カテゴリ:映画類( 327 )

娘よ

この非日常的生活があと数日で終わる。週明けはテストがあり、レポートもありなので勉強やら何やらで大変な人が多いようだが、私は岩波ホールに映画を見に行った。母娘割引というのがあり、ご丁寧に証明不要とあったので、ここに大勢いる娘世代の誰かに付き合ってもらいたいと思ったが、とてもこんなマイナーな映画に誘えるほどの仲の人はいなくて一人で行った。本物の娘にも一応声をかけたが、明日本屋に一緒に行くことになっているしで今日は見送り。どうしてこの映画を見に行ったかというと、友だちに勧められたから。パキスタンは行ったことはないが、身近に感じる国ではある。友だちがいるし、関係者もいるし。これを勧めてくれた人も関係者のひとり。

物語はシンプルで時間も1時間半ほど。景色がすごくきれいだったし役者もきれいだった。が、内容はとてもきれいとはいえず残酷。部族間の争いに手を打つためにまだ小学生の娘を相手部族の初老という感じのリーダーに嫁がせることになり、それを知った母親が娘を連れて家から逃げる。これはとんでもないことで、相手部族にとっても父親にとっても不名誉この上なし。何が何でも探し出して殺さなければならない。尊属殺人は最近もニュースになっていたが、なるほどこうして起きるのかというのが垣間見える。とにかくハラハラし通し。実話に基づいてパキンスタン人女性監督が10年の構想を経て作ったものだそうだ。分野的にはロードムービーというものかな。道中の景色が変化に富んでいて、美しくてかつ怖い。内容は社会派でこじんまりしているようだけど映画の楽しみがいっぱい詰まっているという感じだった。紹介してくれた友人に、今でもパキスタンの田舎ではこんな感じなんでしょうかと聞いたら、そうですよ、という答えだった。



by kienlen | 2017-04-15 22:34 | 映画類 | Comments(0)

海は燃えている

どうしてもやらなければならない仕事を何とか終えたので、父とランチができて、その後、現場に行く仕事の最後をやり、なんと思いがけずワインをもらい、割らないように持って自転車で図書館に本を返却しに行き、やるべきことはまだあるので急いで戻ろうとして、しかし映画館の前を通りがかり何となく見たらこの映画が1時間後。これもご縁だ、やるべきことを忘れて入ってしまう。ロビーで書類記入とか読書とかで1時間はあっという間だった。そしてまたもたった1人の映画鑑賞。

難民がテーマというだけしか知らなかった。フィクションかと思っていたら、イタリア南部の島が舞台のドキュメンタリーだった。ここにものすごい大勢の難民がやって来る、という説明が入るのは出だしだけで、後はもうひたすら淡々とした映像。島が舞台というだけでふたつの無関係な話が進行する。ひとつは島の猟師の家族でひとつが難民の状況。島の住民の暮らしは一応のどか。難民の状況はものすごい過酷。ドキュメンタリーでこんなに遺体が出てきたのを見たのは、例の東北の「遺体」以来だ。生と死が紙一重であることを言葉にしないで教えてくれるものだった。家に帰ってテレビをつけたらシリアの状況だった。映画にはシリアからの難民もいた。いただいたワインはイタリアのだった。

by kienlen | 2017-03-19 22:39 | 映画類 | Comments(0)
昨日、昼間出かけて家に戻り、いつも行く映画館の回数券が残っていたのを思い出して確かめると4月で期限切れ。使い切るためにまずこの映画を見に行った。7,8人も観客がいてびっくりし期待も膨らむ。ミュージアムのお宝が次々映し出され、行くよりも臨場感あふれる映像、みたいなのを何も知らずに想像していたら違った。ウイーンの美術史美術館の改築と再オープンまでを描いたドキュメンタリーだが、裏方の仕事と予算削減や宣伝などの事情を伝えるもので、思っていたよりとっても地味な作りだった。美術品の修正の様子は、コツコツした職人仕事にあこがれる者としては興味深かった。ヨーロッパの美術館をいくつも見てきたので身近に感じた。最初に出てきたのは大英博物館の人だったし。保存できるのはヨーロッパの気候のおかげもあるのだろうな、熱帯であれはムリでしょう、と思いながら見た。映画を見てから夫の店に寄って飲み食いしてそろそろ帰ろうかと思ったところに、仕事の関係の知り合いが入って来てびっくり。しばらく留まっておしゃべり。帰りは雪降りの中だったので今朝もしかして積もっているかと思ったらそこまでにはなっていなかった。
by kienlen | 2017-03-11 21:27 | 映画類 | Comments(0)

