「陸に上がった軍艦」を見た

静かな月曜日。電話もない訪問者もない、誰もいない。外の気配も穏やかそう。ずっと外出続きで、おかげで日記も書けずじまいで今月は随分と欠けている。こんな呑気な在宅は久々に感じる。2日前に観たのが、日本映画の最高齢の新藤兼人監督の語りと徴兵体験から作られたこの映画。新藤監督が体験や感想を語る部分はドキュメンタリーで、経験を再現する場面はドラマ仕立てで、保存映像があるものはそのまま使われていた。チラシには「ドキュメンタリー・ドラマ」って書いてある。戦争映画には、それを遂行する軍隊という組織の理不尽さが何かしら含まれてるように思うが、この映画はその部分だけに特化したもので、ここまでバカバカしい描写の連続に、戦死者や関連の死者、その遺族が観たらたまらないだろうと思った。犬死なんてものじゃない。まったく一歩間違うと喜劇なわけで、もういっそのこと戦争というものが喜劇の劇中劇としてしか存在しないという風にならないものだろうか。

95歳という年齢に達したらきっとこの世に怖れるものはかなり減っているのではないだろうか。そうなって初めて作れるものなのかもしれない。よってある意味枯れた中にも力のこもった、と言いたいが、全体的にはそれよりも力の抜け具合の方が勝った感じで、そのせいかドラマ仕立ての部分のわざとらしさが際立って、これを私は映画そのもののテーマを象徴する意味でも面白いと感じたけど、別の感じ方もありそうだな、と思った。別の人の感想を聞いてみたいものだ。すごく評価が分かれるような気もする。私は『戦争の作り方』を思い出した。あれは確か非戦闘時下の軍隊の腐敗ぶりを徹底的に描いたものだが、軍隊という組織の中でも消せない兵士の主体性は伝わり過ぎるほど伝わってきた。でもこっちのは自由の制限なんてレベルじゃなくて、人の基本的尊厳というところまでを蹂躙しなければならないという考えに満ちているようで、しかも誰の責任の下に行われているのかも不明で、これはどの国の軍隊にも共通する本質なのだろうか。ここに登場するような大局的には無意味にしか見えない行為を正統化させる論理とか心理って何なのか。それこそ日本固有の中かがあるとしたら知っておくべき点じゃないだろうか。
by kienlen | 2007-11-26 14:43 | 映画類 | Comments(0)

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