カテゴリ:読み物類( 705 )

ビブリオバトル

自分が推薦したい本を5分で紹介して、どれを読みたくなったかを集まった皆が投票し、最も投票が集まったのがチャンピオンになるというゲームをビブリオバトルと呼ぶらしい。これに参加してチャンピオンになった友達から勧められていて、本日がその日だった。予約が必要らしいが、そこまでして行きたいかというと、そうでもなく、でも本がテーマのものには興味があるしで、直前まで迷った挙句に行ってみた。発表してもいいかなと思って一応、つい先ごろ読んだ服従を持参。10人ほどの少人数で気軽そうだったのでぶっつけ本番でプレゼンすることにした。制限時間5分の後は、質問やディスカッションの時間も少しある。とっても面白かった。結局10人のうち6人が発表して投票。2冊がチャンピオンになった。服従もその1冊に入りめでたし。図書館で借りて読むという人がいたのは嬉しかった。今年度は今日が最後とのことで、もっと早く知っていたらと残念だった。
by kienlen | 2017-02-15 23:36 | 読み物類 | Comments(0)

『服従』

これはこれは面白かった!本だけでしか味わえない快感ってこれだよな、と思いながら耽読。といっても何が分かっているかというと、ものすごく心もとない。フランスの知識人ってこうなのね、それで読む人にこれでもかっていう教養を要求するんですか、という感じはあったけど、それらがなくても勝手に面白かったです。結局こういうのが好きなのだ、自分、と思った。で、この場合のこういうのって何かというと、皮肉と嫌味とデカダンスというところか。まあ、節操がないので、ハウツーものとさわやか系とファンタジー系とオカルト系以外はたいてい好きになる傾向あり。ただ巨大な問題があって、主人公がユイスマンスという作家の研究の第一人者で、私のようにこの作家の名前ここで初めて聞いた、という者が一体読んだことになるのか、ということだ。まあ、色々なレベルの「読む」があるので、自分勝手に楽しんでいる分にはそれはそれとして置いておくことにする。

ごくごく近未来というか、次の選挙くらいに、フランスにイスラーム政権が誕生するという小説なのだが、政治家から思想家から小説家からジャーナリストから編集者から色々な人が実名で登場する。こういうのって海外の小説では見かけるけど日本にもあるのか、ちょっと知らない。一人称の効果ってこれかあ、と今さらながら感じたのは、臨場感たっぷりで実話のようなのだ。ソルボンヌ大学で教えていた主人公は、選挙の前から不穏な動きを感じ、情報も得たことから田舎に一時避難。パリに戻ると教授職を失っている通知がきている。しかし知識人が騒がないように破格の年金が約束されているのはサウジのオイルマネーがあるから。という物語自体も面白いといえばいえるが、一文一文の含意が重層的で心地良い。ちょうどこのところイスラームの話を聞いたり読んだりが続いていた上にこれを読んだのは偶然だが、多少でも見聞きしたのは想像力を膨らませるのに役立った。服従というタイトルには、ううむ、納得。ヨーロッパと中東、カソリックとイスラーム、人間とは何かということから知識人とは、政治とは、国家とはなどなどめいっぱい詰まってる思想書のようでいて面白い小説。それでユイスマンスを読んでみるかというと、とりあえず自信ない。しかしこういうのの次をどうするかは難しい。プラハの墓かな、手持ちからいくと…。

by kienlen | 2017-02-13 08:31 | 読み物類 | Comments(0)

『日本のムスリム社会』

友達から借りたこのちくま新書を、外出の多くて落ち着かない日々の中でちょっとずつ読んだ。2003年の発行ということは、時々の政策やら国際関係やらによっても変化の大きい外国人事情が現状と同じはずはないと思われるが、日本の中のムスリム社会という、私たちには見えにくい部分についての基本を教えてくれている点でありがたい内容だった。基本に触れておくと、何かあった時の理解がしやすくなる。著者はこの間の講師だった桜井啓子さんで、イランが専門。その時の話、それから自分が多少は知っている日本のタイ人社会、そしてパキスタン人の知り合いや、ムスリムと結婚して改宗した友人などを思い浮かべたり比較したりしながら読んだ。

