カテゴリ:読み物類( 705 )

本を読んでいる時間はあまりない。勉強しないとならないし。とはいえせっかく何冊も持って来たので関連書籍くらいはと思ってこれを読んだ。古本屋で見かけてタイ関連は一応という意味で購入してあったハードカバー。タイトルだけで中身を特に検討しないで買ったので自分の想像とは色々と違った。一番は文体で、会話体になっている。こういうのは初めてかもしれない。読みやすさのためということで、確かに読みやす過ぎるくらいに読みやすい。著者が実際に訪れた様子を中心にして、そこに歴史や政情などを入れている。国境好きにはタイトルだけで限りなくワクワクだし、行きたくなる。こういう状況でなければ飛んで行きたい。それにしても、こんなに平穏な期間は一生で一度きりに違いない。何しろ閉じこもって決められたスケジュールに従っていればいいのだから、信じられない日々。
by kienlen | 2017-03-30 07:21 | 読み物類 | Comments(0)
出がけに読み始めて、どうせなら最後までと思って持参。買ったのは結構前で、実はすぐに読み始めたがなかなか読めずそのままになっていた。タイトルから抱いた予想とはだいぶ違う内容だった。予想というのは自分の勝手な予想なのでタイトルが悪いわけじゃないけど。シリアに行った動機は今ひとつよく分からないが、この本を書いた理由はよく分かった。つまりイスラム過激派と一口に言っても色々なグループがあるということと、マスコミ報道では偏向がありすぎて伝えたいことが伝わらないということから。

色々なグループについての説明は分かりやすかった。文章にもうちょっと理があるといいなという感じがした。でも、逆にこの方がリアルかもなという気も同時にした。帰ってからの話の方が興味深かった。多分こういう本を読んだ理由のひとつは、昔会ったことのある人がフランスの外人部隊にいたことのある傭兵で、少数民族のためにビルマ軍と戦っていて、こういう人がいるんだ、と衝撃だったのがあるからだ。その人のことは深く話したわけじゃないので分からないが、共通するものがあるのかもしれないと思いながら読んだ。あの時の彼も、今だったらシリアだったかもしれないし、この著者もあの当時だったらビルマかもしれないなと。

by kienlen | 2017-03-23 20:32 | 読み物類 | Comments(0)

『日の名残り』

カズオ・イシグロの本、初めて読んだ。丸谷才一が絶賛していて俄然読みたくなって購入。朗読者を読んだ時、今まで読んだ中で一番感動したと思っていたが、それを塗り替えた感がある。いやあ、素晴らしかった。言葉になりません。主人公は貴族の執事という設定。文体は執事の話し言葉風なのでとってもお上品で、しかもいやらしい感じはなくて自然で、お館の執事ってこうなんだ、と、縁もゆかりもないのに分かったような気になってしまう。執事のプロ意識とは何でプロの仕事とはどうで、ということが言葉の端端に表れ、これがまた英国とは英国人気質とは、みたいなところも表していて、いろいろ充分堪能できる仕掛けとなっている。

しかも、構成はこの執事が休暇中にひとりで旅をするというものなので、イギリスの田舎の風景とか田舎の人とかも登場して、これがもうイギリスに行きたい気分にさせられてしまってたまらない。つまり旅をしながら高貴なお方に仕えてきた過去を回想するわけなのだが、回想している年は1956年で、回想されているのは1920年代から30年代、かな。つまり第二次大戦が迫っている時期まで。ドイツがイギリスにアプローチしていた様子なんかが秘密会議とかの様子で分かるようにもなっている。執事の視点なのでものすごく抑制が効いていて、というか、それが品格というものであるというのは結構くどく語られているのだけど、隅々まで巧妙な仕掛けがいっぱいで小説の楽しみ満喫。原文はどんななんだろうか、この前ロンドンに行く前に翻訳を読んでいたら原書を探したに違いない。残念だ。執事の現在の主人はアメリカ人になっているのだが、コーク家の方々もイギリスの建物を買いあさっていたので、それと重なりなるほど。ああ、素晴らしかった。深く感動。

by kienlen | 2017-03-16 14:59 | 読み物類 | Comments(2)

