カテゴリ:読み物類( 702 )

本を読むという雰囲気でなく、こちらに来て最初に読んだ本のメモを忘れていた。これまでも何冊か、多分3冊読んでいるパオロ・マッツァリーノさんという怪しげな名前の著者の本。ちゃんと怒りましょう、なぜならば怒るのはコミュニケーションだから、ということを、ちゃんと怒っている著者の方法と経験から語り、同時に、昔は良かった、昔はちゃんと怒る人がいたのに、という論がウソであることを社会学的に指摘。中島義道先生の怒り方にちょっと似ていると思っていたら、彼の著書への言及があった。何かすごく新鮮なことが書いてあるというわけではないけど面白く読んだ。
by kienlen | 2017-06-12 20:10 | 読み物類 | Comments(0)
中島岳志が好きだと言いふらしていたら、これ好きかも、2時間で読めるから読んで、と友人が貸してくれた。もう読んでいる時間ないから謝って返却しようと思って一応ちょっと開いてみたらなんと面白そうで結局今日はこれを読むのに2時間ではおさまらずもっとかけて読み終えた。1927年生まれの森崎和江に1975年生まれの中島岳志が話を聞くスタイル。戦中から戦後にかけてのある部分の状況が森崎和江の生い立ちを聞くことでみえてきて、その後の活動を聞くことである部分の戦後史がみえてきて、森崎和江という人のこともみえてきて、傾倒している友人はいたが自分は読んだことのない谷川雁のこともちょっとみえてきて、その他当時の知識人のことも身近に感じられる本。竹内好もかなり登場。対話と解説のバランスもほど良くてぐいぐい押されるように読める内容だった。大変読みやすく、でも中身は濃い。

近々返却する人の本に付箋をつけてもしょうがないのに、どうしてもで一か所だけ貼ったところがある。〝その後の森崎さんは『からゆきさん』など民俗学的、ドキュメンタリー的な作風に向かう。運動を通して新しい共同体をつくるというよりは、「私」と日本をより深く探すことになる。他方で、その後の日本の運動は、70年ごろの森崎さん的な問題意識を十全には引き継げなかった例も多く、以前からの運動の負の側面、つまり集団系世知を閉鎖的なものとして捉え、仲間内で凝集し、内ゲバや統制ばかり幅をきかす流れが強くなった。それが、広い意味での日本の民衆運動の、いまも残る弱点をつくってしまったと言えよう〟。良い本を紹介していただいた。

by kienlen | 2017-05-06 21:35 | 読み物類 | Comments(0)
雨模様で、暖房を入れない家には寒い。風呂に入ってソファに寝転がって読んでいたがちょっと寒くて起き上がって読み続けた。東京の古本屋街をぶらぶらしていた時、安く売っていたので買った。別の本を読みかけて難しくてこっちにちょっと目を通したら面白くて最後まで。犯罪が起きると必ずのように精神鑑定が話題になり、またそういう関連の本が出たりもするが、これは最近の事件を扱ったり、ひとつの特異な事件について詳述するのでも、それに著者が鑑定したものを述べているのでもない。発行が1997年と、古いといえば古いが、取り上げている事件そのものはもっともっと古いし精神鑑定の歴史にも触れていて基本的なことが分かって面白かった。それと、元々単純なものとは思っていないが、それにもまして精神って実に複雑なのであるというのも分かった。

5章立てで、主にひとつの事件を取り上げながら関連を掘り下げている。まずレーガン大統領暗殺未遂事件。3章のロシア皇太子暗殺未遂の大津事件については明治の精神というか、そういう視点からの分析がひじょうに興味深かった。最後が「哲学者アルチュセールはなぜ妻を殺したか」。哲学者アルチュセールの名前だけは知っていたが読んだこともなく妻を殺したことも知らなかった。これもひじょうに興味深い、まあ、どれもひじょうに興味深いのだが。で、この章に出てくるフーコーのピエール・リビエールの犯罪はあるのに読んでいないのですぐにも読みたいが、そんなことしている余裕があるのだろうか、と、問う相手もいないのだが。面白い本だった。本との出会いもご縁だが、今日は久々の友人から連絡があり、人のご縁の不思議さをまたまた感じた日だった。


by kienlen | 2017-05-01 15:50 | 読み物類 | Comments(0)
仕事がなく用事と言えば友達に会うだけなので、それ以外の時間は本を読める、ということになる。荷造りやら準備やらあるはずなのにいいんだろうかと一抹の不安を覚えつつ昨日はこれを読んだ、会った人は昼前に1人、ランチに2人。この本もやはり書店で偶然見つけたのだが、買った理由は類書があまり見当たらなかったこともあるが、この著者の前作を読んで大変感動し、その後が気になっていたからだった。それにしてもこういう本は何度も読み返す部分がないし、行間に意味を探したりの必要もないので、速読のできない自分にもさほど時間をかけずに読めてしまい、あっけないが書く方は苦労しているんだろうなというのが伝わってきた。内容が内容だけに取材したままに書くことはできないし、大量のデータから一般化するわけでもないので、事例がだぶっていたりするのはしょうがないのだろう。

