カテゴリ:読み物類( 703 )

『「文学」の精神分析』

斎藤環著。図書館で借りたもの。これのちょっと前に小谷野敦の『もてない男』もざっと読んだ。今の気分はこういう評論というかエッセイになっている。仕事の合間にちまちまと読めるからだ。それでAmazonの評価はどうかなと思って見てみたら投稿はなしだったが、本の紹介で若い読者に読んで欲しいみたいに書いてあって、ちょっとびっくりした。今の若い読者はこういう文体を好むんだろうか。と書いてから、そうか自分だって若い時は分かるとか分からないじゃなくて難解な文体にあこがれたことを思い出した。小谷野本は逆に、友達はジェットコースターと言っていたが、つまりザザザという文体なのでこちらとの違いは大きかった。もっとも両者の間は全然関係ないのだけど。

この方の本は前に何か読もうと思って挫折していたように思うので今回もムリかなという感じを持ちつつ読み始めた。でも面白かった。そもそもこれを借りてみたのは、最初に宮澤賢治論があったからだ。とはいってもただ友達とちょっと話題にしていたというだけのことではあるが。それから小島信夫、三島由紀夫、石原慎太郎、中上健次、村上龍、京極夏彦、中井久夫…とくる。ここまでは、まんざら知らない人達でないので興味深く読んだ。作品は読んだのは少なくて読んでないのがほとんど。読みたくなったのは石原慎太郎。後ろの方は知らない作家が続き、多和田葉子は買ったきり挫折中だしで、読み飛ばし気味。次は何にしよう。この本と一緒に図書館から借りてきた『女の一生』に取りかかるわけには、絶対いかない、決意。この状況を脱したら読みたい放題。それを待つ。

by kienlen | 2016-12-29 22:22 | 読み物類 | Comments(2)

『あひる』

娘が絶賛で、何度もいいよいいよと言うので図書館で借りることにして聞いたら貸し出し中で予約しておいたのが、本日到着との連絡あり、明日から休館とのことなので受け取りに行った。立ち読みできるほど短いと言われていたがその通り。あまりにいいよいいよと言われたので期待してしまったけど、歳のせいだろうか、何がそんなにいいのか分からなかった。というメールをしたら、彼女はやはり相当好きらしい。また会った時にゆっくり聞いてみよう。しかし、本読んでる場合じゃないのだが…。あひるのおかげで他に4冊借りてきて読みたいものだらけ。ああ、この事態はあひるそのものだ。数日後には娘に頼んだのが何冊もくる。困った。でも楽しみ。こうなるとやはりあひるはいいとこ突いていると思った。
by kienlen | 2016-12-26 23:40 | 読み物類 | Comments(0)
川端康雄著。タイトルはもちろんだけどみすず書房なのが気になり図書館で借り、小谷野本に続いてこれ読み始めたらまた面白くて最後までいってしまった。読み始めから面白かったので娘にメールしたら「みすずだ!」と、同じ反応だった。がんばって欲しいです。それにしても本のおかげで仕事がさっぱりだ…、ということにしておこう、まずい。そういえば昨日タイ人に「ヤバイと大変は同じ意味ですか」と聞かれた。マズイも教えるべきだったか。でも意味は微妙に違う気もする。日本語って難しい…のではなくつまり母語の無意識さが難しい。この本はタイトル通りオーウエルの動物農場の解説。最初にテクストとして抄訳があるので復習で読み直し、改めて面白さを確認してから、ヤバイ、全訳をもう一度読むのだと思いながら解説へ。高校生くらいを対象と想定しているような書き方で、よって世代的に知らない可能性のある革命とは、ソヴィエト連邦とはなどはもちろんのこと、政治とは何かとか、基礎的な説明を織り込んでとてもとても分かりやすく、面白く、でも熟年高齢が読んでも多分退屈ではないと思う。少なくとも私は夢中に。でも知識いっぱいの人には退屈なんだろうか、分からない。人生に退屈しないコツは知識を貯めないことかもしれない。いや逆かな。

