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『老いてゆくアジア-繁栄の構図が変わるとき』

少し前に読んだ。著者は大泉啓一郎さんという方で、民間企業や公的団体の研究員とか非常勤講師等を務めている方らしくて中公新書から出て間もないもの。この本に興味を持った一番の理由は、バンコク在住時、つまりもう10数年前の「タイの少子化は日本より急速に進むんじゃないか」という感じを確認も否定もできないまま今に至っていることが気になっていたからだ。この本はそのへんを扱っていて、そしてあの時の感じが現実になっていることを教えてくれる。バンコク在住時に私は2人の子を出産したわけだが、2人目が生まれた時に「2人も子どもがいたら貧乏になるね」と言われた時は、なるほどこれがタイにおいては突出した都市のバンコク都民的本音か、と思ったものだ。その彼女は「タイの男は嫌」とかで結婚する気もない中国系のお嬢様だった。日系企業の秘書で自分でコンドミニアム買って、まあ、ある種の典型的なバンコクっ子。自分で洗濯している私を同情の目で見ていた。もちろんタイのお嬢様が自分で家事などするわけない。

アジアの経済発展途上国というと、家族の結束が強くて、日本で失われた道徳や美徳が残っている、みたいなイメージがあることは感じていた。そして笑ってもいた。で、この本であるが、さすがにそんな笑える話しは書いてない。これは人口学の視点なのだろうか、人口動態を中心に各国の動きを俯瞰しているもので、各論としては、ふうん、って思う知見がいっぱいなのだが、最後の最後までどうしても理解できなかったことがある。それは、いまだに経済発展至上主義なんですか、ってこと。私にはよく分からないが、これは経済学の分野の見方なんだろうか。多分そうとも言い切れないように思う。でも著者の学歴を見ると農学部出身。でも農業軽視に見える。私のように、食糧調達を自前でできる方がカネ稼ぎの技術よりエライと思っているし、タイのような食糧自給率100%を超える国の方が経済だけ大国よりも最終的には強いんじゃないかと思っている者には、なかなか理解し難い流れではあった。その点では違和感の強い内容だったが、少子高齢化のスピードの速さ、人口ボーナスという考え方とか、たくさん勉強にはなった。それと国の実情にあった社会保障制度導入の必要性はもっともだ。著者はその分野の専門家でもあるようなので、これはその整備のためのレポートという位置付けなのかもしれない。だったら分かる。
by kienlen | 2007-10-25 01:15 | 読み物類 | Comments(0)

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