カテゴリ:読み物類( 711 )

『ボヴァリー夫人』

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この間映画を見て、やはり小説を読まねばと決意。何度目かの取りかかりでやっと読んだ。後半に差し掛かっていたので、今回の山陰への旅で終える予定だったがダメで、昨日の上田行き電車まで持ち越した。なるほど、映画を見た後にネットでの評判をみたら評価はかなり低めで、へえ、私は良かったが、思っていたのだが、小説を先に読んでいると自分もあんなに面白いと感じられなかったかもしれない、と小説を読んでみて思った。映画と小説が別物とはいえ、やはりこれだけの長大なのを映画にするのはどこかを取り出して強調せざるを得ないんだろうし、ああしてエッセンスをシンプルに表しているのかと思ったのだが、そんな単純ではないのだ、多分。ストーリーも違うし、主人公の性格も夫も周囲の男も、映画を見ていなければかなり異なる人物をイメージしたと思う。

映画にはない小説の楽しみは何といっても文体。これはすごく好みだった。生島遼一訳の、もちろん翻訳ですけど。それに「ろーそく」とか、今ではあまり使わないのではと思われるような表記も面白かったけど、全体的に直接的なのに婉曲というと矛盾していているけどインパクトはあるけどスッと溶けいる感じが心地良い。エマの性格については「芸術的であるより感傷的な気質で、景色をもとめず、情緒をもとめていた」。もうこれだけで分かります、って感じ。「ある一定量の楽音にしかたえられぬ人のように、もう微妙な魅力を聞きわけられなくなった」にはレオンの若さを感じられる。映画と最も印象が違ったのは商人だろうか。結局自殺のひきがねはこれなのだから重要であるに違いないが、存在感が小説よりだいぶ大きく表現されていたようだ。いやはや素晴らしい。こういう厚みのある古典を読んでいると、現代のが物足りなくなっていけない。そうそう、死に方が映画はまるで違ってびっくり。映像重視ですね。小説の文体の美しさを映像の美しさに変換という感じなんだろうか。はあ、小説って面白い、感動。



by kienlen | 2017-01-27 11:14 | 読み物類 | Comments(0)

『このミステリーがひどい!』

小谷野敦著。このところ続いている。図書館での借り物で一所懸命読んだとは言い難くざっと読んだ程度。著者がこの方でタイトルがこれなのでミステリーをめちゃめちゃけなしているのかと予想したら、そうでもなくて、意外な愛を感じてしまった。チャンドラー嫌いなんだ、ふーん、でも私好きだった昔、アガサ・クリスティ好きになれなかった、だったらクイーンの方がいい、とか、そうですよね、みたいな感じはあって、でも一番驚いたのは、何といっても樽。これがどういう評価なのか私は全然知らないのだが、忘れられない一冊ではある。というのは、ほとんど図書館の本ばかりだった子どもの時に、家にあった本を見ていたらその中にこれがあり、いくつの時か覚えてないが、文庫本など知らない年齢で、何やら難しいなあと思いつつ、でも何だか最後まで読んだ思い出だけはある。当時流行していたんだろうか、誰が買ったのかもしれない。そしたらこの樽をこの本では結構評価していた。意外な出会いというか再会というか。あと緑の館とか、そういう子どもの頃に読んだ記憶のあるようなタイトルやら作家やらがたくさん出てくるのが面白くて、ざっとではあるが最後まで読んだ。そうそう、昔大好きだったアイリッシュも懐かしい。図書館に評伝があるのを見つけて次に借りようと思っていたところ。松本清張もダメなんですか、ふーん。でも、博識ぶりは評価しているようだった。ですよね。横山秀夫の64が単行本で買って読んだのにうーん、ちょっといまいちと思っていたら、そのような評価だった。いつもと同じでさすがの登場冊数膨大なのがすごい。
by kienlen | 2017-01-21 16:45 | 読み物類 | Comments(2)

『キリスト教と世界宗教』

1956年刊で、自分が古本屋でこの間買ったものは1989年31刷。すごーい。とっても薄くて古い岩波文庫の青。「世界の諸宗教、特にバラモン教・仏教・インド教および中国の宗教思想との対比においてキリスト教の優越性を論ずる」という表紙の惹句に惹きつけられて中身も見ずに買ってしまった。元が210円で古本で150円なので迷うほどの値段じゃないし。それでお風呂読書用とした。聖職者のための講演なのでそもそも分かるわけがないのだと思うけど、しかも文章が格調高すぎて何度も何度も読み直してもなお理解できなかった。例えば「悲観主義か楽観主義かの問いにおいても、それは何らの決定に達しない。それが悲観主義的であるのは、バラモン教と仏教のそれのようにそれが不完全、悲嘆、苦悩は自然的世界の本質に属することを明らかにするからばかりではなく、なおまた、そしてはるかに多く、倫理的な神の意図に相応せざる、それゆえに邪悪である、一つの意図を人間においてみいだすからでもある」という感じの文章が続く。

