『不安の正体!-メディア政治とイラク戦後の世界』

4人が話しているから対談でも鼎談でもなく、何だろう。帯には「徹底討論」と書いてある。メンバーは金子勝とアンドリュー・デウィットと宮台真司と藤原帰一で、私はアンドリューさんは全く知らない。それに彼の発言は少なかった。社会学、国際政治学、経済学とそれぞれ専門分野の違う人達が困難な時代の出口を求めて討論するというのが目的。この厚さで内容で1800円は新書を2冊半読むよりお得にも感じる。主にはブッシュ政権のアメリカが論じられているのだが、2004年の発行なので、地方の書店に置いてあって、それを発見したのも何かのご縁のように感じる。だって、この間の情勢の変化は大きいし新刊じゃないし、ああ、それとも筑摩書房の常備図書セットのひとつだったのか、でもまだ初版かあ…なんて、どうでもいいことを考えつつ、しかしこれを2~3年たって読むのは、専門家ではない私なんかにはちょうど良かったと思う。少し事態が進展してからだと知識不足がその間の政治経済社会の流れの文脈で補足できるところがあるような…。

これを買った理由は帯に並んだキャッチフレーズである。いいとこ突いている。「不安の正体」というタイトルもいいが、踊らされるな!/反戦ロジックが力を失った理由/グローバリゼーションとは何か/反米ナショナリズムと知識人/コモンズが破壊され続けた日本…どれも「ああ、それそれ」ってツボを刺激する。もっともそのツボマッサージで気持ち良くなるかというととんでもない。討論のテーマは多岐に渡るが、国際政治においては、圧倒的な力での優位ゆえにルールを無視するアメリカを多国間主義という秩序に入れるにはどうしたらいいのかというのが重要だが、方法は難しいねえってこと。ここのところの日本政府はただただ闇雲にアメリカ追従という世界でも稀有の政策を取っていてリスクをヘッジしてないってこと。社会学的には、宮台先生の解説はとっても分かりやすくリアルで合理的であると私などは感じる。つまり今の変化、信頼→不安と監視社会へ、社会より国家へという方向が何を意味するかということ。従来の枠組みでの分析はもちろん、ただそれを組み合わせるのでもダメ、リアルな対抗手段じゃないと役に立たないよってことは、論者に共通していたようだ。テレビでもなく映画でもなく活字の醍醐味を味わえるのがこの手の本かと思う。次は昨日友達から借りた『死なないでいる理由』の予定。
by kienlen | 2007-06-12 10:57 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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