3回分の授業という形式になっていて、それぞれ「悪い時代の作家」「おとぎばなしの文法」「ことばのディストピア」というタイトルがついている。1回目は1903年に生まれて1950年に肺結核で没したオーウエルの短い生涯をざっと解説。スペイン内戦で喉を撃ち抜かれて奇跡的に助かったこと、出自、学校生活など。ざっとではあるが背景が分かる。カタロニア讃歌を別の人の作と思い込んでいた自分はバカである。どこかで探して遅ればせながら読まねば。2回目もタイトル通り。どれも今に通じるから面白いというかとっても怖いのだが、特に3回目の政治と言葉のところは全く今そのものだ。ストレートな言葉を使わないことの何が問題で何を意味するか、そしてどうなるか。最後の結びは感動。「ディストピア作家が希望を歌う?矛盾していると思うかい。でもね、そもそも希望がなかったら、作家はわざわざディストピアなんて書いたりしないんだよ。」まさに、そう思います。全体的にひじょうに好みだった。基本的に語りかけスタイルは好きではないけど、わざとらしさを感じなかった。良かった。





by kienlen | 2016-12-24 10:28 | 読み物類 | Comments(0)
この間図書館をブラブラしていて小谷野敦のこの本が目に入った。思惑にはまってタイトルに惹かれたのと、この著者の本は多分3、4冊読んでいると思うけど、結構面白かったなというイメージだったのと、何よりも出だしに掲げたタイトル「私は『自己嫌悪』が分からない」に、ギャーっと思ったからだ。もうそのまんま同感な文章が続くエッセイ集。発行は2004年で、へえ、筑摩書房。2000年から2004年にかけて色々なメディアに掲載したものに加筆訂正したものと書下ろしの両方を収めているそうだ。図書館で借りるのって難しいのを選んでも結局読み切れないことがほとんどで、今回はいい加減それに学んで軽く読めそうなセレクションにして、その中でも特に軽そうなこれをまっ先に読み始め、短いエッセイなので寝る前にボツボツいこうと思っていたら面白すぎて止められなくなった。

知識教養がすごいので、なるほどーなことばかり。それに目の付け所が分かるなあというものばかり。中国をシナと呼ばない理由というのは、私も、その一般的に言われる理由では根拠が薄弱ではないだろうか、英語はチャイナだしタイ語はチンだぞとどこかで思っていたので、そうだよね、こういう疑問抱いてもいいよね、とすっきり。で、話の発展のさせ方も面白かった。芸能界で時間を問わずにおはようございますの挨拶をするのはなぜかの考察も、いやはや面白かった。大河ドラマのキャスティング考など、大河ドラマも見てないし役者についても知らないのになぜか面白かった。大笑いした項目もあり。この間、荒川洋治講演会に行った後、友達が彼の本を買いあさって読み漁っているが、どのディテールに目がいくかの共通点があるんだろうと感じていたけど、私は小谷野氏の関心の方面には大変共感だった。おもしろくてためになった。すぐ忘れるのがもったいないけど。次は動物農場についての解説本にしよう。

by kienlen | 2016-12-23 19:26 | 読み物類 | Comments(2)

『脂肪の塊』

図書館に行こうかと思いながら、やはり仕事しないとと思い直して家に戻ったら図書館から返却の催促メールがきていた。それで出直して図書館へ。4冊借りて戻ろうとして、ふと脂肪の塊を思い出した。読みたいと思って読んでない必読本。家にあったような気がして探さなくちゃと思って延び延びになっている。図書館でいいじゃないか。古い全集のモーパッサンに入っていた。と、社会人用の机にいた2人が去ったのでちょっと椅子にかけて読んでいくかと開いたら、もうあまりの面白さに読みふけってしまった。人間の本性も戦争の本質もくっきり。すごく短くてすごい濃厚。

普仏戦争中、馬車に乗り合わせた中・上流3カップルと修道女2人と共和主義者1人と娼婦1人。もうこれだけで何が起こりそうかイメージできるが、そして期待を裏切るわけではないが、ストレートに引き込まれる。状況が浮かんでくるリアルな描写。この中でバカをみるのはもちろん最下層の娼婦に決まっている。食べ物を分け与え体を分け与え、それなのに最後の涙までがさげすみの対象に。1880年の小説。若い時、読むべき名作というのを読んでなかったのが幸いで今になって感動できて良かった。もっとも、読み直しだったらもっと良かったかもしれないが。はあ、素晴らしい。素晴らしすぎて仕事は全くできなかった。