もうちょっとかみ砕くことはできないのかと思いながら何度も読み返しながら無駄骨だと思いながら、しかしなぜか最後まで一応読むことは読んだ。格調高いのって、シンプル過ぎるのよりもクセになるのかもしれない。キリスト教が倫理的で楽観的なのが優れていて仏教は悲観的で劣っているということらしいのだが、それがなぜかが分からなくて、でも最後に長い解説があって、これを読んだらいくらかはちょっとくらいは本文だけよりも分かったような気になった。イスラム教については最初から相手にしないという態度なのがなぜなのか分からなかった。「バラモン教徒やショーペンハウエルの思想におけるような徹底した悲観主義的世界観においては、倫理はただ世界および世界精神から内面的に開放されることによって実現されるような個人の自己完成を欲するのみである」。なるほどーと、分かるようになりたい。薄いけど文字が細かいので見た目より文字分量はあるようだ。これで読んだとは言えまい。でも感じるものはありました。


by kienlen | 2017-01-16 22:06 | 読み物類 | Comments(0)

『現代世界の十大小説』

池澤夏樹著。図書館で過去にも借りたことがあるのが多分読み通してないと思ってまた借りて今度は読んだ。大変面白かった。まずは世界文学とは何かという考察から入り、サマセット・モームによる世界の十大小説を紹介し、それに対して自分はどういう選択なのかの説明。古典ではなくて20世紀後半に書かれたもの。国民国家だった時代は各国の文学というくくりが成り立ったが、というか、文学はこれを強める役割もあったが、第二次大戦を機に植民地が独立したからにはポストコロニアリズムの視点がはずせず、それとフェミニズム。この二点の重要さに選びながら気付いたとのことだ。面白そうだなあと思いながら読んだらすごーく面白かった。

選ばれているのはマルケス『百年の孤独』アゴタ・クリストフ『悪童日記』ミルチャ・エリアーデ『マイトレイ』ジーン・リース『サルガッソーの広い海』ミシェル・トゥルニエ『フライデーあるいは太平洋の冥界』カルロス・フェンテス『老いぼれグリンゴ』ジョン・アップダイク『クーデタ』メアリー・マッカーシー『アメリカの鳥』バオ・ニン『戦争の悲しみ』石牟礼道子『苦海浄土』。情けないことに読んだのは1冊だけ。苦海浄土が必読書なのは知っているが読んでないし、アップダイクにこういうのがあるのも知らなかった。どれも面白そうだが、ベトナム戦争を北側の兵士として闘った立場から書いたという戦争の悲しみはぜひ。紹介文を読んでいるだけで、苦海浄土共々涙だった。クーデタ、老いぼれグリンコも読みたい、他も全部読みたい。時間がいくらあっても足りない。いい本でした。

by kienlen | 2017-01-13 13:18 | 読み物類 | Comments(0)

『永い言い訳』

何の本が娘の所に行っているか分からずだぶっても困るので読まないのは持ち帰るように言っておいたら、こちらの意図は伝わらず全然意味不明の文庫本5冊が戻って来た、というか娘が読み終えてかつ再読はしないだろう本の新規参入というか。その中の1冊が西川美和のこれ。ずっと前に「ゆれる」を見た時、これはすごいと本当に感動した。あれでオダギリジョーが好きになり、彼が出ているというだけで見に行った映画もあるが、ゆれるはずっと良かった。監督がこの方で、すごい才能と思ったことは今もよく覚えている。ただ、その後で西川監督というだけで夢売るふたりを見ようと思って見損ねて劇場じゃなくて何かで見たのだが、そのせいかどうか分からないけど、これは好きになれなかった。環境は大きいので映画館だったら違ったかもしれないけど。で、本は読んだことがなくてこれが初めてだ。まさか今の時期に読むわけにいかないが、まあちょっとだけね、と数ページで我慢していたのだけど、それではおさまらずに今日は朝から仕事もしないで読んでしまった。がっくり。