『コーク一族』

結構な大著で時間がかかり、やっと読み終えた。コーク家というアメリカの大富豪について各々の人物像からドロドロの家族関係から企業経営から政治との関係から諸々を詳細に記したもので、書いているのは米国人ジャーナリスト。小説を読んでノンフィクションに移ると文章の平坦さに物足りなさを感じてしまうが、しばらくすると慣れた。とにかく私はコーク家など聞いたことがなく何も全く知らなかったが、これは相当に面白い内容だった。一日読んでいられるような時間があったら読みふけったに違いないと思う。主人公というか中心となる人物はコーク家の男ばかりの4兄弟である長男、次男、それから双子という構成。ただし石油で創業したのは4兄弟の父なのでそこから物語は始まっている。父がどのように息子たちを育てたかだ。アメリカ映画を見ていていつも父と息子の関係の重さを感じるが、ここでもそのイメージはそのままだった。妻は強い夫に従い、息子は強い父に従うというのが、日本のように形式じゃなくそのまんまなのがきっとアメリカ白人プロテスタントの家庭の掟なのでしょうか。

それでこのコーク兄弟のキャラクターというのが見事に描き分けられるものらしく、長男は事業には関心を持たずに母に似て芸術分野へ。次男が期待の星で跡継ぎとなる。頭も容姿も良くて事業の才能がありものすごい勢いで企業を大きくする。非上場企業で全米2番目とのこと。多分この2人だけだったら問題は起きなかったのだろうけど、物語としては面白いのは双子で、1人はイケメンで明るい人気者でデキル次男の家来みたいな感じ。でももう1人が悉く上2人に批判的というより喧嘩をふっかけてばかり。この喧嘩というのがハンパではなく、つまり裁判闘争をひっきりなしに行うのである。どっちも大金持ちなので金に糸目は付けず徹底的に執拗に。誰と誰がどうして組んでどうなる、みたいなダイナミズムも面白かったが、一番興味深かったのは社長である次男が徹底したリバタリアンであること。父が徹底的に反共になった過程も詳述されていてなるほどと思ったが、徹底したリバタリアンとなると共和党が大企業有利の政策を取るのも当然意に反するわけで、この内部というか民主党はあり得ないという点では一致する人々の中での分裂ぶりが面白い。おかげで、憎い、あり得ないオバマを落とせなかったわけで、その闘争もすごい。コーク側の視点に徹底してはいるがオバマ側の様子も想像できる書きっぷり。トランプが彼女連れで2行ばかり登場していた。大著で盛りだくさんで書ききれないが、なんか、アメリカという国の一部を大変よく理解できた気になってしまう本だった。面白かったあああ。それにしても本の時間がないこの頃。

by kienlen | 2017-03-15 18:01 | 読み物類 | Comments(0)

東京といえば本

昨日は東京に用事があった。他の町ならワクワクするあの感じがまるでなく義務で行くのが東京であり昨日もそれだった。せめて時間があれば美術館にでも行きたいがないし。さらに新幹線が高いのでバス。夜までかかる用事だったので戻りは新幹線にしようと思ってバスを予約しないで行ったが、やはり高いのと、それに新宿から直行のバスの便利さもあって1時到着の便に乗った。乗り換えなしというのはとっても便利。ただ、この時間になると駅を西から東に通過できないらしくてドアが閉まっていて東の自転車置き場に行けず、地下を通るのは嫌だしで、しばしウロウロした挙句にタクシーになったから、じゃあ新幹線にすれば良かったともまあ別に思わなかったけど、とにかく色々やっていて遅いというか早いというかの時間に寝たのだった。
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仕事以外は気が進まない東京ではあるが、それでも行くのは娘との用事を済ませられるからというのもある。こちらから持っていくものを渡し彼女から本を受け取る。本屋を巡るのもいつもと同じ。新刊と古本屋の両方をまわり10冊近く購入。だいぶ抑えたのだがまた増えてしまう、ああ。往復のバスでカズオ・イシグロを大感動しながら読んだけどまだ半分くらいだ。ランチは神保町で娘と。揚げたフグの丼と彼女が即決。フグ食べたことないと言いながら。つられて私も。


by kienlen | 2017-03-14 09:33 | 読み物類 | Comments(0)
こういう本を若い時に読んでいて、読むべき本をここから決めていたら人生違ったかもしれない。残念でした。しかし今になってからでも読めたのは良かった。タイトルでもいっているようにまず、どれもこれもすべてとっても面白い。114冊も紹介されているのだから、面白くなさそうなのは飛ばしてもいいのに、飛ばしたくなるのはひとつもなく隅々まで読んでしまった。雑誌や新聞に掲載したのをまとめているので、同じようなタッチで飽きるかな、ということも全くなく、そしてジャンルの幅広さにも驚嘆で、いやあ、すごい。一般大衆向けながら迎合的ではなくて上品ですごーく深い内容をすごーく易しく書いてくれている。ああ、素晴らしい。大問題は片っ端から読みたくなってしまうことで、この114冊がセットになっていたら欲しいくらい。

