ヤン・ソギル著『闇の子供たち』

読んでいたら眠れなくなった。結構厚い本だけど一晩で読了。タイの子供たちのむごたらしい人身売買と性奴隷の闇社会に踏み入った小説。映画化されて話題になっている、といってもどの程度なのかは知らないが、とりあえず本は書店で平積みになっていた。さすが幻冬社って感じ。映画は来月当市でも劇場公開されるので観る予定にしている。これは小説なのだが、私にはすごくリアルに感じられてしまった。始まりは貧しい山岳民族の村に子供を買うブローカーが訪ねて行くところから。いかにもありそうな始まりで、次の場面は16歳くらいの少女が、親孝行のために泣く泣く同意、というのを想像するととんでもない。買われるのは8歳の女の子。それからすさまじい場面の連続でほっとする場面はほぼ皆無。人がここまで残酷になれる理由についての説明はない。多分それが不要なのは性癖が重要なファクターだからで、性癖というのは一体何なのだろう。生来のものでどうしようもないのか、例えば刺激を与えないことでコントロール可能なのか、あるいは社会的に育成されるものであってかなり制御が可能なのか。そのミックスか、どれでもないのか、とにかく分からない。分かるのはとにかくやっかいなものであるということ。これがひとつの大問題。

次が、このやっかいなもので商売をする人々の存在。この理由が説明される場面はちょっとだけあるが、ほんのちょっとのサービス程度。ただこれはまっとうな仕事があればかなり解決するようにも思うのだが、そう簡単にいかないのは非合法活動は当然ハイリスクハイリターンなのと各界癒着の元、利益が広範囲に及ぶので抜け道なし状態になっているからなんだろう。それと、こういう世界はいったん関わった人が抜けるのはムリだろうから、少なくとも降参できる仕組みが作れないものだろうか、大人の側に。人のいくばくかの良心を最大限に引き出す手立てを講じられないものだろうか。だって、正義の側に対して、仲間が殺されて自分が死の脅迫を受ける中で勇気をもって立ち向かえる人であれというのは、非現実的に思われる。少なくとも目をそむけるべきではないが、かといって「何もしないアナタも加担している、それは卑怯なことである」というだけのメッセージだけだと勇気のない私なんか「じゃあ、知らない方がいい」と後退してしまうことも考えられる。それだけは避けたい。低年齢の子に絞っていることである問題は見えやすいともいえるけど、おかげで性癖が絡んでこざるを得なくて、それで他の問題は見えにくくなる。それが分かる小説でもあった。この勇気に敬意を表して、そしてみんなに読んでほしい本。
Commented by at 2008-09-14 21:55 x
私は映画を観ました。
今まで私にとってタイは「憧れの国」でしかありませんでた。
勝手に「微笑みの国」は優しい人達で溢れていると思っていました。
日本人の在り方、自分の中にあるエゴ、
大人の身勝手の中で犠牲になる子供達、
きっと何もできないであろう無気力感・・・。
でも、この映画を観てよかったです。
本も読んでみようと思っています。
Commented by kienlen at 2008-09-15 11:37
真さん、こんにちわ。映画はまだ観てないですが、情報を見る限り本と相当違う印象を受けます。本もお勧めですよ。優しい人だけの国はあり得ないとしても、幼い子供のこんな形での犠牲は残酷すぎ。しかし仮にタイが厳しくなったとしても周辺諸国があるしで、買う側の論理こそ問われるべきだと思います。それとここまで幼いと、親も。
Commented by eaglei at 2008-09-15 14:11
日本の企業で平然と働いている人が、タイの女性を買っていることがあるのでしょう。
そして子どもたちも・・・・。
そんなことを考えると、タイの日本企業なんて信用できなくなります。
僕の勤める会社のタイに工場がありますが、どうなんでしょう?

日本人がタイの社会を壊しているのではないかと、怒りを覚えています。

Commented by kienlen at 2008-09-15 17:27
eagleiさん、日本人だけを問題にしたら逆に本質が見えにくくなると思いますよ。落ち着いて落ち着いて(笑)。でも「…あるのでしょうか」に対しては自信をもって、もちろんあります。売買春をどう考えるかはちょっと保留にして、私はとりあえず子供と成人は分けて考えた方がいいと思うんです。闇の子供たちに出てくるような年齢の子に対してはただただ残酷な犠牲者で加害者に同情する気にはなりません。ただ成人の場合どうかとなると、もっと複雑だと思うんです。近いうちに本文で考察してみたいと思います。難題を吹っかけられました。
by kienlen | 2008-09-14 18:03 | 読み物類 | Comments(4)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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