児童相談所のことって分かりにくいので貴重な報告だと思った。中でも特に外からは分からない、サブタイトルにもある通り、児相の一時保護所を取り上げている。よってますます貴重であると思う。だって外から見えないというだけでなく、どうやら当事者、つまり子どもにとっても親にとっても見えにくい場所であることがこれを読むと分かる。私は告発調のものは好きでないので、このように冷静に伝えてくれるのは好感だった。帯にも「告発では、解決しない」とあるのでそもそもの狙いがそうだと思うし、的を射ていると思う。著者の主張は機会の均等とはっきりしているので、その点では分かりやすく安心して読める感じ。とにかく児相の人手不足というのはヒシヒシと伝わるが、その人件費によって貴重な子どもが万という単位で社会人として納税者になれるなら、人殺し用の道具よりずっと安いと思うが、国家というのはそういう類のものではないのだろう。

by kienlen | 2017-04-29 09:10 | 読み物類 | Comments(0)

『別れの挨拶』

また丸谷才一の本でしかも新刊。東京で書店をブラブラしている時に見つけて購入したもの。外出が続いて本を読む時間がないのもあって時間がかかっていたが、今日は久しぶりに家に居られたので読み進めることができ、午後に会った友人とはまた本の話ばかりしていたのもあり、夕方父を訪ねた後に続けてやっとのことで読み終えた。今ごろになって丸谷才一というのも何だが、と何度もいうのも何だが、やはり面白かった。これまで読んだのは書評ばかりだったけど、この本はそれ以外のエッセイも挨拶文の原稿なんかも入っている最後の新刊ということだ。古典を扱っている章は、特に自分の無知が悲しくなるが、分からないなりにも面白く読めるのは文章が分かりやすいし、もっていき方も分かりやすいから。

どれも良かったけど、芥川龍之介の自殺になるほどと思い、大岡昇平の野火については涙が出たし、未完だったクリムト論もすごく面白かった。歴史的かなづかひの説明にもすごく納得。クヮルテットを聴かうは、プラハの教会コンサートを思い出して、あああああ、そうなんだー、と感じ入り、声を出して笑ってしまったのもあり、多様な楽しみ満載だった。それにしても困った。ここでも絶対読みたいという本が何冊も増えてしまった。最近買っているのは丸谷本の影響下にあり、それを続ける限り読む本に困ることはないけど、読み切れるわけがない。でも、やっぱり本は面白いし、それでいいのだと思わせてくれるこういう本に心より感謝です。

by kienlen | 2017-04-27 23:08 | 読み物類 | Comments(0)
本読めない生活からももうじき脱却、というわけでやっとこれを読んだ。海外篇があまりに面白かったので日本篇もと思って買ったものでまたもや圧倒されて今日も丸谷才一本を追加で仕入れてきた。勉強にしろ本にしろ若い時からやっていたら人生に役立ったかもしれないのに、と今になって思うが、人それぞれ時期というものがあるのでしょうから、しょうがない。何もかもが遅い。でもだからこその楽しみ。この本のタイトルも快楽としての読書ですから、若い時じゃあそんな余裕はないのである。取り上げているのが自分には歯の立ちそうにないものが多く、読んだことがあるのとなるとほとんど皆無で村上春樹の『スプートニクの恋人』と吉行淳之介の『砂の上の植物群』くらいではないだろうか。読んだと言っても砂の上なんて昔昔で覚えてないし。

ああ、広辞苑もあったので入れるべきか。辞書の比較があったり事典があったりとにかくジャンルが色々でまたまたひじょうに面白かった。即刻読みたくなったのは山崎正和の『室町記』。それで今日は紀伊國屋本店に行ったのに…なかった。がっかり。この著者のは複数あってどれも面白そう。あとは吉田秀和も何冊もある。この人のは新聞等でたまたま見るたびに素晴らしいと思っていたので嬉しくなった。今、生きていたら何を紹介してくれるんだろうか。そうそう今日はこれに影響されたのもあって井上ひさしの『私家版日本語文法』を買った。このところ本屋でそれほど一気買いしてなかったが今日は2万円買い物して、それから娘と中村屋で恋と革命のカレーを食べながらビールという文化的な日であった。娘がバイト前なのにビールを飲むというからそれはいけませんと言ってひとりで飲んでいたら、ビールの代わりとデザートを注文された。

by kienlen | 2017-04-16 19:14 | 読み物類 | Comments(0)
薄いブックレット、いつ買ったのか覚えていないがこういう状況下で読むにはいいかなと思って持参していたのを大変興味深く読んだ。タイの東北地方にはラオス語を母語にする人が多く、民族的にも料理もラオスに近いと聞いてはいたが、そういえばどうしてなのか知らなかったことに気づいた。恐ろしい。ラオスという国の統一はされていなくて争いがあったりして弱小化していたのに乗じてタイが属国にしていたそうだが、それをフランスが植民地にする時、タイが領土を守るためもあってメコン川のあちら側を割譲した、というところまではまあかろうじて知っていたが、これをラオス側からみると、タイの東北部は元々ラオス語だったのにタイの辺境の一地方に甘んじて差別されている、ということになるわけなのだ。

