『子どものねだん』を読む

「バンコク児童売春地獄の4年間」というサブタイトルがついている。昨夜、仕事が一段落したので読み始めたら朝方近くになってしまった。続きを今朝から読んで読了。おかげで納品やコピー取りを午後に回すことになった。1997年発行なので私が日本に帰国した後だ。書き出しの部分は読んだ記憶があるからどっかで立ち読みはしているが、あまりに残酷なので読む勇気がなかったのだと思う。冒頭部分から予想していたのは、子供売春の潜入ルポのようなものだったが、それは外れだった。オランダの病院でソーシャルワーカーをしていた若い女性である著者が、ポルポト派の殺戮から逃れてカンボジアからタイ国境を越えた人々のキャンプの子供達の学校に教師として赴任する。その後、キャンプから相当数の子供達が姿を消していることを知る。タイ軍の横暴の様子、彼らが関与して子供が売春宿などに売られていることを彼女は予想する。羽陽曲折を経て彼女はバンコクで子供達の救出活動を始める。全部が一人称で日記に近いような体裁なので、国際的NGOと渡り合う場面や、タイのカウンターパートや関わる人々が彼女の目を通して描かれる。私は著者の感情や葛藤が分かる、こういう主観的なノンフィクションは好きだ。

舞台がタイだし、彼女がタイ側のパートナーにしていたNGOは私も多分訪れたことがあるし、それにここに登場して中心的な役割を果たすタイ人男性の名前はウチの息子のタイ名と同じ、なんていうことだけでも身近に感じる。児童売春の話題はタイに暮らしていると避けては通れないものだ。でもそこに自分が飛び込むことのリスクも暗黙のうちに知っている。タイで人を殺すなんて実に簡単なことだってことも。著者は脅迫され襲われて怪我をしても活動を続け、もう明日にでも殺されるというところまでバンコクに留まる。救われた子供達のかなりがエイズに感染している。児童売春っていっても18歳以下だからね、という考えもあるが、ここに登場するのはみんな本物の子供だ、8歳とか10歳とか12歳とか。男の子も同じ。彼女がバンコクでこの活動をしていた時期は、私がバンコクで暮らしていた時期と重なっている。でも知らなかった。活動の当事者の書くものは、情熱のあまり一面的だったり、支援を引き出すためかというイメージがあって、私はそう読むほうではないが、ここまで命がけだとそんなうがった見方はできないし失礼だ。広い視野と情熱と行動力と愛情と冷静さに素直に感動する。買春男性の側の描写も多いのは貴重。これもやるせない気持ちになるが、さすがにソーシャルワーカーの著者は解決策も提示する。それから子供売買から利益を得るネットワークの巧妙さと非情さ、被害者の傷の深さを改めて知る。この組織力は国際的人身売買につながっている。読む価値のある本だ。
Commented by jun at 2007-02-02 13:42 x
本当に驚きというか、知ってて目を瞑っていたというべきか、解決すべき現実ですね。昨年、交番かどこかの配布物で、人身売買の国際組織とそのルートの図を目にしましたので、実態解明と対策は遅ればせながら講じられてはいるようです。が、生ぬるい。
確かにこういう問題は命がけですね。単に倫理だけの問題でなく、政治や国際ヤクザや経済も問題でもありますね。私に、私たちに、何が出来るだろう。やはり知ることからかな、そして熱い心で冷徹な行動か。
Commented by コアラ at 2007-02-03 14:39 x
早速アマゾンで買って読もうと思いました
Commented by kienlen at 2007-02-03 17:17
返金保障してもいいと思えるくらいの価値を感じました。ぜひ感想をお聞かせ下さい。結構ボリュームあるけどミステリアスな構成になっていて、それに翻訳もいいなと思いました。今まで読んでなかったことを反省しました。
by kienlen | 2007-02-02 13:22 | 読み物類 | Comments(3)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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