日本人はなぜいきなり謝るのか

正味1時間足らずの仕事のためにランチを挟んだ待ち時間合計約3時間。でもこういう時間は好きだ。軟禁状態みたいなものだから、目移りできずに本を読むしかなくて集中できる。それを楽しみに、気分で選べるように数冊持参するが、今日は「月刊言語」という雑誌を読んだ。特集「日本語のスタイル」というのに興味を持って買ったもの。もっともこの雑誌は面白そうな特集を組むので見つけると買っている。言語の本であるからエッセイ等も言葉遊びあり、マジメありで飛ばさないで読んでしまうので時間がかかる。どれも面白かった。特集の中に「依頼と謝罪における働きかけのスタイル」というのがあった。著者は熊谷智子さんという方。専門外なので初めてみる「言語行動研究」という分野の方。面白そうな分野である。日本人はよく謝ると言われるが、これも一種の対人行動スキルとして機能しているわけで、特性を浮かび上がらせよう、というのが趣旨。下敷きになっている調査は、数日後に海外出張を控えているのにパスポートを紛失、窓口で再発行を頼む時にどういう態度で臨むか、というもの。たたき台となるやり取りは、依頼に行った男性が「紛失は自分の不注意」であると平謝りしてから、どうしても必要だからお願いしたい、と頼む場面。これに対して日本人と在日外国人の感想は「日本ではよく行われること」なのだそうだ。まるで外国ではよく行われていないような含みを感じる表現ではないか。

自分なら、と想像してみると、多分このシナリオ通りに言うだろう。悪いのは自分ですが、とにかくもう出張の準備はしたしどうしてもパスポートは必要なんです、お願いします!って。で、もしタイでタイ語だったらと想像すると、なんか違うような気がする。いきなり謝ることはしないな、多分。「パスポートが見当たらないんですが再発行してもらえますか」が切り出しの文句だな、多分。その後はひたすら、必要なんです、を訴えるな、多分。この間、タイの高校生が「日本人ってすぐに『すみません』って言うよね。私も癖になっちゃってタイでホテルの予約する時に『すみません、空き部屋ありますか(原語はタイ語)』って聞いたけど、なんかヘン、正しくない」と言っていた。しかしこの場合の「すみません」はつまり呼びかけの言葉なんだから、文字通りに訳してタイ語の謝罪用語句を使ったらおかしくなるだけなんで、表面的な解釈の違いにすぎないといえばいえそう。でもこの小論文の方は、もっともっと奥深い展開になっていて、言語行動の醍醐味を感じさせてもらった。言葉はホント、文化である。
by kienlen | 2008-01-17 19:12 | 言葉 | Comments(0)

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