『英語で証言してみませんか-法廷通訳が見たアメリカ裁判事情』

著者は通訳業の森悠子さんという方。amazonで偶然見つけてタイトルだけで即注文。発行は2000年で初版だ。タイトルの印象だと裁判という限られた舞台からアメリカ社会を見るというようなイメージであるが、もっともっと多彩な本で、ひじょうに面白かった。今日は午後に1件、夜に1件同じ町で仕事があって、2件の間には数時間のアキがあったが、帰宅するには時間が足りないので、その町で過ごすことにしてたくさん本を持参して、これを読み終えた。満足、満足。この満足感をどう表現したらいいんだろうか、難しい。だから説明。著者は高校をアメリカで卒業して大学を日本で卒業してからアメリカで結婚して子どももいて、通訳と翻訳業を営んでいる人。業務は主に日本企業が法律問題に巻き込まれた時の対応で、つまり特許とか従業員からの不当解雇の訴えとか。よって業務上深い関係を持つのはアメリカ人弁護士と日本企業の企業戦士たちだ。もうこれだけでもアメリカの価値観の一端と日本の価値観の一端の対比が浮上して、ホホウ、と思う場面満載。ホホウ、ホホウでどんどん進むのだが、このホホウは驚きというよりは、自分が見知らぬ国でありながらなんとなく摂取してきたアメリカに対する情報の確認作業のようなもので、とっても説得力がある。

これは30年近くを白人アメリカ人で、本の中で説明はないが多分専門職であろうと思われる夫と暮らし、仕事を通じて日本人と日々接し、短い頻度で日本とアメリカを行き来し、両者を同時に体験しているこの著者ならではの内容だろう。私にとってはすべてが面白かったが、まず最初に出てくるのは、日本人がアメリカの裁判で証言する際の言葉遣いである。悉くアメリカ的ではない。婉曲表現、遠慮の美学に満ちている。それを訳す立場の著者。これをこのままアメリカ人が聞いたら、この自信のない態度は何かやましいに違いない、と感じる、のだそうだ。しかも英語にする時には主語も時制も単数か複数かも確認しないといけない。ひええ、タイ語はこの点日本語同様に曖昧だから一緒になって曖昧にする逃げ道があるが英語は厳しいな。好ましいのは著者がどっちにも肩入れしてないことである。そしてそれは学者先生の中立ともまた違って、普通の悩みの感覚がヒシヒシと伝わってくる。これで疲弊してしまわないのは相当に知力能力が高いんだろうな。次がアメリカ的価値観。ここで私は、アメリカは嫌い!と感じる。ところが、次は別の視点からのアメリカの一端。ここで私は、ああこれだからアメリカに魅力を感じる人は多いんだ、と納得。行ってみたくなる、住んでみたくもなる。好きにもなる。そして最後に、このような家族員に恵まれて才能に恵まれていいよなあ、とため息をつく。とまあ、すごく身近に感じつつ別世界を覗けるって結構貴重なんだな。自分的ヒット本。
by kienlen | 2007-10-17 23:33 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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