2017年 02月 27日 ( 1 )

『謝秋娘よ、いつまでも』

うわあ、これすごい面白かった。『天国の風―アジア短篇ベスト・セレクション』というのに収められている一篇で独立した本ではないのだが、すごすぎてメモっておきたくなった。本の方は高樹のぶ子編ということで新潮社刊、というのが何だか意外だった。図書館でみつけて何となく借りて何となく読み始めたら面白くて読み通せそう。ベトナム、タイ、インド、台湾、モンゴル、インドネシアと読んできて、どれも個性的というかその国の風を感じる、まさにタイトル通りだったが、この中国の小説はまた一段と面白かった。ベトナムもインドもすごく良かったが、こちらはさらに、うなった。

主人公はものすごく魅力的な女性。周囲が年老いていくのに常に若く美しく、決して動じるということもない。レストランを経営していて、料理の腕前がまた素晴らしく、特別メニューとして出される料理の名前も説明もよく分からないが、活字を見ているだけで垂涎もの。言い寄る男は数限りなし。当然みんな金持ちで高い地位。それに対する主人公の態度が、もうオセロのようにひっくり返る歴史ある中国に対する感じのようで痛快というか悟りきっているというか。彼女がどうしてこうなったかというを感じさせる描写はあるが、結局最後まで謎めいたところは残したまま、しかし迫ってくるものあり。東洋の小説って西洋のような神がいない分、生の人間の息遣いも自然もそのままの感じがする。ああ、面白かった。短いのにこのインパクト、短篇小説って面白い。あと、フィリピン、韓国、マレーシアが残っている。

by kienlen | 2017-02-27 14:31 | 読み物類 | Comments(2)

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