フィールドワークではあるが、ノンフィクション作家のような文体や構成とは違って学者さんのそれ。誰かにスポットをあてて物語的にしたり、とにかく読んでもらう工夫をする、みたいなところはあまりなくて、でもあくまで一般向けを意識している、という感じで、構成は、まずモスクという現場の風景で導入、続いて日本で働く・学ぶ、故郷の事情…と、項目ごとに説明している。私が一番面白かったのは、最後の章の「日本社会とイスラーム」かな。そういえば以前、イラン人と結婚して子どもがいて、給食の献立に目を光らせていて、食べられない時は弁当持参という日本人女性に会ったことがあった。もうあれから20年近くになるのだから、その子も成人しているのだろうけど、どう育っているのだろうか。公的な領域は男が中心で親権も男と決まっているあたりは、日本人との親和性が低いように感じつつも、女は男に守られる存在であるというのは、タイ人よりも馴染みやすいかもと思ったり、基本的なことが色々説明されていて面白かった。

by kienlen | 2017-02-10 21:26 | 読み物類 | Comments(0)
すごく面白かった村上春樹の短編小説案内の中で特に強烈な印象だったのが、小島信夫の「馬」だった。このところ貴重な本友達が短編小説に凝っているのもあり、そういえば小島信夫の短編集があったはずと思ってチェックすると、この馬も入っていた。一昨日の上田往復電車内と食事しながらなどで、馬を先頭に3編読んだ。日常の微細を描いているようでいて、全体的にはシュールな面白さ。日常生活を突き詰めるとそうかもね、こうなるかもね、と感じるが、やはり現代の日本との決定的な違いは戦争でしょう。この3編の中で直接それを扱っているのは汽車の中。敗戦直後らしき汽車の中での出来事を延々と書いてある。一分の隙もなく人を詰め込んだ車内の詳述などちょっと異様なレベル。でもなぜか飽きない。なんかもう人間に対して、社会に対して吹っ切れている感がビシビシだな。

馬を紹介してくれた短編案内には感謝。あれを読まなければ読まずに終わったと思う。小島信夫といえばアメリカン・スクールしか浮かべられなかったし、これさえ読んだのは最近のことだ。で、この時は何だかすっきりしない小説と思ったけど、こうして4編読んでみると、どれもすっかりしない。で、小説って、考えてみたら謎解き目的のようにすっきりするはずがないのだった。あと共通しているのは男と女の関係かな。男の存在の不安定さと女のそれの相対的な確かさというか。馬はそれそのものがテーマという感じ。これはまあ夫婦を描いたもので、夫が知らない間に材木が運ばれていて妻の段取りにより立派な馬の家が増築され、素晴らしい馬が家にやってきて、妻が夫よりも馬と親しくなっていく様子を夫の目線から書いている。どれも面白かった。あといくつかあるので読む予定。



by kienlen | 2017-02-02 08:49 | 読み物類 | Comments(2)

『ボヴァリー夫人』

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この間映画を見て、やはり小説を読まねばと決意。何度目かの取りかかりでやっと読んだ。後半に差し掛かっていたので、今回の山陰への旅で終える予定だったがダメで、昨日の上田行き電車まで持ち越した。なるほど、映画を見た後にネットでの評判をみたら評価はかなり低めで、へえ、私は良かったが、思っていたのだが、小説を先に読んでいると自分もあんなに面白いと感じられなかったかもしれない、と小説を読んでみて思った。映画と小説が別物とはいえ、やはりこれだけの長大なのを映画にするのはどこかを取り出して強調せざるを得ないんだろうし、ああしてエッセンスをシンプルに表しているのかと思ったのだが、そんな単純ではないのだ、多分。ストーリーも違うし、主人公の性格も夫も周囲の男も、映画を見ていなければかなり異なる人物をイメージしたと思う。

映画にはない小説の楽しみは何といっても文体。これはすごく好みだった。生島遼一訳の、もちろん翻訳ですけど。それに「ろーそく」とか、今ではあまり使わないのではと思われるような表記も面白かったけど、全体的に直接的なのに婉曲というと矛盾していているけどインパクトはあるけどスッと溶けいる感じが心地良い。エマの性格については「芸術的であるより感傷的な気質で、景色をもとめず、情緒をもとめていた」。もうこれだけで分かります、って感じ。「ある一定量の楽音にしかたえられぬ人のように、もう微妙な魅力を聞きわけられなくなった」にはレオンの若さを感じられる。映画と最も印象が違ったのは商人だろうか。結局自殺のひきがねはこれなのだから重要であるに違いないが、存在感が小説よりだいぶ大きく表現されていたようだ。いやはや素晴らしい。こういう厚みのある古典を読んでいると、現代のが物足りなくなっていけない。そうそう、死に方が映画はまるで違ってびっくり。映像重視ですね。小説の文体の美しさを映像の美しさに変換という感じなんだろうか。はあ、小説って面白い、感動。



