している景色が、静かな生命力を感じさせてくれる。穏やかな空気の中で1日中寝転がっていたいと思ったら、それを実行している人がいた。1日中かどうかは知らないが。
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せっかくだからお食事でも、ということになり、たまに寄る店へ友人をご案内。
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このパンの外観を見た時に友人と、もしや、と同時に思ったのが、当たり。ヨーロッパで食べたパンにそっくりで感激。テイクアウトもできたので2人共が購入。ドイツで食べたのにそっくりで美味しいです、と友人が言うと、フランスの小麦粉を輸入してるんですよ、という返事だった。塩の名前と酵母の名前も教えてくれたけど、知らない名前で覚えてない。腹ごしらえしてから仕事現場へ。小さな庵を結んでお住まいのご住職にお話しをうかがう。大きく取った窓の向こうに紅葉の山々と民家。それをバックに庭木の落ち葉が縦横に舞い散る。はあ、美しい…。見とれてしまった。予定よりずっと長引いて、帰路は真っ暗。満月がとがった山のシルエットから上がってくるシーンに感動。戸隠で満月を見るなんて初めて。信州っていいよね、山のない所には住めない、といつものような会話をしながら戻った。慣れた道ではあるがさすがに真っ暗なので、連れがいてくれて良かった。



by kienlen | 2015-10-27 22:09 | | Comments(0)

素晴らしい誕生日

そっか、誕生日だ、と朝ちょっと思った。9時15分に書店で待ち合わせがあった。こんな時間に書店がやってるのかな、裏口から入るのだろうか、でも裏口知らないし、と思いながら行ったら案の定やってなかった。入口でしばらく待ったが、誰も来なかった。10時15分と間違えたのかと思うことにして駅ビルで本読んだり、朝の行き交う人の様子を見ていた。知り合いが通り掛かったのでちょっと話した。それから書店に行ったが会う予定の人とは会えなかった。訳が分からず、月刊誌と新書を1冊買って帰った。友だちから電話がありランチをってことになったが、その店はやっていなかった。午後はちょっと仕事の予定がドタキャンされた。
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タイ人の友人がお祝いしようというからタイ料理の店に行ったのに、その友人からは連絡もなく、姿もなかった。やっぱりと思ってひとりでナムトックを食べ、ワインを飲んだ。本日のナムトックは特に美味だった。友だちが電話で「花でも買えばあ」と言ってくれたので「机の上がまた本だらけになって花を置く場所がないよ」と答えた。しばらくきれいで花を切らさない期間もあったんだけど、また元通り。それにしても、朝から晩まで素晴らしい誕生日だった。ちょっと変わったことといえば、いつもそそくさと出入りしている夫が出がけに数秒立ち止まり「今日誕生日なんだって、初めて知った」というから「無関心でしょ」というと「自分の誕生日も無関心」といっていた。誰かが教えたらしいが来年は忘れているに違いない。

by kienlen | 2015-10-26 22:11 | その他雑感 | Comments(2)

赤ひげ

昨日、映画館で赤ひげを見た。これのDVDは手元にある。映画好きの友だちが3,4年も前に何枚かお勧めの映画を送ってくれたものの中のひとつ。その友人からは電話の都度「見たか」と確認され、見てないことでひじょうに顰蹙をかっている。この先、送ってくれることはないだろう。彼の選択は、これまでの経験から私の好みと重なっていることは分かっているのだが、いかんせん、家でDVDを見るのは集中できないしスクリーン小さいし楽しめない。どうしてもっていうのや、妙な寂寥感で苦しい時とか、合計しても年に数えるほどしか、その気になれない。かといって手元にDVDがあるとお金払って劇場へ、というのにはためらいもある、という半端でいたところに、娘から赤ひげがすごい良かった、どれとも違う、こんなの見たことない、見るべきであるという連絡があり、背中を押される感じで行ってきた。消費行動の直接的きっかけは、第三者のリコメンデイションの典型例。3時間の長丁場なので、やっぱり家で見るのはちょっと辛いだろうと思う。

