奥村宏『判断力』

ひっかかりを1件除去した。プチン。それでちょっと前に読んだがメモってなかった本のこと。ここんところ、どうも面白味を感じられなくなっている岩波新書だけど、これはとっても面白かった。いつ買ったのか覚えてないが、2004年発行で、同年の3刷のものだ。基本的には経済学を基礎にしているところがあるので、当方の知識不足は否めないが、そんな難しい論をふりかざしているわけではなくて、日本で表面化著しい大問題が判断力の欠如に由来していることを具体的事例を挙げて危惧し、判断力のない面々ということで政治家と経営者と会社人間と輸入理論の学者とジャーナリストという、つまり、社会どころか国の行方を左右しちゃえる立場の人々を槍玉に上げ、なんでそうなっていて、その弊害が何かを解説し、では判断力を養うにはどうするかというノウハウもサービスしている親切な本。この著者は日本の資本主義を法人資本主義であるとくくっていて、その問題点を指摘してきていて、以前に別の本を読んだような気もするが確信はない。それで経済学の学者かと思い込んでいたけど、もともとは新聞記者だったということを知り、平明で分かりやすい文章に納得がいった。

何を根拠に判断するかってきっと実に難しいのだろう。この本で問題にしている判断力というのは個人個人のそれというよりは、規模が大きくて、さらにというか、だからというか、制度由来も加味せざるを得ないわけだが、もっと単純に個人の判断力が試される場としては選挙なんて最たるものかもしれない。つい先日も、友人の1人が自分の投票行動の根拠を「○○さんが支援しているから」で決めるようなことを言っていてびっくりしたところだ。しかしこれも彼女の判断力。私の場合は投票する人を他人の基準で決めることはないとなんとなく思っているが、買い物だと「通販生活」さんに判断を相当お任せしている。つまり商品の仕様、機能等々の情報を自分で収集してから判断するという手間を私はかけたくない。この間携帯電話を買った時も面倒で面倒で販売員と夫に判断の相当部分を任せた。でも、この人に判断を委ねようって判断は自分でしているともいえる。そもそも自分の判断とは何で、判断力とは何なんだ、という点は、この本のテーマではないから、哲学的な迷路に入ることなく面白くてためになって、そしていつものように日本を憂いて恐くなる。このパターンの本をどうやら面白いと判断する自分がいるようだ。そこばっかり旋回しているようで情けない。
by kienlen | 2008-03-09 01:17 | 読み物類 | Comments(0)

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