カテゴリ:映画類( 327 )

バベッドの晩餐会

このデンマーク映画はずっと前に友人がDVDを貸してくれていて、見ようと思ったが、パソコンのせいなのか何なのか見れなかった。そういうことが良くあるのでパソコンがいけないと思われる。そうして何年も気になっていたところ、映画館でやっているのを知り、今日の仕事の終わる時間と映画の始まり時間がぴったりだったのでご縁かと思って行ってみた。観客は自分ひとりだった。DVDを貸してくれた友だちからは、いいよ、と聞いてはいたが確かに実に良かった。公開は1987年とのこと。物語の舞台はデンマークの寒村。敬虔で美しい2人の娘を自分の手足として布教に務める清貧の牧師を中心にその村は動いているらしい。コミューンみたいな感じ。そこに紛れ込んで来るのが士官だったりパリの歌手だったり。

どちらも美しい娘に求愛するが許されるわけがない。このあたりは父の意向を察してストイックになるのかただ神に心身を捧げているのか、きっと両方なのか、ちょっと微妙な気配を感じたりする。そういう前振りがあって、次にやってくるよそ者が、家族を殺されたパリコミューンを逃げ延びたフランス人女性。紹介者は歌手で、家政婦として住み込むというか居候というか無賃労働者というかになって救われることになる。14年後、フランスとの関係は宝くじを買うことだけだったが、なんと当たって1万フランが入り、これで牧師の生誕100周年の晩餐会をさせて欲しいといい実行する。タイトルにもなっているくらいだから晩餐会がメインなんだろうし、長々と続くその場面と料理はもちろん素晴らしい。料理で堕落しちゃいけないと誓っていた信者たちも極上料理とワインに心がほぐれ、いがみ合いもなくなり親愛の情が増し神の下に連帯を深め、和気あいあいとなる。静かで美しい人間讃歌という感じ。人のつながりとか老いる魅力とかもあり、じわっと涙が出た。大変良かった。DVDでここまで感動できるかは疑問。

by kienlen | 2017-01-29 21:26 | 映画類 | Comments(0)

奇蹟がくれた数式

素晴らしい映画だった。最近の中で一番、と娘にメールしたら、これを勧めてくれた友だちから全く同じメールがきた。2回行きそびれて本日が最終日で、でももう予定が入っていたので諦めていたら、今日は友人とランチ以外の予定をすべて反故にされ、腹がたって読みかけの本を読みながら夜の予定を待っている間にふっと冷静になって時間を見ると間に合う。それで映画館へ。広い劇場に観客は3人だった。インド生まれの天才数学者の伝記の映画化で、最初のシーンからなぜか涙が出て、ここまで終始全篇涙が出るというのはあまりない。どうしてここまで感動したかというと、やはり天才というものの崇高さがまずある。それからその天才を見出した数学者の別の意味での純粋さと信念と崇高さ、それから、天才のひらめきを聞かれた時の答え、それから有神論者と無神論者の徹底ぶりにも深く深く感動しました。インド人だからこそで、英国人だからこそという感じ。それと数学というものの魅力、内容的には自分には全く分からない世界だが、森敦と小林秀雄の対談の人間の建設にすごく感動した、あの感じと似ている。そこに植民地と宗主国の関係とか、家族とか恋愛とか戦争とか、大学人事の政治性とかちょこちょこ入るが、骨格はしっかりしていたし、役者も良かったし、最高でした。今日の約束を連絡もなく反故にしたタイ人たちに感謝。
by kienlen | 2017-01-20 21:45 | 映画類 | Comments(0)

シェーン

仕事→ランチミーティング→映画→タイご飯→帰宅という予定だった。映画は友人のおススメでこの間諦めた奇蹟がくれた数式を今日こそ、というつもりだった。ミーティングを終えてまだ時間あるから用事を済ませるのにちょうどいい、で、済ませる。映画館に着いてギョッとした。開始時刻を20分過ぎている。10分なら間に合うと思うが20分では始まっているに違いない。自分の中ではあっているつもりだった時間の計算、というほどのこともないのに、間違った。しょうがない、隣の映画館でシェーンを見ることにした。西部劇を見たいわけじゃないのに、聞いたことのあるタイトルだからというだけで。アメリカの価値観の原点ってこうなんだろうなと感じる映画だった。銃規制が進むわけないな、という感じ。そういう意味では勉強になった、というか、自分の中のアメリカのイメージそのまま過ぎて、一体このイメージがどう形成されたのかと逆に疑問だったくらい。原住民を殺して開拓した土地を守るため武装し、新たな入植者はまた闘い、家族を守りプライドを守るためにさらに闘い、暴力に満ち満ちていた。とっても疲れた。はやりアメリカ映画は苦手なのが多い、インド映画見たかった、すごく残念。
by kienlen | 2017-01-19 22:12 | 映画類 | Comments(2)

