眠れなかった夜の『官僚とメディア』

昨夜はとんでもない出来事があって対応に苦慮。ショックも大きくて珍しく眠れない夜を過ごした。周囲は精神的な病で「眠れない」とこぼす人が割と多いので、その人達に思いを馳せながらこの間まとめ買いしてあった枕元の文庫本を1冊手にして、あまりの面白さに結局最後まで読んでしまった。それが魚住昭『官僚とメディア』。相変わらず冴えわたっている。とても良かった。文章がすんなりしているのでひっかかりがなくて明快で読みやすいのがいい。素がしっかりしていれば装飾は不要の典型。私はモノによっては装飾過多も嫌いじゃないけど、歳のせいで脂っこいものが苦手になってねえ、というのと似たようなもので、まどろっこしくしないでそこはストレートにいってくれ、って方向になっている。いずれにしろ半端はヤダなと思うと、この人のは好感度超高。趣旨はタイトル通り。帯は佐藤優氏絶賛!という宣伝文句の下に「国家もマスコミも内側から壊れていく」とある。この2人が並んだら買ってしまいます、という私のような者の心理を突いてる。「現代」と「アエラ」に書いたものが中心だそうだが、私はどっちも読まないのでこうして本で読む。

帯の通りに、組織崩壊の兆しを描いているという面はあるけど、やはり怖いのは、崩壊するならそれはそれでカオスの可能性もあるけど、もしや新たなものが生まれる可能性もあるが、ここまでになった組織は崩壊しないんじゃないかと思ってしまう点だ。傷だらけで品位もかなぐり捨ててあがく方が潔く崩壊するより怖い、と思ってしまう。ここで直接取り上げているのはメディアと官僚組織だけど、これに限らず既成の組織の多くは、あの頃は余裕があったのに今じゃあ組織内の締め付けがキツイという共通点はあるみたいだ。そして構成員の士気は落ち、そして…。となると組織の定年みたいなものを設けたらどうだろうか。もう50年で解散とか。なんて冗談はさておき、ライブドア事件、耐震偽装事件の本質がどこにあるか、どれも震えるような内容であるが、圧巻は例の裁判員制度の広報活動における最高裁と電通と共同通信と地方新聞の4位一体の図。これがいかに戦前の体制に似ているかが明示される。やはり組織と単純にくくるわけにはいかないのだった。メディアと官僚組織が癒着しながら旋回しながら剣だか鉄砲だか振り回すの図を想像すると、私らどうするの、って想像できない。解に解に恐ろしい。それでますます眠れなくなったのかも。眠れない夜じゃなくても読む価値はあると思った。
by kienlen | 2007-05-14 10:58 | 読み物類 | Comments(0)

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