『変わる保育園-量から質の時代へ』

岩波のブックレットNo709。このシリーズは今日的な課題を易しく解説してくれるもので何かについて知る時の取り掛かりとして便利だ。雑誌の特集ページを小冊子にまとめた感じ、抜き刷りってところだろうか。著者は「保育園を考える親の会」代表でライターの普光院亜紀さん。ウチは2人とも迷わず保育園だったが、子供にお勉強させることが好きなタイ人はよく「保育園は遊ぶだけで幼稚園は勉強教える」と言って保育園をバカにしたような風だったが、実際のところ一概にそうとは言えない。しかし早くから文字を教えられて、机に向かう習慣をつけられるタイの人が一般的には生涯学習的でないように感じられるのはなぜだろうか。もっともこんな事は余裕のある社会にならないとできるわけないか…。なんて話しが出てくる本ではなくて、幼保一元化なんて一時期の話題はどこへやら、認定こども園なんていう、いまひとつよく分からない制度が誕生したり民営化、規制緩和の波を受けないわけにもいかない保育園が持つ本来の役割と今と今度を考える本だ。とっても分かりやすくまとめてあって参考になる。

なんといっても難しいのは、保育だとか介護だとか教育だとかを市場化することの是非だろう。この本にも出てくるが保育サービスという時の「サービス」の受け手は誰かということである。子供が直接の相手だとしても選ぶのは親であるし、結局親の意向を反映することになるってことがいいのかどうか。もちろんいいとは言えない、というのが著者の主張だし、私もそう思う。もちろん「子供のため」なのだが、一体何が子供のためになるんだ。保育園の機能としてひじょうに重要なのは格差社会の中で階層縦断的な交流ができる場であるということ。少し前までは義務教育段階の学校だってそうだったが、ここまで私立が幅をきかせてくるとそうも言えなくなる日は近そう。保育園が今の制度で運営される限り、貴重な場となる可能性は高い。日本のような意味で保育園と幼稚園の区別がなくて、格差社会で、階層を縦断する場のないタイのようになって、いい事があるのかどうか、私には思い浮かばない。
by kienlen | 2007-10-11 23:26 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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