しかし当面何を読むかであるが、カズオ・イシグロ『日の名残り』は、気になっていたのもあり、もう買う手配済。『薔薇の名前』もやはり読みたい。娘が人から借りて読んでいるので自分用に買うのもなで延び延びになっているがこの際買うか。クンデラが何冊か出てきたのは嬉しかった。何冊かは持っているけど『冗談』が読みたくなった。モラヴィアもいた。『蠅の王』もやはりこの際。『ハワーズ・エンド』は映画見たけど本も面白そう。『ジャッカルの日』があったりチャンドラーがあったりも感激。それに『チャンドラーの生涯』はウチの本棚にあるのだから、読める。『蜘蛛女のキス』も面白そう。『ソクラテス以前以後』は絶対読みたい。『どこまで行けるか』『日本との50年戦争 ひと・くに・ことば』、オーウエルがいないと思ったら、彼が触発されたという元のがあった、『われら』。『女帝エカテリーナ』もぜひ。他もすべて面白そう。粒ぞろい過ぎるのも困ったものだ。しかし自分で読んだんじゃ分からないことが解説されているのだから、あとがきにもあるように、読んでからもう一度これを読み返すとさらに面白いに違いない。満足でした。日本篇も読もう。来週東京に行くので色々仕入れる。

by kienlen | 2017-03-06 20:18 | 読み物類 | Comments(0)
しばらく前に読んだ。本屋をぶらついていたら橋本治の新刊がありペラペラして買った集英社新書。初のしゃべり本とのことで、確かにしゃべり口調。他にもあったんじゃないかと思ったけど、しゃべり本にするつもりでしゃべっても書き直してしまっていたのだそうだ。でももう年なのでしゃべり本にしたとのことで一応聞き手として51歳のフリーライターがいて、でもこの人は著者の考えが分かり過ぎてしまうのでそうじゃない人を入れるということでバブルも知らない1984年生まれの編集者が入る、ということになっているが、もちろんしゃべっているのはほとんど橋本治でたまに合いの手が入るというか入れてってリクエストするというか。出だしはイギリスのEU離脱について。大きなものはもうダメじゃないかという橋本説を地でゆくものであるとの見方。異議なく刺激なくの論がしばらく続くので復習的かと思ったらだんだん橋本節全開って感じで面白くなってきた。

それで半分よりちょっと後ろのあたりに付箋が多くなった。どういう章かというと、バブルを経て「社会」が消えた、なにを言ってもムダな人たちの2つの章。実体経済以外に金融経済を作り出した過程ははい、テレビが料理番組ばかりになったのがどうしてかというあたりは、なるほど。付箋だけにして線は引くまいと思っていたが手元の色鉛筆で引いてしまった所がある。日本の保守が何かっていうのはねじれてて謎であるらしいのは常識らしいがすごーく簡単に説明している。この簡単さがしゃべりの魅力。つまり「明治維新って、フランス革命なんだよね。だって突然上から『今までとは違う別の社会を作るんだ』っていう理念がやってきちゃうんだもん。だから『明治政府』は保守主義勢力どころか、いきなり新しい理念を振り回す『革命勢力』なんですね。明治維新を礼賛する人たちが『俺たちは保守主義者だ』って勝手に言ってるけど、あれは保守主義ではなくて、単なる理念の人なんです。右翼系のね」。ですよねー。でも戦争に突入して敗北した以外はまあまあ何とかなっているのは「明治以降に理念の押しつけが始まる前の日本社会が、かなり成熟して安定していたからですね。私ァそう思いますよ」。これであの空虚な言葉群の謎も分かった気分になったが、江戸の貯金がいつまでもつか不安。