ボヴァリー夫人

本を読もうと思って手元に置きながらまだ1ページから進まず。と、映画を上映しているを知り、古いものなんだろうかと思いながら、立腹の昨日衝動的に映画館に行った。もっとも計画的な映画行きということは、よほどのことがない限りないので日ごろの行動パターン踏襲ともいえる。いつも行かない映画館で会員でもないし、でもリピーター割引というのがあると前回聞いたので行ったら1200円だった。許容範囲。観客自分含めて2人。多分熟年男性かと思われた、足下の感じからのみであるが。セピア色っぽいノスタルジックな大変美しい画面と、美しい人達と美しい衣服と調度品。まずこれだけでいい感じ。静かな音楽もいい感じ。始まりは枯れ葉の小道を息を切らせて走る美しい主人公がバッタリ倒れるところから。全身枯れ葉色のロングドレスで枯れ葉の小道に。いやはや美しい。

舞台は多分19世紀半ばのフランスの片田舎。修道院の様子がほんのちょっと出てきて、そこで育った主人公が結婚する所からドラマが始まる。ガーデンパーティーみたいな結婚式の場面もほんとにきれい。で、この女優さんが表情だけで心理を表現。ほんのちょっとの不安から、彼女なりにごく退屈な結婚生活への不満、買い物依存になる様子など本当にハラハラするが、どんどん依存させる商人のテクニックはさすが。そしてお決まりの恋愛依存というか、男。これがまたカッコ良すぎだけど、このストーリーと演技と自然の美しさの中ではすべてOKです。現代であってもリアルな展開だが、都会なんかじゃここまで美しい絵にはならないだろう。私個人的には都会嫌いだし。絵に描いたような善人がいないのがいい。ものすごく好みだった。立腹のどさくさで行ったが正解。役者がすごくいいと思ったし、すごーく単純化してエッセンスを分かりやすくまとめているので頭を使わなくても感性だけで見れて、ビシっと決まってる。自分的には完璧な満足感。生き方を考える上で若い女性が見る価値があると思う。後でネットでみたら2014年の映画で新しいのだった。古いのも見てみたいし、本は絶対に読みたい。だいたいこんな名作でさえ読んでないんだから…。

by kienlen | 2017-01-12 14:02 | 映画類 | Comments(0)

人間の値打ち

外仕事の予定がキャンセルになり、それだけだといいけど、気分の悪くなる出来事も。まったくなあ、である。夫の車のキーはなくすし、冴えない気分を転換しようと映画に行くことにして、時間の関係からこの映画にした。予告ですごく見たいと思ったわけではなく、いつもながら事前情報は皆無で、ただちょっとどんなかなという程度の気持ち。観客は自分含め4人。始まりは軽いテレビドラマみたいな感じだなと思って、期待もなかったのでまあいいかと見ていたけど、途中から結構面白いと思うようになった。どのあたりかというと、だんだんそれぞれの抱えている不全感とか孤独感が現れるようになってから。

富豪だが心満たされない妻、その富豪にあこがれる男は娘を通じてアプローチして危険な投資、富豪の息子も典型的なお坊ちゃんで、中流の娘はそれなりの傷をもち、それから貧しい青年は理不尽さに耐えて健気ではあるが満足しているわけではない、というありがちな人物たちが登場して物語も、いかにもな高リスクな投資が失敗したり浮気したりと、やっぱりありがち。でも、つまらなく感じなかったのは、それなりに感情移入できたから。娯楽というのではないが、かといってシリアスでもなく、ふざけた感じもある奇妙な味わい。これを半端で嫌とみるか不思議な面白さと感じるかは分かれそう。私は後者。孤独と暴力性についてちょうど友達と話していたところだったのもあり、分かるなと感じた部分多々あり。

by kienlen | 2016-12-20 21:32 | 映画類 | Comments(2)

