2017年 03月 03日 ( 1 )

『たとえ世界が終わっても―その先を生きる君たちへ』

しばらく前に読んだ。本屋をぶらついていたら橋本治の新刊がありペラペラして買った集英社新書。初のしゃべり本とのことで、確かにしゃべり口調。他にもあったんじゃないかと思ったけど、しゃべり本にするつもりでしゃべっても書き直してしまっていたのだそうだ。でももう年なのでしゃべり本にしたとのことで一応聞き手として51歳のフリーライターがいて、でもこの人は著者の考えが分かり過ぎてしまうのでそうじゃない人を入れるということでバブルも知らない1984年生まれの編集者が入る、ということになっているが、もちろんしゃべっているのはほとんど橋本治でたまに合いの手が入るというか入れてってリクエストするというか。出だしはイギリスのEU離脱について。大きなものはもうダメじゃないかという橋本説を地でゆくものであるとの見方。異議なく刺激なくの論がしばらく続くので復習的かと思ったらだんだん橋本節全開って感じで面白くなってきた。

それで半分よりちょっと後ろのあたりに付箋が多くなった。どういう章かというと、バブルを経て「社会」が消えた、なにを言ってもムダな人たちの2つの章。実体経済以外に金融経済を作り出した過程ははい、テレビが料理番組ばかりになったのがどうしてかというあたりは、なるほど。付箋だけにして線は引くまいと思っていたが手元の色鉛筆で引いてしまった所がある。日本の保守が何かっていうのはねじれてて謎であるらしいのは常識らしいがすごーく簡単に説明している。この簡単さがしゃべりの魅力。つまり「明治維新って、フランス革命なんだよね。だって突然上から『今までとは違う別の社会を作るんだ』っていう理念がやってきちゃうんだもん。だから『明治政府』は保守主義勢力どころか、いきなり新しい理念を振り回す『革命勢力』なんですね。明治維新を礼賛する人たちが『俺たちは保守主義者だ』って勝手に言ってるけど、あれは保守主義ではなくて、単なる理念の人なんです。右翼系のね」。ですよねー。でも戦争に突入して敗北した以外はまあまあ何とかなっているのは「明治以降に理念の押しつけが始まる前の日本社会が、かなり成熟して安定していたからですね。私ァそう思いますよ」。これであの空虚な言葉群の謎も分かった気分になったが、江戸の貯金がいつまでもつか不安。

by kienlen | 2017-03-03 09:02 | 読み物類 | Comments(2)

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