by kienlen | 2016-12-21 21:32 | 読み物類 | Comments(0)
草思社文庫900円+税。娘に割引価格での購入を頼み、この間東京へ行った時に受理。すぐに読み始めたが途中で他を入れたり時間がなかったりでやっと読み終えた。この本を知ったきっかけは偶然書店で見つけただけだが、結果的にすごーく面白かった。著者は1858年没というイギリス人のマックファーレンという方。全然知りません。イギリス有数の歴史・地誌学者なのだそうだ。訳者は渡辺惣樹さんという方でやはり知りません。で、この訳者が自分の著書を書いた後に、参考にした文献のひとつであるこれを訳したということのようだ。原著は1852年にニューヨークで刊行され、その後日本に来た西洋人が参考にした文献なのだそうで、ペリー提督もその中のひとりということ。となると、もっと別の内容だったら別のアプローチをされたんじゃないか、強引に植民地化されていたんじゃないか、みたいなことを考えてしまう。ここに出て来る日本はものすごく魅力的だ。政治は別にして。

豊富な資源と美しく豊かな自然環境と、誇り高く盗まず偽らず誠実で勤勉であると同時に娯楽も楽しむ人々。女性は美しく、男性もジェントルマンでどこに出しても恥ずかしくない。何かと比較対照されているのは隣国の支那なのだが、全体的に日本への評価が大変高い。あと、トルコとよく比べていて、言語から日本と近いのは中国ではなくトルコという点も納得って感じ。あとは、まえがきにも書いてあるけど、帝と将軍の権力の二重構造の説明に納得。これが開国交渉に影響しているのではないかと訳者は述べている。漁民があちこちに漂流してそこに住みついたり捕虜になって交渉事に使われる様子が詳述されているのも実に興味深かった。ロシアは漁民を助けてはロシア語を教えて交渉に役立てていた。こういうのは、山の民には想像が及びにくい話。著者は日本には一度も来たことがないそうだ。貿易が許されていたのは中国を別にするとオランダだけだった時代、オランダ人に化けて実は色々な国の人が来ていて、彼らが伝えたものや資料からの分析なのだそうだ。ヨーロッパの国々の中の関係性も大変面白かった。薄っぺらい自画自賛や愛国心云々教育より、こういうのを読んだ方がいいんじゃないかな。権力者がどうすべきかのヒントもあるし。



by kienlen | 2016-12-15 16:44 | 読み物類 | Comments(0)
たまたま通りがかった古本屋で見つけて、古いけど安くないなと思いながらも読んでみたくて買った。1988年6月発行の社会思想社の教養文庫。私はこの年の11月の終わりころにタイに行ったのでだいたいすれ違いな感じだが、その頃はまだ著者で訳者の永瀬隆氏のことは知らなかったし、タイに行かなければあるいはずっと知らなかったかもしれない。泰緬鉄道建設に従事させられた捕虜が大勢亡くなったのはよく知られた話だが、そこで日本軍の通訳を務めていた人がこの永瀬さんで、彼が贖罪のために色々な活動をしているというのをタイで知ったのだった。かといって会ったことがあるわけではない。ただ、どんな人なんだろうと興味をもった記憶はある。カンチャナブリーにある連合軍の兵士の墓を見た時は衝撃だった。名前と共に書いてあった年齢を見て涙が止まらなかった。

その墓地はブーゲンビリアが咲き乱れ、きれいに手入れされていたが、この本に収められた日記を読んで、熱帯のジャングルの中で亡くなった人を葬るってどういうことかを考えさせられた。日記は日本の敗戦直後から始まっている。まずは永瀬さんで、昭和20年の9月22日から。亡くなった捕虜の墓地を探し出して記録するという作業の通訳を命じられたのだ。舞台はもちろんタイ。終戦の安堵感と、捕虜虐待の罪に問われるかという不安感が混じった気持ちのまま任務につく。日記のタイトルが「虎と十字架」である通り、日本人がとにかく虎を恐れる様子がいくらかユーモラスに綴ってあり、そういう日本軍兵士と一緒に連合軍側が十字架を探し出していく様子が生々しい。ああ、ここは…と感じるところに折り目があったりして、どこの誰かも知らないこの本の持ち主だった人に連帯感みたいなのを覚えた。本との出会いもご縁だな。もうふたつの日記がオーストラリア軍中尉とイギリスの従軍牧師のもので永瀬訳。外務省と日本人会への怒りのあとがきで出版の理由が分かる。ここだけ読んでもいいかも。

by kienlen | 2016-12-14 21:29 | 読み物類 | Comments(0)