by kienlen | 2017-03-03 09:02 | 読み物類 | Comments(2)
出ている時間が多く、なかなか読書が進まない。昨日メモった中国の小説が入っているこの本を昨日やっと読み終えた。ベトナム、タイ、インド、台湾、モンゴル、インドネシア、中国、フィリピン、韓国、マレーシアの10か国からひとりの作家のひとつかふたつを収録。借りる時は、ちょっと目を通そう、タイだけでも、くらいに思っていたが、まずベトナムのがいきなり面白く、さほどでもなさそうと思いながらタイだから読み通そうと読んだのも結局は面白く、という感じで、一部読み飛ばしたところはあったが結構ちゃんと読んだ。こうして並んでいると、たったひとつの短篇小説から自然環境とか社会とか、早急な判断は危険とは思いつつも国民性のようなものも感じられて感動した。どちらかというと女性作家のが共感というか分かりやすかった。やはりアジアの国における男女差の方が西洋の男女差よりも分かりやすいのかもしれない。日本のようにすでに煮詰まった感のある社会とはまだ違ってダイナミズムと同時に諦めとか倦怠とが混じった空気感があった。このあたりも分かるなって感じ。うーむ、良かった。くどいが短篇小説って面白い!こういう、ベストセラーにはとてもなりそうにない本を出してくれるというのも大変ありがたい、ありがとうございます。
by kienlen | 2017-02-28 19:51 | 読み物類 | Comments(0)
うわあ、これすごい面白かった。『天国の風―アジア短篇ベスト・セレクション』というのに収められている一篇で独立した本ではないのだが、すごすぎてメモっておきたくなった。本の方は高樹のぶ子編ということで新潮社刊、というのが何だか意外だった。図書館でみつけて何となく借りて何となく読み始めたら面白くて読み通せそう。ベトナム、タイ、インド、台湾、モンゴル、インドネシアと読んできて、どれも個性的というかその国の風を感じる、まさにタイトル通りだったが、この中国の小説はまた一段と面白かった。ベトナムもインドもすごく良かったが、こちらはさらに、うなった。

主人公はものすごく魅力的な女性。周囲が年老いていくのに常に若く美しく、決して動じるということもない。レストランを経営していて、料理の腕前がまた素晴らしく、特別メニューとして出される料理の名前も説明もよく分からないが、活字を見ているだけで垂涎もの。言い寄る男は数限りなし。当然みんな金持ちで高い地位。それに対する主人公の態度が、もうオセロのようにひっくり返る歴史ある中国に対する感じのようで痛快というか悟りきっているというか。彼女がどうしてこうなったかというを感じさせる描写はあるが、結局最後まで謎めいたところは残したまま、しかし迫ってくるものあり。東洋の小説って西洋のような神がいない分、生の人間の息遣いも自然もそのままの感じがする。ああ、面白かった。短いのにこのインパクト、短篇小説って面白い。あと、フィリピン、韓国、マレーシアが残っている。

by kienlen | 2017-02-27 14:31 | 読み物類 | Comments(2)
昨日図書館で借りた本の中の一冊を昨夜読んだ。含みのある文章を読んだ後にこういう本を読むと、いかに楽かを実感。出版社がマガジンハウスなので緊張しない、というのも変だが、姿勢を正そうというよりはダラッとしたまま読めそうだというのが最初からあった。これがみすずだったり河出だったりちくまだったら開く時の気持ちが違う。元駐ミャンマー大使の方とジャーナリストの方が短い章をひとつかふたつかずつ担当という、自分にとってはあまり読み慣れていないスタイルの本。一度、昔行ったことがあるだけのミャンマーだが、すごく魅力を感じ、今回タイになってしまったのも本当はミャンマーが第一希望だったのと、いくらかミャンマー人の知り合いがいるのと、タイで唯一友達といえる関係となった人がシャン州出身だったのと、マカオに渡ってしまったミャンマー人の女の子がどうなっているのか気になっているのと、諸々あってミャンマーは身近に感じているというのがあって借りてみたもの。

前半は面白いなと思った。マスメディアの報道が欧米経由であること、その背景説明もあるし、タイが軍事政権というだけでバッシングされるのを、タイの事情を考えて欲しいと憤慨している友人のことを思ったりで納得。独裁というならベトナムの方が当たるのに、どうしてミャンマーばかり責めるのかとか、あとは、ミャンマーがイギリス連邦に加盟していない独立国であることがいかに珍しいかというあたりなど、なるほどー。苗字がないということから想像できることではあるが家制度のようなものがなく実は欧米より昔から男女平等なのであるということを歴史と仏教、何より王家が世襲でなく、よって貴族階級がないことと絡めて説明してあってり、自分としては知らないことだらけで斬新でますます好きになった。そして俄然、もっと知りたいミャンマーとなったが、後ろの方は疲れてしまった。ミャンマーがいくら確固たる方針でやってきたとしても、このまま世界の資本が流れ込んで世代交代してそれを貫くことができるのかとか、どうしても疑問になることへの言及はなくミャンマーと日本の賞賛ばかり。いくら素晴らしい国であるとしても素晴らしいだけであるというのはあり得ないと思うのだけど。面白いことがたくさん知れただけに、かなり残念だった。



by kienlen | 2017-02-17 08:22 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


by kienlen
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