『英語の発想・日本語の発想』

もう変色しかかって本棚にあったのを読んだ。多分10年近く本棚で温まっていたものだ。とっても面白かった。著者は外山滋比古先生。言語関係は興味があるので何冊か本はあるが、どうも読みきれずに飽きてしまうことが多い。このところナントカの日本語とかナントカ、日本語に関するいろんな本が流行っていたのは知っているけど、手に取ったこともなく何も知らないのは、どうも読みきれないという苦手意識があるからかもしれない。で、この本は飽きるどころかやめられなかった。まさに言語は文化であるから、こうして文化を反映しているという基本線を通しながら比較的に説明してくれると、ああそうだったんだ、と感動の連続。自分が英語圏に暮らした経験があるともっともっと楽しめると思うが、それはないから、自分なりにタイと比較しながら読むことになる。実はこのくらい内容が濃くて面白いタイ語と日本語の比較本が欲しいけど、しばらく先になるだろうと思われる。

漠然と日本語に対して感じるのは、とにかく形式的な言葉が多くないか、ということである。おはよう、こんにちわ、等の挨拶はともかくとして「行って来ます」「ただいま」「おかえり」とか「いただきます」「ごちそうさま」「いらっしゃいませ」とか「お待たせしました」とか「承知しました」とか、諸々。極め付きの困りものというか万能語は「よろしくお願いします」。で、これが面倒かどうかっていうと、覚えればいい、気持ちが入らなくても言葉を発すればマナーは守られるという意味で、きっと外国語として学ぶ人にも便利じゃないかと思っている。サービス業だと朝礼の時に挨拶言葉を唱えたりするが、つまり唱えればいいのだ。で、多分これは言葉における他者との距離感が背景にあるものと思われる。なんてことをいちいち感じながら読む。あとは日本語に主語が不要なのは動詞に内在しているから。タイ語も主語を省くことが多いけど、タイ語の場合は構造が違いそうだな、とか。身体接触の項も面白かった。顔をくっつけて挨拶するのは日本人には抵抗があるが、見知らぬ人と接触していちいち「すみません」とは言わない。ところが欧米の人は逆。それで思い出した。タイでは知らない人から腕をつかまれたりすることが多かった。横断しようとして怖いので誰かの腕を掴んだり。それですみませんでもないし、失礼でもない。横断が終わると黙って離れていくタイミングは見事だった。ところが欧米系の人は空港の売店でほんのちょっと接触しただけでいちいちソーリーと言うのだ。対照がおかしかった。そんな事も書いてある。タイの事は書いてないけど、自分の知っている言葉を加えながら読むと一層面白い。満足の1冊。
Commented by ワイン at 2007-12-06 06:15 x
そうすると、タイ人社会も、対人との距離のとり方は日本に似ているところがあるということでしょうか。道で困っている人に気軽に声をかけたり、子どもをあやしたりするところを見ると、コミュニケーションの積極性は高いと思えるのですが。
タイでは後から来る人のためにドアを手で支えるとか、後ろの人を優先させるいったような、見知らぬ他者意識の文化はあるのでしょうか。旅をしていて、共有スペースを遠慮なく我が物顔で使うのは欧米人の若者に多く、迷惑にならないよう自分のスペースを最小限にしているのは日本人、韓国人に多いなと思います。これは、他者意識ののベクトルの違いでしょうか。質問ばかりしなってしまいました。すみません。つい(^^!)
Commented by kienlen at 2007-12-06 18:16
質問には、私の感想としては、全部イエスです。フレンドリーという言葉がぴったりかと思います。共有スペースを遠慮なく我が物顔で使うのは、欧米人の若者に多いというのは意外ですね。そういうマナーは欧米の方々の方が発達していると思ってました。自分のスペースを最小にするのはタイ人も遠慮深いから同じ…と言ったら意義を唱える人も多そうだな。かなり個人のマナーの次元かもって気もします。
Commented by クリス・ティー at 2007-12-06 20:01 x
個人的には共有スペースを遠慮なく我が物顔で使うのは中国人と関西人に多いような気がするし、そんな彼らが好きだったりします(^^;)。欧米人の若者は我が物顔なのではなく、「公共→パブリック→我々のもの」という認識があって遠慮なく利用してるだけなんじゃないですかね?
Commented by kienlen at 2007-12-07 09:41
個人的には私もそう思っていたけど、ストレートに書く勇気がなかったです。好きだったりする、と言える自信ないからかも。そこがクリスさんの強みだわ。「パブリックは我々のもの」これはなるほどねえ。その通りなんだけど、ここで遠慮してしまうのは、その意識が根付いてないってことなんでしょうかね。パブリックはお上、みたいな発想が抜けないのか。深いなあ。
by kienlen | 2007-12-04 12:42 | 読み物類 | Comments(4)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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