食欲に注目することで他を忘れる技磨き

浅田次郎の『王妃の館』という上下2巻の小説をやっと読み終えた。面白いんだろうけど、ちょっと長かったな。倒産の危機に瀕している旅行会社と、伝統だけでは行き詰まっている感のあるベルサイユのホテルが共謀して、同じ部屋を二重に売るというツアーを作るのだが、片や20万弱のフツウの値段で、片や150万の豪華ツアーで、ちょうど人生そのもののような、光と影ってことになる。参加者の人間模様と、交錯ぶりという現代の物語と、ルイ14世王時代の王宮の様子が絡み合っているわけだが、重要な役割を担っている人物が王様のための料理人。亡き娘に届けるつもりで愛情たっぷりの料理を考案して7年間で一巡するしかけになっている。料理と愛について自説をぶちまける場面もあって、そこはなかなか感動的であった。前にタイでお坊さんになった日本人男性と話してた時に、出家によって抑えなければいけない欲望で最も辛かったのは何かと聞いたら、性欲ではなくて食欲だと答えていて妙に納得してしまったが、生きる基本は食であるに違いない。

そんな当たり前すぎて面白くもないことを考えてしまうのは、悉く腹のたつことばかりの息子へのイライラが募って自分が辛い状況の中で、たったひとつ救われるのが彼の食欲であるからだ。高校生の男の子と言えば食べ盛りだから当然だが、この子は赤ん坊の時から食べ物に対する欲求が強くて、いくら機嫌が悪くても食べ物を見るとご機嫌になる。みんながみんなそうじゃないということを知ったのは娘ができてからで、彼女は損ねた機嫌を食べ物でごまかされるということはなかった。それに育児に関する悩みの一大潮流をなしているのは「食べない子」であることも知っている。夏野菜が豊富な時期だ。今夜はそれらをたっぷりと、アサリのスパゲティにした。塩と胡椒だけで充分美味しい。部活から帰った息子は、このところずっと続く無口のままだが「腹減った」だけは言う。多すぎるから残るだろうと思っていたスパゲティは残らず、茹でてあったとうもろこしを食べ「枝豆食べる?」と聞くとうなずくから茹でたら食べ尽くし、自分で食べようと思って作った丸ナスのおやきも欲しがるので与えたら「にんにく醤油で食べると旨い」と言うからにんにくも与える。それを食べながら「ここにパクチー入れたらいいかも」と言う。パクチー味噌のおやきか、いいかも、と思うと少し楽しくなった。高校生男子との日々は「原点に戻る」で乗り切ることにしよう。
Commented by jun at 2007-07-30 08:09 x
普通に食欲があるっていいですね。でも、男の子って何かにつけ心配ですねよ。
Commented by kienlen at 2007-07-30 11:12
心配というか、なんというか、理解できないです。まとまりがない。
by kienlen | 2007-07-28 21:10 | 家族と子供の話題 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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