『顔の見えない定住化-日系ブラジル人と国家・市場・移民ネットワーク』

昨日はバスで東京まで往復。滞京時間よりバスの中の時間の方が長い。前夜に友達と飲んでいたこともあって行きはほとんど寝ていてちょうど良かったが、帰りは読みかけだったこの本を本気で読んでいたら最後までいった。都内を抜けるのに渋滞で、丸々4時間乗っていたから。これは行き届いた内容で「やっとこういうのが出たぞ」って感じだ。日本は外国人政策に関しての将来像もなければ長期的展望もない。これは恐ろしいことだと思うが、島国なので国境コントロールが可能であるという発想が身に染みちゃっているんだろう。その無策を特に象徴しているのが日系ブラジル人への定住ビザ発給に踏み切った1990年の入管法改正。いきなり何をしてもOKのビザなのだ。この極端さがたまらない。それでバブルの人手不足と相まってどんどん増えるのは当然。一時的な現象かと思っていたら、いつのまにかアパートやら公団やらがブラジル人でいっぱい…という事態になっても、私達はその背景が何なのか分かってない。どころか、国も分かっているんかいって疑問になる、ということが分かってぞっとすることができるのがこの本。

日系ブラジル人に関しては、私なんかが知る限りでもフィールドワークの詳細な報告とか概論的なものはあったけど、この本のように多方面から独自の調査をして、それを元に理論化までしているものは初めてなんじゃないだろか。これは在日外国人関係に興味のある人には必読書に違いない。量的調査も参与観察もしていること、それから重要な事は市場を媒介にしたネットワークでありシステムであるという軸を設定しているので安心して読める。やはりこれを抜きに文化論とかネットワーク論とかもってきても、いまひとつ説得力には欠けるから。全部で12章を3人の著者が分担している。複数の著者の学術書って章ごとにバラバラなのがあるけど、これはそういうのじゃなくて、組み立てもとっても配慮されていて、まずブラジル人の移民過程を説明して、人の移動と国家を論じ、企業社会との関係を論じ、移民コミュニティの形成を論じ、データ分析なども行って、最後は共生論より統合論へ、という提示をしてまとめになっている。私なんかはどうしてもタイ人の移住が頭に浮かぶのでどっかで比較してしまうわけだが、事情は全くもって違う。同じのは国の無策ぶりで、その基盤になっているのが、外国人は一時のお客さん的発想であることは、表現こそ違えここでも強調されている。そうだよ、私の勘は当たった、と喜んでもいられない。そうこうしているうちにここまで外国人たくさんいるんだし。それでもまだ基本政策は無策だし。それにこの分野でいろいろ読ませていただいてこの本の著者のひとりでもある梶田孝道先生は亡くなっちゃうし、どうするんだ。
by kienlen | 2007-10-21 08:18 | 読み物類 | Comments(0)

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