ミモザの島に消えた母

今日は市内で仕事だったので歩いて現場へ。通勤ラッシュが終わって静かになった町を40分ほどの散歩。それも気持ち良かったし、内容的にも久々に充実感があり、終わってから映画を観に行くことにした。予告を見た時、サラの鍵の監督だということで気になったのと、母の死の謎を解くみたいな物語がやはり気になったのと、時間的にもちょうど良かったのでこれにした。観客は自分含めて2人。そんなに期待していたわけじゃなかったけど、自分的には大変好みだった。スタートが「現実に直面しないとダメじゃないか」みたいに言う男性に「直面してないのは兄さんでしょ」みたいに言う女性の場面。現実やら自分やらを直視しないままに来ることの問題についてはよく友人と話すので、おお!と、惹き込まれる。そのまま最後まで。いやあ、多分ものすごく地味な映画なのかもしれないけど、私はすごく良かった。この間のベストセラーが、面白いけど何か物足りないと感じたのに対し、こちらは、面白いというのでもないのに、どうしてこんなに感動するのか、という感じ。もっとも友人はベストセラーに痛く感動しまくっていたけど、これを見たらどうだろうか。もう明日で終わりなので見るわけないが。物語としてはいかにも作り物感と、情感としては直球感とがない交ぜになった印象がサラの鍵と同じだった。そしてとっても繊細で冷静で、音楽もすごく良かった。家族って何、をつくずく感じた。迷ったけど、見て良かった。こんな映画をこんな地方都市で上映してくれる映画館に感謝。
by kienlen | 2016-12-01 22:34 | 映画類 | Comments(2)

ベストセラー

昨日で一段落だったので今日は映画を見に行った。久しぶりの気がする。友達が見たいということで一緒に行こうと言っていたが、勤め人の友達が行ける日と自分の行ける日が重なるとも限らず、どうするんですかと聞いたら、先に行ってくれていいというのですぐ行った。始まりは1929年から。何を読んでもこの年が出てくるという最近で、またかという感じ。トーマス・ウルフという作家、知らなかった。聞いたことあるような気もするが読んだことはない。この作家の無名時代から有名になって亡くなるまでを描いている、というのは変だな、むしろこの作家を見い出した編集者が主人公か、ともいえず、両者の関係に、両者の家族及び妻との関係を絡ませている。実話に基づいているとのこと。

この間、友達と本屋をブラブラしながら「グレート・ギャツビーの何が面白いか教えてほしい」という話をしていた。あまりに有名ではあるが、それで2度読んだが、良さがよく分からない。そしたらこの映画に登場していた。ヘミングウエイも出ていた。家族や妻との関係でいえば、仕事のために家族を顧みないというのは日本では普通のことなので、この辺りの葛藤についてはなかなか実感しにくい。作家の妻を演じていたのはニコール・キッドマンだった。こういうタイプの作家に惚れ込んでしまうというのは、分からなくはない。今だったら境界例というところだろうか。それなりに面白く見たけど、かといって「見てみて」と言いふらすほどの感動はなかった、というか、どうなんだろう、こういう業界話って。見た人の感想は聞いてみたい。トーマス・ウルフの小説を読みたくなるかというと、それも違う。ひじょうに魅力的な編集者はコリン・ファース。素敵だった。それと作家を演じた人、知らないけどすごーく良かった。時代を感じる内容だった。

by kienlen | 2016-11-22 20:26 | 映画類 | Comments(0)

神のゆらぎ

前に東京に行った時、タイトルで興味を持って見てみたいと思ったけど時間なし。まさかこのような映画が長野で上映されるとは。しかし午前11時10分からの上映に行けるかというと都合がつかなかった。最終日の今日、行けるぞと思って行った。この映画館で複数の観客を経験したことがないが本日は何と5人もいた。エホバの証人の信者なのでしょうか、輸血する場面で顔を伏せていた人がいたし。見た後で、何の説明もないチラシを見たら製作カナダで、言語が英語になっている。え、英語だったんですか…。フランス映画と信じて見ていた。自分的にはフランス映画のタッチだったし、あれ、フランス語じゃないのかな。つまりそんな情けない客ではあるが、映像といい音楽といい表現全体がものすごい好みだった。そして深く深くストレートに死をテーマにしているのもすごい。というか、神か。というか、どちらもだ。

ストーリーは結構複雑で、しかも説明的なところがまるでなくて、ちょっと後手後手に少しずつズレながら、なるほどこういうことか、と気付くような展開。でもそれも自然に感じられるのだから、何かこう、すごい映画だった。主人公はエホバの証人の信者の結婚前のカップルで、男性の方が末期の白血病で女性は看護師。医師は命を救いたいので輸血を勧めるが、絶対にダメなので両者ともに断り続けている。エホバの証人のことは詳しくないけど、なるほど輸血を拒否する理由はこれなのか、と納得した。それにしても西洋の宗教というのは本来は永遠がある、ということをベースにしているのが、はかない命をたまたまいただいている、という感じが基本の日本人の自分にはやはり直感的に理解できないところだ、という気持ちをこの映画でも確認した。凝縮された不条理の連続。人の世界を俯瞰したらこんな感じなんだろうなとつくずく感じた。はあ、素晴らしい映画だった。優待日割引もなく、使えると思っていた割引券もこれに限っては使えないということで高かったが、充分以上に深く満足。大人の映画だと思う。

by kienlen | 2016-10-21 18:11 | 映画類 | Comments(0)