黒澤明監督。モノクロ映画。1965年の公開ということは、戦後20年、どんどん豊かになっていた時代の日本、ということになるか。山本周五郎の原作が有名なのかこの映画のせいなのか両方か、赤ひげといえば医者の代名詞なんだからよほどヒットしたんでしょうね。赤ひげ先生役は三船敏郎で、最初は嫌々ながら、幕府が設立して貧乏人ばかりが集まってくる小石川養生所に着任する新米医師が加山雄三。加山雄三ってこんなカッコいいんだ。モノクロの美しさって独特だし。出番は少しだったけど狂女を演じた香川京子がお美しかった。杉村春子がいかにもな悪徳女郎屋主。赤ひげの立ち回りシーンにスキッとし、それぞれの語る人生が底なし井戸のように深く暗く、行くところまで行くと何だか滑稽でもあり、場面の切り替わりがカッコ良くて、全体に美しく、セリフはどれもピリリとしていて、でもわざとらしくない、疲れない。確かに素晴らしい。チャンスを逃さなくてほんとに良かった。娘にはお礼メールした。それと黒澤ファンの友人にも感謝しています。


by kienlen | 2015-10-26 16:05 | 映画類 | Comments(0)

『創作の極意と掟』

小説の書き方本の2冊目が本日の読書。図書館なので中身を見ずに借りてきた。筒井康隆だからというだけで。いつのかなと思ったら2014年の刊行、新しい。昨日のと違ってこちらは「色気」とか「凄み」とか、小説の味わいというんだろうか、そういう分類項目を立てて説明している。古今東西の小説の様式を分析紹介しながら、どんどん実験的な表現スタイルを追い求める著者の姿勢がど迫力。

筒井康隆を読んだのは若い頃。何を読んだかも覚えていないが、好きな作家と思っていた。でも、この本を読んで、ほとんどまったく何も読んでないことが分かった。勝手に好きだと思っていただけ。最近読んだのは、読書会の課題だったからの『旅のラゴス』。この本では、ちょこっと触れられていた。ファンに向けて先鋭化していく感じのスピード感みたいなのが面白かった。素人向けの実用書ではなくて高度。それでも読んでしまった。

by kienlen | 2015-10-25 23:15 | 読み物類 | Comments(2)

『小説作法ABC』

島田雅彦著。小説を書いてみようかと思って図書館に行ったら、小説の書き方のコーナーができているくらいにたっくさんあってびっくりした。こういう本って、そんなに需要があるんだろうか。文章だったらみんなに必要だろうけど、小説で。まあ、それで10冊近く借りた中の1冊。借りた動機は単純に、島田雅彦だから。筒井康隆のを平行して読み始めて、こちらを先に読んだ。出だしから面白かったので、図書館のじゃあ線も引けないし返却しなくちゃならないし参考書にするには手元に置いておこうかとアマゾンを見たら結構低い評価だった。そのせいで、というわけではないけど、いつでも読めると読まないという面もあり、まずは図書館のを読み切ることにした。小説って何というところから歴史的に網羅的に紹介しながら実作の場合のポイントを伝授しながら批評もありの盛りだくさん。大学の講義だけある。オーソドックスで上品で基本的で分かりやすくてごもっともな内容。

書き方についてはともかく、特に評論的な部分が興味深かった。自分がそういうものをほとんど読んでいないからというのはあるけど、村上春樹本は「おのが趣味の世界に引き籠り、身の回りで起きる不思議な出来事をファンタジーのスタイルで語る作風は江戸戯曲との類縁性が高い」など、江戸戯曲を知らないくせに納得してしまいそう。なぜそうなのかの時代説明もちゃんとあるし。村上春樹のグローバル商品の秘訣は「誰も傷つけず、万人を心地よくすることにあります」。私の周囲には逆に、心地悪くなっている人もいるけど、一般論ということで。「作品のディズニーランド化を図ることだといってもいい」「手軽に現実逃避ができるテーマパーク」「村上ワールドは理想化された日本の箱庭でもあり、いかにアメリカを取り込み無害化するか、そのノウハウを示すモデル」とも。それでアメリカとの付き合い方が未来を左右することになるロシアや中国で流行るとも。なるほどー。小説の作法よりこっちに気を取られてしまった。


by kienlen | 2015-10-24 17:07 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


by kienlen