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時間を返してくれ!『女女格差』

ブリーフィングする必要があったのでまじめに読み始めた。厚いから結構時間かかるかも、と思いながら。まじめに読んでいたら頭がおかしくなりそうになって、途中で「何でこんな本買ったんでしょうか」と持ち主に問い合せた。これは一体何なんだろう。本だ。しかも同志社大学経済学部の橘木俊詔教授という方が著者。華々しい学歴はもちろん、元日本経済学会会長で男女共同参画会議議員で…って素晴らしい社会的地位も並んでいる。あまりに素晴らしすぎて、女女格差という視点から言えばどん底に位置する私などが触れてはいけないのだろうか。帯には「低学歴と高学歴、結婚と非婚、正社員とパート、美人と不美人…どれほどの差があるのか?その差は不公平なのか?格差問題の第一人者が鋭く迫る」とある。東洋経済新報社、ハードカバーで価格1800円という外見からうかがえるのは、フツウの人が読む本らしい。私だって資格あるぞ。でも、これのどこが「鋭い」のか、全くもって不明。私が納得できたのは問題提起の一部分のみだった。つまり、過去の階層研究から女性は排除されていたということ。階層間の流動性の高さは平等性を示す指標のひとつだったと思うけど、その流動性をみるのに父と息子の比較であって娘はつい最近までいなかったと知った時は衝撃だった。男にくっついて移動したりしなかったりだったのだ。で、この本はそれをちょこっと問題にしていて、女間格差もみていくべきでしょう、ということ。私自身はこういうのってあんまり興味ないけど、はいどうぞ、とは思った。

それでどうやって見るかというと、公表データを羅列して解説を並べているだけ。しかも単純集計のみ。複雑な統計処理してもキミたち分からないだろ、っていう親切心からだろうか。うーむ、そこまでお気遣いするほどのものなんだろうか。でもまあ、その解説が笑えたり泣けたりすれば面白いけど、月並みに凡庸をかけてバーキングパウダー注入したみたいなもんである。統計解説の後でご自身の説明があるのだが、これの根拠が不明。てっきり学問というのは根拠の厳密さが要求されるものかと思っていた自分が間違いだったようだ。でも専門書じゃないから煩雑さを避けるのは分かる、と思うことにしたが、それにしても幼児書でもないんだしなあ。で、結局悟ったのは、この本の対象読者は、女性と関わったことがない+想像力ほぼ皆無+公式見解に裏はないと信じている人+女性だったことがない人なのだろうということ。だから女は対象外なのだ。結局過去の階層研究と同じ所に戻りました。とはいえ、漠然と感じていることをデータで実証することに研究の意義があるんだから、その点は有意義なんだろうか。分からない。ああ、こんなにびっくりした本って久々だったな。「美人と不美人」の章は、我慢の限界に達して読めなかった。
by kienlen | 2008-09-19 23:55 | 読み物類 | Comments(0)

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