『対岸の彼女』

初めての角田光代作品。友達が、この作家の中ではこれをぜひ、ということで勧めてくれたもので、大衆小説は読みやすいので他をおいてさっそく読んだ。その友人とは趣味が合う方と思うので期待したのだが、うーむ、正直なところ、何がいいのかほとんどまったく分からず、何だか元気をなくしながら読んでいたように思う。状況的にも息子が突然帰省したり、帰省のあり様がとんでもなかったりというのが挟まっていて気分が滅入っていたのもあるが、それがなくても近い感情になっていたと思う。学校でのいじめ、家族、学校や職場での人間関係、子育ての悩み、夫の無理解、義母との問題といった女の世界の諸々が書いてあった。そう考えると、多くの共感を呼ぶのはなるほどと思わないでもないが、こんな風にステレオタイプに悩むんだろうか、というのがちょっと分からなかった。細部でひねらず構成でひねってあるのも、好みからすると逆の方が好きかも。

そもそも私自身が、ここで扱っているような類の問題を経験していない、わけでもないが、このような捉え方をしていないのでリアルに感じられない。マスコミ報道等ではよく聞く話だが、どこらへんに真実があるかが本当のところは分からないし、というか、そんな単純な問題に思えないので、小説の中でストレートに扱われてもな、みたいな。むしろ少しずらして表現してもらえると、読む側が自分なりに微調整して焦点を合わせられるんじゃないかという気がする。まあ、このあたりは好みの問題が大きいのかもしれない。ベタで分かりやすい方がいい場合もあるだろうし。これを読みながら奥田英朗の沈黙の町でを思い出していた。ちょっと似ているなと思って。でも奥田英朗のは好きなのはなぜだろうか。社会背景への言及の有無とか、そのあたりかもしれない。ここまで女の世界で完結できるって、ある意味すごいなあ。逆にいうと、自分はそういうところから逃げてきたのかもしれない、直面しないで。と考えるといい本だ。友達はそのあたりで勧めてくれたのかもしれないと思ったりもする。

by kienlen | 2016-12-11 22:03 | 読み物類 | Comments(0)

『日記をつける』

荒川洋治の講演会に行った時、一緒に行った荒川ファンの友達に影響されサインもらうために購入した本。岩波現代文庫。講演がすごく面白く、この本も語りのタッチと似ているなあ、面白いなあと思いながら読んだ。娘にこういう本を読んでいると話すと、彼女はずっと日記をつけているそうで、1日の整理ができない日も日記を書くことで落ち着くのだそうだ。へえ、と思っていたら、ちょうどこの本にもそういうようなことが書いてあった。そんなこともあり、細部の積み重ねで成り立っているエッセイもいいものだ、なるほどあの友達が好きなのは他の読書傾向と併せて理解できるぞと思いながら読み進めていくと、ブログについても割合と紙幅を割いている章があった。ブログに対しては、ここまでなのかとびっくりするくらいに批判的で、個人的な行動を無許可で書かれるのは嫌など一部賛同できる部分はあったけど、すべてそうそうとうなずけたわけではなかった。どちらかというと前半の方に面白味を感じた。
by kienlen | 2016-12-09 19:51 | 読み物類 | Comments(2)

『佐藤優の沖縄評論』

しばらく前に読み終えた本。いつ買ったのか覚えてないが、琉球新報社の連載をまとめたものなのでお風呂で細切れに読むのにちょうどいいと思って入れておいて、チビチビと読んでいた。沖縄戦を生き延びた母親を持つ著者は沖縄のアイデンティティを持つとのことで、その視点と中央からの発想をもよく知る視点と、経験、知識を動員して沖縄の人たちに向かって国家が何をするか、官僚の思考形態はどうで、それに対してはどう対処するのがいいか等々を具体的に教える形式のも多い。そういうのには、心の中でがんばれ、と言っている自分がいる。ちょうど鳩山氏が首相を辞める前までの時代なのでだいぶ前ということになってしまうが、自分がちょうど辺野古を見た頃と一致。佐藤氏の本は実用書として役立つと思っているがこれも。はずれがない著者。
by kienlen | 2016-11-20 22:21 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


by kienlen
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