『八ッ場ダムは止まるか-首都圏最後の巨大ダム計画』

これも岩波ブックレットでNo644。この本を買ったのは一昨日だ。紅葉が始まりかけで見事な景観を見せる吾妻渓谷を走っている時に、巨大なコンクリートの柱が山の中に出現していた。その時同乗していたのは地元の人。1人などは、ダム建設によって移動される道路に自宅がかかるということで、引越しした当事者である。とにかくその巨大なコンクリートの塊を素人が見ても、なんであんな場所に建設するのか分からない。「あれ、何ですか」と尋ねると「橋を架けるんだよ」との返事。「えー、どことどこを結ぶんですか。山の頂上にかかっちゃうじゃないですか」と無知な自分の無知な問い。だって、どう見てもそうとしか言いようがない。あのてっぺんからどうやって降りろというんだろうか。技術の力というよりも、これまで存在してきたものに対する畏敬の念のなさに唖然とする。「だって、この辺は全部水没するからね。ほら、あそこにトンネル作りかけているけど、あれが新しい道路だよ」とはるか上の方を示されて見ると、クラクラしてくる。お恥ずかしい話し、それで初めてこの地区のダム建設計画を知ったのだった。

それまでもここらへんの地域の人々にとって「ダム」が重要なポイントであることは感じていた。別に反対運動している人でなくても「国のやり方は巧妙よ、地域を壊すのよ」と静かに言っていたし、それはプルトニウム処理施設建設の反対運動が鎮圧される様子も出てくる『六ヶ所村ラプソディー』でもはっきり描かれていたことだ。機動隊まで出動して漁民を弾圧するあの場面と、渓谷に位置する川原湯温泉の人達の当時の怒りを想像しながら、当日に偶然見つけたこの冊子を迷わず買って読んだ。年表を見ると、ダム計画が持ち上がったのは戦後間もない頃で、当然に怒った地元の人々の反対運動はだんだん後退していく。冊子で中心的に扱っているのはこのダムの問題点だ。活火山である浅間山画噴火した場合の危険はもちろん、地盤の脆弱さ、古代から人が暮らした場所が水没することなどなど、あまりに大きな問題が解決されないまま予算規模ばかりが膨らみ、国民の税金が巨大に投入される。脱ダムが主流になっている時代にこれ。東京の水不足を補うという目的が当初はあったとしても、今や水余りである、という指摘。フツウに考えたって戦後の工業化推進の頃と人口減少期に入ろうとする現代じゃあ違うでしょうに。一旦計画されると次々と担当者が代わり、無責任なままに進行していくという恐ろしい図が薄い冊子を通じて丸見えになっている。
Commented by jun at 2007-10-12 23:17 x
少しのごぶさたでした。
まさに、おっしゃる通りですね。そしてこのカラクリも少しづつ明らかになってきていることはいいのですが、まだですよね。
先週私は
「ダム疑獄 反対する者 湖(うみ)の底」 という川柳を広告で載せたところです。今更という気が自分でもしますが、でもまだ済んでいない問題であるのでどうしても載せたかった。こちらの角間川流域協議会は一応終わりましたが、最後には座長の独断で記者会見でダム復活を口にし馬脚を現しました。
今は、可能性の低いどさくさの駆け込み建設を狙っているのが実態ですので、正に金目当て、いや談合による先行投資の回収にやっきになってしているのでしょうね。長年に亘る涙ぐましい役人さんのご努力とむしろ被害者の業者さん、共にご苦労様です。と言えるようになりました。
Commented by kienlen at 2007-10-13 13:40
来週、ダムに沈んだ村の映画が上映されますから行くつもりです。どさくさの駆け込みして後に残るものは何なんでしょうかね。
Commented by 清澤(渡辺)洋子 at 2007-10-28 16:37 x
ブックレットをお読みいただき、ありがとうございました。一週間後に東京でシンポジウム『ダムに負けない村』を開催します。「ダムに沈んだ村」の映画監督も登壇されます。お知らせまでに。
Commented by kienlen at 2007-10-29 09:04
清瀧(渡辺)さん、情報ありがとうございます。もうちょっと東京に近かったら行きたいのですが…。映画は一両日中にも見る予定です。
by kienlen | 2007-10-12 10:23 | 読み物類 | Comments(4)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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