2017年 02月 02日 ( 1 )

すごく面白かった村上春樹の短編小説案内の中で特に強烈な印象だったのが、小島信夫の「馬」だった。このところ貴重な本友達が短編小説に凝っているのもあり、そういえば小島信夫の短編集があったはずと思ってチェックすると、この馬も入っていた。一昨日の上田往復電車内と食事しながらなどで、馬を先頭に3編読んだ。日常の微細を描いているようでいて、全体的にはシュールな面白さ。日常生活を突き詰めるとそうかもね、こうなるかもね、と感じるが、やはり現代の日本との決定的な違いは戦争でしょう。この3編の中で直接それを扱っているのは汽車の中。敗戦直後らしき汽車の中での出来事を延々と書いてある。一分の隙もなく人を詰め込んだ車内の詳述などちょっと異様なレベル。でもなぜか飽きない。なんかもう人間に対して、社会に対して吹っ切れている感がビシビシだな。

馬を紹介してくれた短編案内には感謝。あれを読まなければ読まずに終わったと思う。小島信夫といえばアメリカン・スクールしか浮かべられなかったし、これさえ読んだのは最近のことだ。で、この時は何だかすっきりしない小説と思ったけど、こうして4編読んでみると、どれもすっかりしない。で、小説って、考えてみたら謎解き目的のようにすっきりするはずがないのだった。あと共通しているのは男と女の関係かな。男の存在の不安定さと女のそれの相対的な確かさというか。馬はそれそのものがテーマという感じ。これはまあ夫婦を描いたもので、夫が知らない間に材木が運ばれていて妻の段取りにより立派な馬の家が増築され、素晴らしい馬が家にやってきて、妻が夫よりも馬と親しくなっていく様子を夫の目線から書いている。どれも面白かった。あといくつかあるので読む予定。



by kienlen | 2017-02-02 08:49 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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