衰退の温泉町の商店にて

コーヒーが好きなので何種類か取り揃えている。最も愛飲しているのは、生活クラブ生協のもの。注文しそこねない限り常飲はこれ。お値段手頃で美味しいから好き。これは別として、どっかに行って気が向くとさらにいろいろ買ってみたりする。この間、温泉町に行った時、寂れた風情の駅前に間口の広い店があった。中高年向けの安い衣料品が店頭のハンガーに並んでいる。このまま町名を変えても通用しそうに一般的な店に見えた。ただ、大きく取ったガラス面にポップがたくさん貼り付けてあって、何やら雑多に扱っているようだ。こういう店って、珍しく入った客に話しかける店員さんがいそうでためらいがあったが、幸いなことに店内は広大で店員の姿も目立たない。それにオーガニックコットンの洋服やらいい感じの雑貨のコーナーがまず目に入る。へえ、と思って近寄ったらフェアトレードの商品がかなり並んでいた。店構えと似つかわしくないので余計に念入りに見たくなる。ペルーのコーヒーでも買ってみようかと手に取ったら店主らしき男性が近付いてきて、私が目をつけていたのより価格が倍以上のものを取り上げて「これが美味しいんですよ。苦いけどキレがあってね。焙煎を日本人の有名な焙煎家がやっているんですよ」と解説を始めた。
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それで、自分が住んでいる県庁所在地の、この小さな田舎町よりは規模の大きい市にフェアトレードショップがないと言うと「そんな事ないでしょう」とカタログで調べてくれて「ないね」と言う。「こちらは何年前からですか」と尋ねると「10年になる」と言う。以前は2階の広いスペースでやっていたけど、2階は閉めちゃってこれだけ、だと。理由を聞かずとも地方都市の衰退ぶりは共通だ。「もともと洋服屋だから洋服が多くて、アクセサリーなんかは少ないんですよ」「アクセサリーより食べ物の方が良くないですか」「メープルシロップ、これも美味しいんですよ。それとこのチョコレート。スイス製ですが、乳化剤を使わず3日間かき回すんです。これ食べたら他のは食べられないですよ」「甘いものより辛いのと苦いのが好きなもんで…」「八味唐辛子もありますよ。地元の宮大工で養蜂もやっていて焼き物もするスゴイ人が自分で材料から作ってこだわった八味で、あんまり辛くないけど香りが素晴らしいんですよ!」と熱が入る。興味深いけど、少々お高い。その日の日当がもっと良ければ、せめて特急代を加算してくれれば…なんて心境。押し付けがましい風でもないから楽しくお話しして、コーヒーは手頃なのと高いのと2種類買って、チョコも小さいのを買う。ちなみにこれは本当に美味しかった。その他もいろいろと。レジで妻らしき人が「あら、このコーヒー買うの、すごい。私はこっちが好き」と安い方を示した。マニュアル言葉じゃない対応が心地よい。これだけのことで、その町にまた行きたいな、と思った。帰りがけに店主が「これどうぞ」とカタログをくれた。210円で販売していたもので、読んでみたい気もしたが有料じゃあやめようと思っていたものだから嬉しかった。礼を言って出た。
by kienlen | 2008-03-07 20:16 | 出来事 | Comments(0)

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