『移民社会フランスの危機』を読む

すごく面白い本だった、満足満足。岩波書店でハードカバーで2800円(税別)、著者は宮島喬先生で大学の先生、という外見からすると学術書のようでもあるが、すんなり読める文章だし、引用はあるけど引用だらけでもなく、基礎知識はある程度は必要だけど、何とか理論にのっかっているというわけじゃないから、理解できないってほどではない。こんな風に教えてくれると分かりやすくてありがたい。で、これはどういう性格の本なんだ、と思っていたら最後の最後に宮島先生が書いていた。「研究書ではないが-」と。エッセイや一部分を取材したルポでは物足りない、体験記は範囲が狭いし、と思っている人には最適な本かもしれない。私はフランスに旅行さえしたこともなく他に比べて興味があるわけではなく、とにかく何も知らない。でもなんでこれを読んだかというと、フランスの移民社会ってどんなものかをのぞいてみたかったからに尽きる。これまでも2-3冊は読んだことがあって、それがいずれも興味深いものだったということもあるが、この本はその集大成みたいな感じだった。

移民社会の研究だと、アメリカやオーストラリアやカナダなんかが多文化主義を基礎において、いろいろ模索している様子は報告されているが、フランスはこれらの国と違って「統合」を自明のこととしている。この言葉は、一般的には嫌われる「同化」のようでもあるが、それを曖昧にしているのがフランスであるらしい。だから読みながら、ちょっと、何も具体的に示さずに「美しい国」という抽象的な概念がそのまま人々に共有されるものとして存在するかのごとくの、どこかの国のことを思い浮かべてしまった。それはともかく、統合という時に何を統合するかである。よく異文化とか異文化理解とか言うように、まず浮かぶのが文化。で、問題は文化的に統合した場合に社会経済的な統合もなされるとみなすかどうかだ。フランスでは国籍取得はそう難しくない、というより、共和国国民はフランス人であるという基礎にたっているから、国籍付与は当然だし、原国籍を捨てろとも言わない重国籍容認である。すごく開かれているように見えるが、なぜ一昨年のパリ郊外の暴動が起きたのか、移民排除の国民線戦が支持を得たのか、などが、ここを入口に考察される。例えばアルジェリア移民2世がフランス国籍のあるフランス人だからって、白人同様に就職できるのか。ここでアファーマティブアクションはとれない。なぜなら人は皆平等だから…。日頃疑問に感じていることが具体的に示されていて大変考えさせられる。これはフランスの研究だが、提示されるのは普遍的な問題だ。この「普遍」がまたネックでもあることも重要なテーマになっている。買う時は、このボリュームで読めるかな、と自信なかったが杞憂だった。かゆい所に手の届く本だった。
Commented by pon at 2007-02-07 10:37 x
いつも感心しますが、、読後感をつづった文章に、とってつけたような飾りが無く、興味を引かれます。
Commented by kienlen at 2007-02-07 18:40
ponさん、ご感想ありがとうございます。興味をもっていただけるととても嬉しいです。またしばらく本を読めない状況になりそうですが、時間ができ次第次にいきたいと思っています。
by kienlen | 2007-02-06 10:39 | 読み物類 | Comments(2)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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