誰か読んだ人がいたら話したいなと感じる本だった。人物造形がものすごく分かりやすい。動作や周辺環境もすごく詳細で、映画の場面を説明されているような感じ。まあ、映画を作る人なので当然かもしれないけど。そうそうこの映画も気にはなっていたのに、行かれなかった。これを読んで映画を見たくなるかというと、うーん…。10歳若かったらもっと感じるものがあったかもしれないと思わなくもない。今もなくはないけど、さすがにここまでくると、こういう瑞々しさっていうか、つまり瑞々しくなさそうでいて瑞々しいみたいなのが、ちょっとね、という感じかな。主人公の性格はすごくよく分かる気がする。あと子どももとってもリアルに感じたし他の登場人物も違和感なし。心の動きも行動も不自然さを感じなかったけど、かといって手放しにすごく良かった、感動したと言えない感じはやはり歳なのか、何なのか、ということを誰かと話してみたい感じがする。構成も登場人物の数も複雑じゃないのでひじょうに読みやすく、誤読もなさそうなので感想を話し合うにはふさわしそう、と、ひとりで思っている。

by kienlen | 2017-01-09 13:42 | 読み物類 | Comments(0)

『文学賞の光と影』

小谷野敦続き。こういう本を買うわけなく図書館にて。だいたいその日の気分で似たような傾向を借りることになり、この時はこの類だったのだ。かなりアバウトに読んだだけだけど、オタクぶり炸裂だった。どうしてこんなに詳しいんですか。お子さまの時から文学者の相関図とか文学賞の種類とか受賞者を記録していたようだ。で、政治家が二世三世で、経済界なんてもちろんたいていそうで、それで文学者もなるほどこうなのか、というのはくっきり分かる。特に選考委員に夫がいて妻が受賞するとか、怪しいよね、みたいな匂いをぷんぷんさせながら紹介。意外な組み合わせがたくさんあった。知らなかった。この著者の好みは、売れなくても受賞しなくても作家であり続ける人のようで、ちゃんとそういうのが好きだと書いてある。それから賞に対して貪欲であることを表明する人とか。

作家と学歴というのもあり、これがもう名前と大学のオンパレード。忘れていたけど昔読んだ作家の名前が出ていて懐かしくなる。高木彬光は、毒を食らわば皿まで、がやたらに出ていたなとか、ふうん、京大工学部だったのか。早大はやたらに多くて、著者の感想が「早稲田的な臭いのする人というのがいて、川本三郎や加藤典洋などいかにもそうなのだが東大である。阿刀田などは逆に、顔のせいか東大に見える」って、言いたい放題、楽しい。ストーリーを追ったりする必要がなくてただ目を通すだけで気楽。文章も含みがなくて簡単だし。青土社がこういう本出すんだ。こういう本って誰が読むんだろうか。文学研究者か。確かに資料としての価値はあるかも。そうだ、あるある。図書館でないと発見できない本だ。

by kienlen | 2017-01-08 21:15 | 読み物類 | Comments(0)

『自負と偏見のイギリス文化―J・オースティンの世界』

いつ、なぜこの岩波新書を買ったのか、全然覚えていない。発行は2008年。読もうと思ったのは、やはりロンドンに行った時の印象が強烈だったからだ。どこの書店にもオースティンが一等席に並び、オースティンの本袋があり、バースにはオースティンハウスがあってギフトショップは混んでいた。なぜに、この1775年生まれの作家がここまで人気なのか。日本でいうと誰だろう。時代は違うけど、夏目漱石かな。教科書にもでてきて、読書感想文の課題になって、誰もが知っていて今も人気がある。それはともかく、この本が手元にあるのは知っていて、読みたいな、でも他も読みたいなで時間が過ぎていたが、読み始めてみたら面白くて最後まで読んだ。ということはやるべきことをまたやってないということでもある…。最近図書館で借りて文学評論読んでいるが、オースティンが常連であるのも影響していると思う。

私が読んだのは自負と偏見のみで、オーディオブックスでエマを聞いたりがある程度。この本は親切にも各小説のあらすじがあり、また、ひとつ読んであると、解説によって人物像が想像しやすいので全部読んでなくても充分楽しめる。だいたい、大勢人物が出てくるので自分のように名前が苦手な者にはあらすじを読むだけでもなかなか容易ではない。なるほど、深い世界なのね、と深く感動した。そして知らなかったことが色々。中学英語で夕食はサパーと教わったような記憶があるが、これの意味がほう!食事の時間で階級が分かるとは!あと、自負と偏見でびっくりしたことで、つまり長男相続の件だが、こういうことって国を形作る基本項目のひとつなわけで(きっと)それが日本と共通ってのが面白かった。というのは、今まで中国と同じと思っていたのだが、この間の本で中国は違うとあって余計に気になるようになった。まあ、それが誤解という可能性はあるけど、調べてみないと。だいたい私はブリジット・ジョーンズの日記が自負と偏見の現代版というのも知らなかった。以上は本筋ではなく、一番のポイントはリージェンシー時代とビクトリア時代の違い。大変満足な一冊だった。

by kienlen | 2017-01-04 18:37 | 読み物類 | Comments(0)