by kienlen | 2017-01-27 11:14 | 読み物類 | Comments(0)
小谷野敦著。このところ続いている。図書館での借り物で一所懸命読んだとは言い難くざっと読んだ程度。著者がこの方でタイトルがこれなのでミステリーをめちゃめちゃけなしているのかと予想したら、そうでもなくて、意外な愛を感じてしまった。チャンドラー嫌いなんだ、ふーん、でも私好きだった昔、アガサ・クリスティ好きになれなかった、だったらクイーンの方がいい、とか、そうですよね、みたいな感じはあって、でも一番驚いたのは、何といっても樽。これがどういう評価なのか私は全然知らないのだが、忘れられない一冊ではある。というのは、ほとんど図書館の本ばかりだった子どもの時に、家にあった本を見ていたらその中にこれがあり、いくつの時か覚えてないが、文庫本など知らない年齢で、何やら難しいなあと思いつつ、でも何だか最後まで読んだ思い出だけはある。当時流行していたんだろうか、誰が買ったのかもしれない。そしたらこの樽をこの本では結構評価していた。意外な出会いというか再会というか。あと緑の館とか、そういう子どもの頃に読んだ記憶のあるようなタイトルやら作家やらがたくさん出てくるのが面白くて、ざっとではあるが最後まで読んだ。そうそう、昔大好きだったアイリッシュも懐かしい。図書館に評伝があるのを見つけて次に借りようと思っていたところ。松本清張もダメなんですか、ふーん。でも、博識ぶりは評価しているようだった。ですよね。横山秀夫の64が単行本で買って読んだのにうーん、ちょっといまいちと思っていたら、そのような評価だった。いつもと同じでさすがの登場冊数膨大なのがすごい。
by kienlen | 2017-01-21 16:45 | 読み物類 | Comments(2)
1956年刊で、自分が古本屋でこの間買ったものは1989年31刷。すごーい。とっても薄くて古い岩波文庫の青。「世界の諸宗教、特にバラモン教・仏教・インド教および中国の宗教思想との対比においてキリスト教の優越性を論ずる」という表紙の惹句に惹きつけられて中身も見ずに買ってしまった。元が210円で古本で150円なので迷うほどの値段じゃないし。それでお風呂読書用とした。聖職者のための講演なのでそもそも分かるわけがないのだと思うけど、しかも文章が格調高すぎて何度も何度も読み直してもなお理解できなかった。例えば「悲観主義か楽観主義かの問いにおいても、それは何らの決定に達しない。それが悲観主義的であるのは、バラモン教と仏教のそれのようにそれが不完全、悲嘆、苦悩は自然的世界の本質に属することを明らかにするからばかりではなく、なおまた、そしてはるかに多く、倫理的な神の意図に相応せざる、それゆえに邪悪である、一つの意図を人間においてみいだすからでもある」という感じの文章が続く。

もうちょっとかみ砕くことはできないのかと思いながら何度も読み返しながら無駄骨だと思いながら、しかしなぜか最後まで一応読むことは読んだ。格調高いのって、シンプル過ぎるのよりもクセになるのかもしれない。キリスト教が倫理的で楽観的なのが優れていて仏教は悲観的で劣っているということらしいのだが、それがなぜかが分からなくて、でも最後に長い解説があって、これを読んだらいくらかはちょっとくらいは本文だけよりも分かったような気になった。イスラム教については最初から相手にしないという態度なのがなぜなのか分からなかった。「バラモン教徒やショーペンハウエルの思想におけるような徹底した悲観主義的世界観においては、倫理はただ世界および世界精神から内面的に開放されることによって実現されるような個人の自己完成を欲するのみである」。なるほどーと、分かるようになりたい。薄いけど文字が細かいので見た目より文字分量はあるようだ。これで読んだとは言えまい。でも感じるものはありました。


by kienlen | 2017-01-16 22:06 | 読み物類 | Comments(0)

『現代世界の十大小説』

池澤夏樹著。図書館で過去にも借りたことがあるのが多分読み通してないと思ってまた借りて今度は読んだ。大変面白かった。まずは世界文学とは何かという考察から入り、サマセット・モームによる世界の十大小説を紹介し、それに対して自分はどういう選択なのかの説明。古典ではなくて20世紀後半に書かれたもの。国民国家だった時代は各国の文学というくくりが成り立ったが、というか、文学はこれを強める役割もあったが、第二次大戦を機に植民地が独立したからにはポストコロニアリズムの視点がはずせず、それとフェミニズム。この二点の重要さに選びながら気付いたとのことだ。面白そうだなあと思いながら読んだらすごーく面白かった。

