当時の様子が生々しい『犯罪の通路』

読んだからって全部記録できない。これも少し前、多分半月ほど前に読んだもの。本棚にあった昔の本で、読んだ形跡がなくもないから以前に読んでいるのかもしれない。それとも古本で買ったんだろうか、忘れた。文庫の発行は昭和61年となっているが、元の本は昭和45年に出ている。著者は中野並助という方で解説によると「昭和18年から終戦のレッドパージによって退職するまで、日本の検事総長であった」という。その上級検事さんが関わった事件の記録である。なぜか犯罪ものには子どもの頃から興味があった。それは自分の子ども時代にドイルとかルブランとか野村胡堂が出回っていたからだろうか。そういえばウチの親が買い与えてくれたのもこの手ばかりだったなあ。あれは当人が読みたかったからに違いない。当時、田舎で本は貴重だったはずだ。おかげで私は日本を代表する名作みたいなのは読んでなくて、読書感想文にもアルセーヌ・ルパンだった。好きな男性のタイプを聞かれるとかなりの年齢になるまで彼を挙げていた。その後にチャンドラーとかロス・マクドナルドとかアイリッシュになった。来し方を思うと、このような今であるのもしょうがないな、って気分になる。それにしても我が子は何を買い与えても読まないから無駄になるので、私は自分のために買っているわけだ。人生うまくいかない。

というわけで、なんだかなつかしくて手に取った本だったが、ついつい引き込まれて最後までいった。検事さんの見聞していることだから、当時、つまり昭和10年代頃の時代状況が想像できるようで、現在だったら差別用語だぞ、と思われるような用語や表現が出てくるし、ナントカ捕り物長のような大仰な書き方もノスタルジック。犯罪者とのやり取りも生き生きしていて面白いし、検事の仕事も今とは異なるようで、それもまた興味深いし、検察内部の描写もある。なんだか牧歌的。ここまで技術が進化してしまうと、そがれていく部分に文学があるような気もする。きっちり溶接してしまうとポタポタ感がないのだな。いや、その時代なりにあるのだと思うが、もう自分ではそれを感じ取ることができなくなっているようにも感じる。いや以前に感じたかっていうとそれは大きな疑問ではあるが。いずれにしろ渦中にいるくせにそうでないような感覚だ。歳とると時代物が好きになる傾向は周囲を見ていても感じ取れるが、そういえば昭和初期だって今からしたら時代物に入るんだろうか。
Commented by クリス at 2007-10-26 19:54 x
Happy Birthday to you, happy birthday to you!
Happy Birthday dear Kienlen, happy birthday to you♪
Commented by kienlen at 2007-10-27 10:11
そのお言葉を下さった人として3人目のクリスさんでした。じゃーん。
by kienlen | 2007-10-25 11:36 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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