暗殺の森

確かDVDで見たことがあった気がしてもう一度のつもりでさっそく初日に見に行ったのだが、見たことがあると思っていたのは勘違いだったようだ。森に向かう車の様子だけが既視感だったけど、こういうシーンはどこにもありそうだし。土曜日だったせいか観客が10人ほどもいてびっくりした。タイトルからしてストレートに政治的かと想像したら高度に芸術的だった。知識があったらもっと色々読みとれたと思うと自分に対して残念だが、何を意味しているのかと必死になってしまいつつ、そんなことよりもこの映像の美しさに浸れるだけで充分と思うのと両方だった。美しかった。このような抽象度の高い映画ファンがこんなにたくさんいるんだ、と感心していたら最後のタイトルバックになったとたん、どたどたと皆さんお帰りになり、これにもびっくりした。というのは、最後に流れていた歌の歌詞を見ずに帰れるのかと。

見た後にネットでの情報を少しみてみたところ、主人公がファシズムに傾倒して秘密警察に入る動機が、子どものころに犯した殺人への罪悪感とあったが、そういうシンプルな因果関係なんだろうかというのは自分には分からなかった。ムッソリーニ体制の崩壊する終わりの方で「みんなと同じことしていれば大丈夫」と言っている場面があり、そっちの方が少年時代の経験と関係するように感じたけど。それにこれがファシズムを象徴する言葉だろうし。でもそうか、懺悔の言葉があれだったからだろうか。それにしてもこれ、モラヴィアの孤独な青年が原作と知って懐かしかった。モラヴィアは若い頃に好きだったことだけは覚えているが内容は覚えていない。読み直したい。そんなのばっかりだ。孤独な青年の方が内容には合っていると思うけど暗殺の森の方がインパクトはありそう。ベルトリッチ監督のはラストエンペラーしか見たことないようだ。文学的というか哲学的というか区別できるのか知らないが素晴らしかった。もう一度見たらもっと分かることがありそう。

by kienlen | 2017-03-05 09:46 | 映画類 | Comments(0)
連日の上田が終わった。今日も缶詰でランチ30分を覚悟していたら1時間あったのでファミレスに行った。行きたいわけじゃないが他になくて。食べながらラーメン屋の方がマシだったか、しかしラーメン屋に1時間いられないしと思いながら美味しくもないコーヒーをおかわりした。ひたすら、エネルギーが途切れるのが怖くて。という本日とは無関係な映画は、しばらく前に見たものだ。これを見たかったというんじゃなく、映画でも観に行こうと思った時間帯にちょうどこれをやっていて、ミュージシャンのドキュメンタリーは好きなのもあって決めた。でも私はオアシスという英国のロックバンドのオの字も知らない。全く全く知らない。ちょうどタイにいた時期で、交通渋滞で疲弊しきって文化的に不毛な時期だった。

オアシスを知らないので最初は何が何だか分かりにくかった。コラージュみたいな面白い作りで、速いテンポで画面が変わり、そもそも登場人物の名前も分からず、まあその内に…と思いながら観ていた。映像にしろ話にしろ説明的な部分はなくて、突きつけてくる感じというか、攻めてる感じというか。人間味あふれるドキュメンタリーで、見ているうちにだんだん面白くなってきた。オアシスを知っていたらこんなに手間どることもなかっただろうが、特に家族関係のところは興味深かった。それとマスコミに対する態度とか。見ながら、昔の話じゃないのにレトロだなあ、今の時代とは違うなあと感じていたら、そういう趣旨もあることが分ってきた。だからああいう映像にしたのか、なるほど。つまりインターネットに席巻される境界線のあたりの話。久々見たドキュメンタリー。過剰な赤裸々さに愛が満ちていた。団地からスターが生まれるなんて今の時代にはもうない、それで音楽はどうなっちまうんだ、というくだり、はい同感です。ロックでした。結構良かった。

by kienlen | 2017-03-01 23:14 | 映画類 | Comments(0)