で、ラオスはフランスの愚民政策の下、ラオス語の正書法を確立しないままにきたそうだ。ここで問題となるのは、タイ語とラオス語がそっくりなため、タイと同じ、つまりサンスクリット語、パーリ語を語源にする言葉の表記に語源を残すという方法を取るのはラオスの独自性がないようで嫌だ、だったら発音通りに綴る方法にするか、いっそローマ字表記はどうだ、などの議論があったそうだ。とにかくラオスはラオスとして独立した国でなければならないのだから、何とか理屈をつけて実は各地に広がったタイ族はラオスから、みたいなとんでも説を出さざるを得ないなどの小国の苦悩に涙。ラオスに初めて行った時の一番の衝撃は本屋に本がほとんど全くないことだった。この本を読んであの光景と結びついた。コンパクトにまとめてあって読みやすく色々納得できた。

by kienlen | 2017-04-01 07:57 | 読み物類 | Comments(0)
本を読んでいる時間はあまりない。勉強しないとならないし。とはいえせっかく何冊も持って来たので関連書籍くらいはと思ってこれを読んだ。古本屋で見かけてタイ関連は一応という意味で購入してあったハードカバー。タイトルだけで中身を特に検討しないで買ったので自分の想像とは色々と違った。一番は文体で、会話体になっている。こういうのは初めてかもしれない。読みやすさのためということで、確かに読みやす過ぎるくらいに読みやすい。著者が実際に訪れた様子を中心にして、そこに歴史や政情などを入れている。国境好きにはタイトルだけで限りなくワクワクだし、行きたくなる。こういう状況でなければ飛んで行きたい。それにしても、こんなに平穏な期間は一生で一度きりに違いない。何しろ閉じこもって決められたスケジュールに従っていればいいのだから、信じられない日々。
by kienlen | 2017-03-30 07:21 | 読み物類 | Comments(0)
出がけに読み始めて、どうせなら最後までと思って持参。買ったのは結構前で、実はすぐに読み始めたがなかなか読めずそのままになっていた。タイトルから抱いた予想とはだいぶ違う内容だった。予想というのは自分の勝手な予想なのでタイトルが悪いわけじゃないけど。シリアに行った動機は今ひとつよく分からないが、この本を書いた理由はよく分かった。つまりイスラム過激派と一口に言っても色々なグループがあるということと、マスコミ報道では偏向がありすぎて伝えたいことが伝わらないということから。

色々なグループについての説明は分かりやすかった。文章にもうちょっと理があるといいなという感じがした。でも、逆にこの方がリアルかもなという気も同時にした。帰ってからの話の方が興味深かった。多分こういう本を読んだ理由のひとつは、昔会ったことのある人がフランスの外人部隊にいたことのある傭兵で、少数民族のためにビルマ軍と戦っていて、こういう人がいるんだ、と衝撃だったのがあるからだ。その人のことは深く話したわけじゃないので分からないが、共通するものがあるのかもしれないと思いながら読んだ。あの時の彼も、今だったらシリアだったかもしれないし、この著者もあの当時だったらビルマかもしれないなと。

by kienlen | 2017-03-23 20:32 | 読み物類 | Comments(0)

『日の名残り』

カズオ・イシグロの本、初めて読んだ。丸谷才一が絶賛していて俄然読みたくなって購入。朗読者を読んだ時、今まで読んだ中で一番感動したと思っていたが、それを塗り替えた感がある。いやあ、素晴らしかった。言葉になりません。主人公は貴族の執事という設定。文体は執事の話し言葉風なのでとってもお上品で、しかもいやらしい感じはなくて自然で、お館の執事ってこうなんだ、と、縁もゆかりもないのに分かったような気になってしまう。執事のプロ意識とは何でプロの仕事とはどうで、ということが言葉の端端に表れ、これがまた英国とは英国人気質とは、みたいなところも表していて、いろいろ充分堪能できる仕掛けとなっている。

しかも、構成はこの執事が休暇中にひとりで旅をするというものなので、イギリスの田舎の風景とか田舎の人とかも登場して、これがもうイギリスに行きたい気分にさせられてしまってたまらない。つまり旅をしながら高貴なお方に仕えてきた過去を回想するわけなのだが、回想している年は1956年で、回想されているのは1920年代から30年代、かな。つまり第二次大戦が迫っている時期まで。ドイツがイギリスにアプローチしていた様子なんかが秘密会議とかの様子で分かるようにもなっている。執事の視点なのでものすごく抑制が効いていて、というか、それが品格というものであるというのは結構くどく語られているのだけど、隅々まで巧妙な仕掛けがいっぱいで小説の楽しみ満喫。原文はどんななんだろうか、この前ロンドンに行く前に翻訳を読んでいたら原書を探したに違いない。残念だ。執事の現在の主人はアメリカ人になっているのだが、コーク家の方々もイギリスの建物を買いあさっていたので、それと重なりなるほど。ああ、素晴らしかった。深く感動。

by kienlen | 2017-03-16 14:59 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


by kienlen
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