選ばれているのはマルケス『百年の孤独』アゴタ・クリストフ『悪童日記』ミルチャ・エリアーデ『マイトレイ』ジーン・リース『サルガッソーの広い海』ミシェル・トゥルニエ『フライデーあるいは太平洋の冥界』カルロス・フェンテス『老いぼれグリンゴ』ジョン・アップダイク『クーデタ』メアリー・マッカーシー『アメリカの鳥』バオ・ニン『戦争の悲しみ』石牟礼道子『苦海浄土』。情けないことに読んだのは1冊だけ。苦海浄土が必読書なのは知っているが読んでないし、アップダイクにこういうのがあるのも知らなかった。どれも面白そうだが、ベトナム戦争を北側の兵士として闘った立場から書いたという戦争の悲しみはぜひ。紹介文を読んでいるだけで、苦海浄土共々涙だった。クーデタ、老いぼれグリンコも読みたい、他も全部読みたい。時間がいくらあっても足りない。いい本でした。

by kienlen | 2017-01-13 13:18 | 読み物類 | Comments(0)

『永い言い訳』

何の本が娘の所に行っているか分からずだぶっても困るので読まないのは持ち帰るように言っておいたら、こちらの意図は伝わらず全然意味不明の文庫本5冊が戻って来た、というか娘が読み終えてかつ再読はしないだろう本の新規参入というか。その中の1冊が西川美和のこれ。ずっと前に「ゆれる」を見た時、これはすごいと本当に感動した。あれでオダギリジョーが好きになり、彼が出ているというだけで見に行った映画もあるが、ゆれるはずっと良かった。監督がこの方で、すごい才能と思ったことは今もよく覚えている。ただ、その後で西川監督というだけで夢売るふたりを見ようと思って見損ねて劇場じゃなくて何かで見たのだが、そのせいかどうか分からないけど、これは好きになれなかった。環境は大きいので映画館だったら違ったかもしれないけど。で、本は読んだことがなくてこれが初めてだ。まさか今の時期に読むわけにいかないが、まあちょっとだけね、と数ページで我慢していたのだけど、それではおさまらずに今日は朝から仕事もしないで読んでしまった。がっくり。

誰か読んだ人がいたら話したいなと感じる本だった。人物造形がものすごく分かりやすい。動作や周辺環境もすごく詳細で、映画の場面を説明されているような感じ。まあ、映画を作る人なので当然かもしれないけど。そうそうこの映画も気にはなっていたのに、行かれなかった。これを読んで映画を見たくなるかというと、うーん…。10歳若かったらもっと感じるものがあったかもしれないと思わなくもない。今もなくはないけど、さすがにここまでくると、こういう瑞々しさっていうか、つまり瑞々しくなさそうでいて瑞々しいみたいなのが、ちょっとね、という感じかな。主人公の性格はすごくよく分かる気がする。あと子どももとってもリアルに感じたし他の登場人物も違和感なし。心の動きも行動も不自然さを感じなかったけど、かといって手放しにすごく良かった、感動したと言えない感じはやはり歳なのか、何なのか、ということを誰かと話してみたい感じがする。構成も登場人物の数も複雑じゃないのでひじょうに読みやすく、誤読もなさそうなので感想を話し合うにはふさわしそう、と、ひとりで思っている。

by kienlen | 2017-01-09 13:42 | 読み物類 | Comments(0)

『文学賞の光と影』

小谷野敦続き。こういう本を買うわけなく図書館にて。だいたいその日の気分で似たような傾向を借りることになり、この時はこの類だったのだ。かなりアバウトに読んだだけだけど、オタクぶり炸裂だった。どうしてこんなに詳しいんですか。お子さまの時から文学者の相関図とか文学賞の種類とか受賞者を記録していたようだ。で、政治家が二世三世で、経済界なんてもちろんたいていそうで、それで文学者もなるほどこうなのか、というのはくっきり分かる。特に選考委員に夫がいて妻が受賞するとか、怪しいよね、みたいな匂いをぷんぷんさせながら紹介。意外な組み合わせがたくさんあった。知らなかった。この著者の好みは、売れなくても受賞しなくても作家であり続ける人のようで、ちゃんとそういうのが好きだと書いてある。それから賞に対して貪欲であることを表明する人とか。

作家と学歴というのもあり、これがもう名前と大学のオンパレード。忘れていたけど昔読んだ作家の名前が出ていて懐かしくなる。高木彬光は、毒を食らわば皿まで、がやたらに出ていたなとか、ふうん、京大工学部だったのか。早大はやたらに多くて、著者の感想が「早稲田的な臭いのする人というのがいて、川本三郎や加藤典洋などいかにもそうなのだが東大である。阿刀田などは逆に、顔のせいか東大に見える」って、言いたい放題、楽しい。ストーリーを追ったりする必要がなくてただ目を通すだけで気楽。文章も含みがなくて簡単だし。青土社がこういう本出すんだ。こういう本って誰が読むんだろうか。文学研究者か。確かに資料としての価値はあるかも。そうだ、あるある。図書館でないと発見できない本だ。

by kienlen | 2017-01-08 21:15 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


by kienlen
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