君の名は。

人気につられて見に行った。お子さまの来ない夜の部にて。しかしお子さまたちはもう多分とっくに見ていて、今は親世代の遅い人たちへの浸透という域かもしれない。観客は決して多くはなく、かといって少なくもなく、スクリーンはどでかく、しかも、酔っていたわけでもないのに間違えて前の方を希望してしまった。期待するでもなくしないでもなく、ただ単純に、どんなものなんだろうという好奇心で見たのだが、大変面白かった。これは誰にでも受けるだろうなという感じがした。といっても自分はアニメをほとんど見たことがないので他と比べることも何もできない。

とにかく分かりやすい。登場人物に極度に個性的なキャラクターはなくてフツーにいそうな人たちだし、絵はかわいい系でクセがないし、生活感たっぷりで身近だし、セリフはストレートで意味不明な箇所なし。物足りない感はあるが、日常会話なんてこんな感じ、疲れない。それでいて、人間の実存の不安とか孤独に強く働きかける。涙を流すところなど、この歳になってもスッと入ってきた。若い頃だったらもっと心を揺さぶられただろうという気がした。この感じで登場人物の年齢を上げて舞台設定をちょっと変えたら高齢層にも受けるんじゃないだろうか。もっともこのままで受けているようだが。村上春樹の世界だと誰かがどこかで書いていたように思うが、まさにそういう感じがした。

by kienlen | 2016-10-18 00:31 | 映画類 | Comments(2)

奇跡の教室

昨日また映画館へ。どうしても見たいというほどの決意があったわけではなく、夕方から聖書読む会に行って夜の上映に時間的にちょうどよくて、今週でおしまいだしということでふらっと行った。だいたいイギリス映画かと思っていたらフランス映画であった。これも実話ベースということで、学校関係者が見たら大変いいのじゃないかと思った。学校関係者どころかどっちかというと学校苦手な自分としてどうかというと、最近続いたように、ああ良かったというヘビーな満足感まではいかなかったけど、まあまあ楽しめたという感じ。普通に感動物語というか。あとはフランスの多民族多文化多宗教ぶりがよーく分かった。まあ、これがテーマのひとつではあると思われる。劣等生が多い問題のクラスの担任が歴史と美術史の20年のベテラン女性教師で、教えるのが好き、退屈な授業はしないと明言して学期が始まる。美術史の授業すごく面白そうだった。モハメッドが地獄にいる絵を示してモスリムの生徒がものすごい勢いで怒り、先生が「つまり絵はプロパガンダなんです」と怯むことなく力説。いかに信頼できる担任なのかというのがよく伝わってくる。そのため問題を起こしつつもクラスは持ちこたえているのだが、担任の代わりに別の先生が来た時は完全にクラス崩壊となり学校でも問題クラスとして取り上げられる。この時の担任の毅然とした態度、素晴らしい。

で、担任が歴史のコンクールに出ようと提案して、よくある感じの反対が周囲からも当事者の生徒の間からも出るのだが、指導が実って全国優勝という大快挙をなし遂げる。研究テーマはナチスに虐殺された子どもたち。今どきの高校生なので歴史をそれほど知っているわけではなく、知るにつれて恐怖と驚きと怒りとでのめりこんでいき、自発的にアイデアがどんどん出るようになる。ありがちな話ではあるが実話だし、それに、表面を取り繕ったような次元ではダメでどこまでも突っ込んで考察しなければいけないという指導、クラス全体での参加なのだから内輪もめしていてはいけない、協力にもっていく指導力がキー。こんな先生いたらいいなと思う。もっとも今もこの学校にこの先生はいるのだそうだ。教師希望の学生さんとかは必見映画ではないだろうか。あと、自由平等友愛という基本方針は揺るがないのだ、でもそれは安易に手に入れられるものではないのだというフランスの覚悟と宣伝にもなっていると思った。ナチスの収容所体験を語った男性が無神論者だと明言していたのも印象的だった。常に差異を意識せざるを得ない国にいるということは覚悟がいるに違いない。

by kienlen | 2016-09-29 15:48 | 映画類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


by kienlen