迷った挙句の『つっこみ力』はまあまあ

『つっこみ力』を読んだ。著者は自称パオロ・マッツァリーノで本名は不詳。何度も書店で手にしながら、まあ読むまでもなさそうかな、と棚に戻していたのをとうとうつい先日暑さにつられて買ってしまった。この人のは『反社会学講座』というのが大変面白くて2作目も読んで、これは3冊目。一貫しているのは、議論は正しければいいってもんじゃなくて、面白くないと誰も聞かないでしょ、ということで、あとそれから、社会科学に関しては正しい理論ってのも怪しいですよ、と呼びかけていること。それを例を挙げて解き明かしていくというスタイルは共通しているようだ。今回は、メディアリテラシーなんて分かりにくい言葉を使うよりは、リテラシーを「つっこみ力」という日本語にして、ボケとつっこみの掛け合いの解説なんかもした上で、漫才仕立にしてある。私は基本的にはおふざけ系は好きで、それに皮肉も好きだから、その上で社会科学の知見を披露しつつ、巷に流布している説を案外マジメに解剖してみせる、という方法を楽しんでいる。

今回具体的に俎上に載っているのは、平成10年に急増した自殺者の統計である。データの使い方についてつっこんでいるのは毎度同じで、今回もそれを踏襲している。定説では、この時の自殺の増加は失業率の増加と相関関係にある、ということになっているらしい。そこでつっこみ力を駆使して、本当か?の検証になる。まず諸外国の自殺者と失業率の相関を見ると、必ずしも連動していない。そこで、じゃあ一体自殺の原因をどう分類しているかってことを警察に問い合せた人の資料を使用。すると実は負債を原因にしているのが一番多いのだった。世論にひっぱられて原因を失業に求めやすくなっているのかもね、という疑惑が生じる。で、庶民の負債といえば住宅ローンじゃないかってのが著者の直感。すると大発見。この5年前に住宅金融公庫が売り出した「ゆとりローン」に行き着く。5年間は返済金額をうんと抑えるが、6年目からはぐっと跳ね上がる。それが平成10年でしょ、ってこと。そしてその背景にはアメリカの圧力があって、住宅購入によって内需を拡大せよ…。とまあ、こんな展開になると、なるほど、と思ってしまう。罪作りな国策は多いんだ。暑い最中に読むものとしてはまあまあの面白さ。
Commented by ワイン at 2007-08-13 03:46 x
「本当?その根拠は?」とつっこんでは、嫌な顔をされているので、その本を読んで納得感を得、ほっとしたいです。それにしても、日常につきあたる不消化事項にせまってくれる本はけっこうあるのですね。そういう本を知っているkienlenさんにいつも敬服。あー、じっくり本を読みたい。
Commented by tate at 2007-08-13 06:06 x
溶けそうに暑いです。暑い上に家族がみんないるからとても「険悪」です。穏やかに暮らせるように家族がお互いに努力、というか気づかいしないとこうなります。
私ばかりが家族にお伺いたてるのが嫌で放棄したら、あっというまに険悪になりました。息子がまた壁を蹴りました。
この家を建てたのは平成5年。よちよち歩きの可愛かった息子がこうなるなんて・・・。うちの担当の営業マンは「あのローンに手をだしては絶対駄目です。破たんするに決まっています」とちゃんと言ってくれました。妙に覚えています。
Commented by kienlen at 2007-08-13 09:14
ワインさん、私も「なんで?」と聞いては嫌な顔されるどころか「サービスしろよ」などと言われ「それ、どういう意味?」と聞いてしまってますます呆れられるということはままありますが、めげないように本を探してはスキルアップに励んでいます。じっくり本より、私は旅の方が羨ましいですよ。いいなあ。
Commented by kienlen at 2007-08-13 09:24
tateさん、ウチは夏休みは娘が山の家に行きっぱなしで夫は盆正月無関係に店営業だし私は飲み歩いているので目先の険悪さは避けられていますが、先延ばししているだけの気もする。そのローンみたいなものかもしれない。その時は日本にいなかったしローンのことは知りませんでしたが、この本を見る限りひどい内容でした。分かっていて組むかなあ、という疑問がよぎります。お宅の担当営業マンがまっとうな人で良かった。
by kienlen | 2007-08-12 20:57 | 読み物類 | Comments(4)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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