ヒアアフター

昨夜のことになるが、ふっと無料の動画サイトを見たらクリントイーストウッド監督のこの映画があった。試しに見てみたら、最初がド迫力の津波の場面で、プーケットの大被害を彷彿とさせるものでいきなり釘付け状態。その後もあまりの面白さに目を離せずに最後まで見てしまった。吹き替え版だったので楽で、これはこれでなるほどねと思った。バラバラの人たちが最後につながるという、何ていうんだろう、小説だと群像小説なので群像劇というんでしょうか、それ。小さなパソコン画面でこの感動ということは、大変素晴らしいということだ。劇場でもう一度見たいと思った。
by kienlen | 2017-02-21 23:47 | 映画類 | Comments(0)

弁護人

午前の仕事らしきものは連日キャンセル。友達とランチして午後は仕事かと思ったら、これも連絡なしのキャンセル。毎日無収入で毎日自由。こういうスタイルでやっているのだから自業自得。まあ、半ば予測していたのであらかじめ時間を調べておいた映画を見に行った。買い物依存だとモノが増えるが映画やら本やら酒に依存したところで目に見える害はなく何も残らない。本は残るといってもたいした害にならないし。映画館の窓口にいたのはよく知っている人だった。臨時のバイトだそうだ。この映画館の常連さんのようなコアな人でも、この映画の後は目を腫らしていたことや、彼女自身も見てすごく良かったと教えてくれた。でも、観客は自分含めて2人だった。

これも実話に基づいているということだが、始まりは1980年代初めのころから。つまり韓国は軍事政権下。高卒で苦学して弁護士になった主人公は金儲けに奔走して明るい。デモのニュースを見て、こいつらけしからんというような人物だったのに、諸々の事情から国家保安法違反事件の弁護をすることになる。このあたりの転身ぶりは、勝手ながら自分の中の弁護士像と重なってリアルに感じられた。法廷で、出来レースの公安、検事、裁判官と闘う場面のやり取りは面白かった。韓国映画を見ていると、ほんと熱いなと感じる。これもそうだった。目を腫らすほど泣いたかというと、そうでもなかった。行間を読ませるというよりは全部さらしている表現スタイル。面白かったけど、どうも自分としてはもうひとつ何か足すか引くかが欲しい感じではあった。


by kienlen | 2017-02-14 23:25 | 映画類 | Comments(2)

こころに剣士を

昨日は午前の用事が直前キャンセルになり、午後から会う予定だった父とランチをしながらゆっくり話し、午後はやるべきことをしなくちゃと思いつつも進まず、そういう時にぐずぐずしていても時間が過ぎるだけなので逃げ出すことにした。逃避先といっても、行きたいのは図書館か映画館くらいで、映画の上映予定を見ると「ナチスとスターリンに翻弄されるエストニアを舞台に…」とあり、これだけで即決。それが、こころに剣士を、という映画。心にも剣士にも惹かれるわけではいので、タイトルだけだったらまず興味を持たない。ちなみに原題に心はでてこない。5時20分という上映時間もちょうどいい。客は自分含めて2人だった。

ロシアから独立した小さい国々の事情はほんとよく分からないし、かといってあえて読んだりするほどのきっかけもなく、ちょっとでも旅をしたら勉強する気になるのだろうけどと感じているくらいなので、映画は便利。そしてこれも静かでささやかで実に良い映画でした。この間のクロアチアのもそうだけど、言葉少なで行間が豊かで表現スタイルとしてはすごく好み。もっとも饒舌で過剰なのも好きなので、単にそういう問題ではないが。第二次大戦中はドイツの占領下にあり、それからスターリンのロシアへ。もうそれだけで恐ろしいが、実際ひたひたと恐ろしい内容。というのは主人公である元フェンシング選手は、秘密警察に追われているからだ。田舎の小学校教師をして身を隠しているが…。物語に意外性はなくて、私のような謎解き推理力皆無の者にも予測可能なシンプルさだし、出来すぎでしょう、という場面は多々だけど、そんなことは重要ではなくストレートに深く感動、泣きっぱなしだった。やはり映画はひとりに限る。実話に基づいているそうだ。大変素晴らしかったです。

by kienlen | 2017-02-14 09:09 | 映画類 | Comments(0)