『象を射つ』

ジョージ・オーウエルについての評論を読んでいる時、象を射つへの言及があり、読みたいなと娘に言うと、動物農場に入っているとのことだった。じゃあ読んだことあるのか。しかし覚えていない。それで読んでみた。読むというほどのボリュームではなくて、たったの15ページ。植民地ビルマに、帝国主義イギリスの警察官として赴任していた著者の体験のようだ。どういう体験かというと象を撃つはめになってしまった体験。発情期に象が暴れるというのはタイにいる時に聞いて知っていた。それで観光客が犠牲になることもたまあにあった。で、そういう象がいると連絡があり警察官が象撃ち用の銃を手配して出かけて行く。

彼は象を撃ちたくはない。撃ち方を知らないのもあるが、貴重な象を撃つのは忍びないからでもある。落ち着きを取り戻していれば撃つ必要もないのだ。しかし、象撃ちを見たさに群衆が2千人ほども付いてくる。帝国の白人と現地の黄色い人たち。彼は帝国主義が嫌いなので、警察官でいることももう辞めると決めている。しかし黄色い人たちが支配者の手先に何を望んでいるかは理解している。こう書いている。「白人が圧政者となるとき、彼が破壊するのは、自分自身の自由なのだ」。群衆の期待に応えるよう自分自身が追い込まれていく心理描写がとっても分かりやすい。象が撃たれて死ぬまでがまた悲しい。そして撃った人の気持ちなどまるで眼中にない民衆。こういうことって帝国主義と植民地の関係でなくても対個人でもあるし、体験といっても、相変わらず実に普遍的である。すごい。良かった。

by kienlen | 2017-01-03 17:31 | 読み物類 | Comments(2)

『「文学」の精神分析』

斎藤環著。図書館で借りたもの。これのちょっと前に小谷野敦の『もてない男』もざっと読んだ。今の気分はこういう評論というかエッセイになっている。仕事の合間にちまちまと読めるからだ。それでAmazonの評価はどうかなと思って見てみたら投稿はなしだったが、本の紹介で若い読者に読んで欲しいみたいに書いてあって、ちょっとびっくりした。今の若い読者はこういう文体を好むんだろうか。と書いてから、そうか自分だって若い時は分かるとか分からないじゃなくて難解な文体にあこがれたことを思い出した。小谷野本は逆に、友達はジェットコースターと言っていたが、つまりザザザという文体なのでこちらとの違いは大きかった。もっとも両者の間は全然関係ないのだけど。

この方の本は前に何か読もうと思って挫折していたように思うので今回もムリかなという感じを持ちつつ読み始めた。でも面白かった。そもそもこれを借りてみたのは、最初に宮澤賢治論があったからだ。とはいってもただ友達とちょっと話題にしていたというだけのことではあるが。それから小島信夫、三島由紀夫、石原慎太郎、中上健次、村上龍、京極夏彦、中井久夫…とくる。ここまでは、まんざら知らない人達でないので興味深く読んだ。作品は読んだのは少なくて読んでないのがほとんど。読みたくなったのは石原慎太郎。後ろの方は知らない作家が続き、多和田葉子は買ったきり挫折中だしで、読み飛ばし気味。次は何にしよう。この本と一緒に図書館から借りてきた『女の一生』に取りかかるわけには、絶対いかない、決意。この状況を脱したら読みたい放題。それを待つ。

by kienlen | 2016-12-29 22:22 | 読み物類 | Comments(2)

『あひる』

娘が絶賛で、何度もいいよいいよと言うので図書館で借りることにして聞いたら貸し出し中で予約しておいたのが、本日到着との連絡あり、明日から休館とのことなので受け取りに行った。立ち読みできるほど短いと言われていたがその通り。あまりにいいよいいよと言われたので期待してしまったけど、歳のせいだろうか、何がそんなにいいのか分からなかった。というメールをしたら、彼女はやはり相当好きらしい。また会った時にゆっくり聞いてみよう。しかし、本読んでる場合じゃないのだが…。あひるのおかげで他に4冊借りてきて読みたいものだらけ。ああ、この事態はあひるそのものだ。数日後には娘に頼んだのが何冊もくる。困った。でも楽しみ。こうなるとやはりあひるはいいとこ突いていると思った。
by kienlen | 2016-12-26 23:40 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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