新書の楽しみ満載の『これが憲法だ!』

長谷部恭男と杉田敦の討論本。分りやすくてすごく面白かった。2人とも1950年代後半の生まれで私も同世代。この年代の人になんとなく感じるのは、理想主義的ではない、押し付けがましくないというところだろうか。そういえば聞こえはいいかもしれないけど、夢がなくて閉じている、ともいえる。杉田敦はもともと好き。でも、それでこの朝日新書を買ったわけではなくて、この間読んだ宮崎哲弥の新書紹介本で長谷部先生への評価がとっても高かったので、それはなぜだろうと読んでみたくなったのだった。で、本棚を見たら未読のがあったのだが、本屋に行ったらこっちがあって、こっちを優先させてしまって長谷部先生の『憲法とは何か』は後回しになった。憲法学者と政治学者の対談なのだが、杉田敦の突っ込みが面白いので終始楽しめた。9条なんか即刻変えろみたいな宮崎哲弥だったけど、その宮崎からも評価の高い長谷部先生を含む2人の最終的結論は、憲法を変える合理的理由はないでしょ、というものだった。それがなぜかの説明とも言えそうな1冊なのだが、なるほど憲法って奥が深いんだ、と深くため息をついた。

各章のタイトルは「憲法はデモクラシーを信じていない」「絶対平和主義は立憲主義と相いれない」「憲法解釈は誰のものか」「絶対的な権利なんてない」「あらゆる憲法は『押しつけ憲法』である」『憲法を今変えることは無意味である』というもの。これだけでも相当な情報量であるな。どこを取ってもスリリングで、杉田先生が油断して馴れ合いになるような箇所が全然ない、というまとめ方をしている。今は緩いとか癒しがキーワードみたいな時代だが、それには逆行しているのがまず私には好感である。こっちは本気で読んでいるんだから本気で討論してくれ、それを本気でまとめてくれ、とまじめに思っちゃう年代なのだな、きっと。最後の方でやっと笑みが登場する場面は杉田先生のこの質問。「…首相の任期を変えるとか、自治体とか、九条以外の統治機構を少しいじってみることが、いまの人びとの閉塞感みたいなものを変えるとか、何か癒し効果は期待できますか」。長谷部先生の答えは「憲法は、人びとの閉塞感を癒すためのものだとは思いません(笑)」。杉田先生が鋭い質問を、でもポップな感じで投げかけ、長谷部先生はあくまで襟を正してきちんと答える。ディベートと漫才をミックスしたみたいだった。憲法というものから一歩も離れることなく、ここまで飽きずに読ませるって感心。こういう本は新書の楽しみって感じがする。
Commented by jun at 2007-09-24 09:44 x
私のまだ知らない良い本を紹介いただき有難いです。
長谷部先生は少し上の年代ですが、杉田先生は私と同じ1959年生まれで、4月生まれも同じと知り親近感を覚えました。
ちなみに宮台真司さんも59年生まれで、ネットの番組でよく見ます。
話は変わりますが、安部首相退陣表明の夜、私はS毎日新聞の某記者から電話取材を受け、改憲論議に関連して思っていることをお答えしました。翌9月13日の31面に多くの県内の声の一人として、短いコメントにまとめられ載りました。
数年前までは、まだ護憲派は改憲論議をすること自体に拒否反応がありましたので、今は隔世の感があります。
ディベートと漫才、いいですね。
私は回文しか出来ませんので簡単な近作を一つ。
お辞めになつた方には悪いですが、
「嘘つきは、キツそう。」ウソツキハキツソウ
でした。
Commented by kienlen at 2007-09-24 19:58
それ読み逃しました。S毎日新聞は束ねてしまった。内容を知りたいです。ここで紹介していただく…のは無理ですか。
Commented by jun at 2007-09-24 21:17 x
大したコメントではないのですが、リクエストですので、一部伏字でご紹介します。

[毎月有志で憲法について学び、現憲法について尊重する立場のN市のJさん(48)は「遅かれ早かれやめると思っていた」と冷静な受け止め。首相辞任は、自民党内に影響するとみており、「今後は自民党内でも護憲派の発言力が高まり、冷静な議論が期待できるかもしれない」と話した。]

記者さんとは急いで15分位話したのですが、あくまでも記者さんの「まとめ」です。当日は首相退陣への驚きの声が多かったですが、10日程たった今、必然というか冷静に受け止められていますし、タカ派も少し引っ込んだ気がしますので、当たらずとも遠からずで、訂正したくなる恥は避けられた気はしています。また、記者さんは「華氏911」をようやく見て、事実認識を新たにしたとも言っていました。
Commented by kienlen at 2007-09-27 09:15
どうもご丁寧にありがとうございます。新聞のコメントが記者さんのまとめであることは理解してます。華氏911は私も見ました。ムーアの次作も見たいです。
by kienlen | 2007-09-22 10:32 | 読み物類 | Comments(4)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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