インドで出会ったタイ

インドでの貴重な自由行動というのはラジギールという町のホテルの朝食後だった。お釈迦様在世当時のマガダ国の首都だったという町で、早朝5時に出発して霊鷲山の頂上で日の出を拝みながら念仏を唱えた後、ホテルで朝食、次の町内観光までのちょっとの時間が自由行動となったわけである。その時間を何分にするかでガイドさんが迷っていた時にメンバーの1人が「××さんがタイのお寺に行きたいって言っていたから1時間欲しいでしょ」と言ってくれた。それで、指示に従うだけにしとこうと思っていた自分の気持ちの中に小さな希望が入り込んだ。同室の若い子を誘って外に出た時の開放感に、キャッと叫んだほどだった。
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バスの中から見えて目をつけておいたタイの寺院はすぐお隣だった。行くと地元のインド人のすごい行列ができている。言葉が通じないので何が起きているか分からないが、場所を考えると、多分タイ人による施しであろうと想像する。そこに一行の中でも若手の男性がホテルのボーイさんと一緒に来て「抽選があるみたい、行ってみよ」ということで、インド人の人込みの中に皆で入った。気軽な行動だったがとんでもないことになってしまった。東京の満員通勤電車以上の勢いで皆が一斉に鉄の扉で閉ざされた門に押し寄せたのだった。戻るに戻れない。圧死とまではいかなくても怪我くらい覚悟してなす術もなくもまれているところに「その1人だけ」とガードマンが叫んで私だけタイ寺院の敷地内に入れてもらうことになった。そこはタイだった。見慣れたお坊さんが何人もいてお経をあげている。私もタイ人と一緒にひざまずいて手を合わせていたら「どっから来た?」と聞かれて「日本から」と答えた。「インドには貧しい人が多い」とタイ人。姉はしょっちゅう施しに来ているが自分は初めてだ、と言う。そこに、私からすると、はぐれた日本人が現われた。向こうは向こうで、1人はぐれた、と言ってくれて、多分それで私が入れたらしい。
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もうそこで時間切れ。「出してくれ」と言うと、言われたタイ人がびっくりである。入ったばかりで何もしてない。「急ぐのか」と言うから「次の場所に行かなきゃならない」と言ったら鉄の扉を開けてくれて、また人込みに放り出された。施し物を求めて入りたいのに入れてもらえないインド人たちにもまれながら、なんとか抜け出た。1人のサリーの白いマフラーがほどけて踏まれて砂だらけになった。観光の日本人と施しのタイ人と、それを受けられるのはごく少数というインドの地元民の姿を象徴するような出来事は一瞬でおしまいだった。「身なりの良いインド人の方が中に入って毛布とかもらっていた」と同室の女の子が感想を述べた。抽選って公平なのかな、などと根拠のない憶測してもしょうがないけど。
by kienlen | 2008-11-17 21:52 | | Comments(0)

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