ブラジル移民の娘さんとの会話

仕事の待ち時間に知らない女性から声をかけられた。少し年配、上品で知的な感じで静か。ポルトガル語の通訳だという。こういう場合に思い浮かべるのはブラジル生まれの日系2世で、それで通訳やっている知り合いは何人かいる。「日系の方ですか」と尋ねつつ、もう自分の心の中では「違うぞ」と思っている。私が接しているような日系の人は血筋的には日本人と同じであるし、日本語も流暢だったりする。でも醸しだす何かが違う。異国の香りをまとっているのだ。それが今日の彼女にはなかった。やはり「いえ、私は日本人です」と言う。在住地を聞くと「ブラジルと日本を行き来しているんですよ」「ああ、すると、日本でポルトガル語を学ばれて行ったり来たりですか」「いえ、家族は全員向こうです」「???」「父がね、ブラジルに移住したんです」「ああ、では子どもの時についていった?」「いえ、もう大人でした」「???」「高校までは日本で出て、ブラジルの大学に入ったけど途中でやめちゃいましたけどね」「はあ」「長いことブラジルで日本語を教えていたんですよ」…などと興味深い話しが弾む。

「ブラジルに行き来っていっても遠くて大変ですよね、私はタイが飛行時間としては限界です」「タイは何時間?」「6時間くらい」「まあ、近い」「直行便があるんですか」「直行といってもどっかで給油するから北米回りだったりアフリカ経由だったり、いろいろよね。この間はドバイを回ったの」「ドバイって行ってみたい都市です」「息子がね、ドバイでパイロットをしているんですよ」「すると家族は安くなったり…?」「もちろん、年に2回くらいはチケットを手配してもらえるわね」「そうですかあ」「だから去年のお正月は家族みんなでドバイで落ち合ったの」「ご家族は全員ブラジルで?」「そう、日本は私だけね」。聞けば出身地は東京。東京出身者でブラジル移民って珍しんじゃないかと思って聞くと「私は中国生まれなの。父は日本に居られないタイプだったのね。私はもう大人だったけど妹はまだ小学生で自分で決められないから一緒に移住して、学校の関係もあってブラジルに帰化したわね」「あれ、ブラジルって二重国籍いいんじゃないですか。あ、でも日本がダメなんだ」「そうよ」とますます話しは弾んだところで時間切れだった。帰ってから夫の店に行ったら、在日が長い日系ブラジル人の常連さんが閑古鳥鳴く店内で夫とトランプで遊んでいた。ブラジルの香りを浴びた日だった。
by kienlen | 2007-10-22 23:16 | タイ人・外国人 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


by kienlen
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31