アルジェの戦い

先週の日曜日と同じスケジュール。ちょっとの仕事の後、小走りに映画館に行くとちょうどいい時間からの上映のこの映画に。先週に次回予定を見て、絶対絶対に見逃すまいと決めていたもの。アルジェリア独立戦争の映画は「涙するまで、生きる」しか知らずこれが2本目。見るのが辛い場面は多いが素晴らしい映画だった。植民地アルジェリア民族解放戦線のゲリラ戦を弾圧するために、フランスから大軍が送り込まれ、テロリストとしてしらみつぶしに捜索され逮捕され拷問され殺されて、最後に残った4人は住処を爆発されて爆死するのだが、それが1957年で、結局その後に独立を求める声は一般市民にさらに深く浸透していき戦車を出されてもデモが止まず、遂に1962年に独立するまでを描いたもの。中心はタイトル通りアルジェでの戦い。カミュ原作のは、山の中の村だったが、こちらは都市。白黒でドキュメンタリーのような作りでものすごい迫力。実戦に参加した人達も多数演じているのだそうだ。ゲリラ戦の戦い方とつぶし方の両方が詳しく描写されている。

タイトルだけ聞いたことがあるのと、テーマにひじょうに興味があった以外は何も知らずに見て、てっきりフランス映画なのでフランスの植民地を正当化する視点があるんだろうか、しかしじゃあ一体どんな、との疑問で見ていて、でもこれはどう見ても弾圧される側に共感するよなと感じ、後でチラシの解説を読んだら、1966年にベネチア国際映画祭でグランプリになった時、フランス代表団が反仏映画として反発、フランソワ・トリュフォーを除いて全員が退場したというエピソードがあるのだそうだ。そういえば劇中には、サルトルが独立支持者として名前が出てきた。今、噴出している色々な問題の根っこが見えるようで、今上映する価値はすごく大きいと思う。観客は5人。それでもひとりやふたりよりは多いので、喜ぶべきなのかどうか。こういう映画を上映してくれるのは大変ありがたい。重ね重ね、素晴らしかった。しかし1960年代の映画ということは、あれはCGじゃないということですよね。魂がこもっているというか、すごかった。

by kienlen | 2017-02-05 21:14 | 映画類 | Comments(0)

灼熱

映画の安い日。クロアチア紛争が重要なテーマであるらしいこの映画を観に行った。観客は自分含めて2人。クロアチア紛争についてはセルビアの花と、あとタイトルを忘れたがドキュメンタリーを見たことがあるくらい。確かこれらはそうだったような気がするが…。で、この映画はひたすら恋愛にテーマを絞ってあり、社会的な事情は遠景で説明はほとんど全くなし。それなのにヒシヒシと迫ってくるものがあり、私は大変良かった。しかし起伏のある大作が好きという人には退屈かもしれないなと思いながら見ていた。構成が複雑で、始まりは1991年の紛争始まり直前。だからユーゴスラビア時代ということになるんだろうか。説明はないのだが、つまりクロアチア人とセルビア人の若いカップルが悲惨な形で引き裂かれる。この紛争の背景には民族、宗教などがあり、それにバックに大国がいたりで複雑なのだと思うが、とにかく説明はなし。

衝撃的な形で一話目が終わり、悲惨なのに明るい音楽が流れて時代は一気に10年後へ。女性の方は一話目の続きらしく、紛争が終わったので破壊された家に戻ったということのようだが、どうなんだろうか。男性は一話目で死亡しているのだけど、同じ役者が別の人物を演じているのが、なるほど、不思議な効果。二話目は紛争によって深く深く皆が傷ついているということがものすごい言葉少なな表現ながらぐっと迫ってくる。ちょっとつついたら果てしなく噴火が続きそうという感じ。三話目が2011年。これはもう一見どこも同じなのね、という若者の生態の中に、一話目からの続きのような、独立のような、ま、そんなこと考えることでもないというようなタッチの展開となる。やはり同じ役者が演じているので、話は違うのに連続性を感じてしまう。最後はうんうん、という感じの終わり方。表現がアジア的というか、中欧のあのあたりは行ってみたいと思っているけど、ますます行ってみたい。地獄を見た人が人間の核心だけ描けばこうなるという感じというか、とっても良かった。

by kienlen | 2017-02-01 22:48 | 映画類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


by kienlen
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