読まずにいられない『ウルトラ・ダラー』

昨夜、ちょっと一段落したのをいいことに手嶋龍一『ウルトラ・ダラー』の続きを読んだ。暇な時なら夜更かしもいいが翌日にひびかせたくないから途中でやめて寝た。こういうものは、前半はだいたい伏線だから展開はそう早くなくて後がやめられないようになっている。で、その後半に差し掛かったところで寝たんじゃあ、翌朝になってやめられるわけがない。それでコーヒーを淹れる以外はさておき読んでしまった。ううむ、すごく面白かった。ただ最後の満足感にちょっと欠けるので続編に期待したい。私が購入したのは5刷で、初刷からわずか1か月でこのペース。この内容だと売れないわけがないという面白さだ。最大の利点はとっても分かりやすいこと。スパイとかインテリジェンスものは若い頃大好きだったけど、翻訳ものばかりだったせいもあると思うけど、決定的な問題は、国際情勢について知識がないと理解できないことと、それから、登場人物や構成が複雑だとその理解に手間がかかって余暇で読むには重たすぎるということ。だから部分部分の気取った描写のカッコ良さとか、エピソードくらいしか記憶がない。例えばフォーサースの傭兵の話を昔読んだ記憶が、バンコクで本物の傭兵の人と知り合って甦るとかはあったけど、読んだ時点では何も知らなかったから分かってない。と考えると年を取ると読書の楽しみは増すのかもしれない。

ウルトラ・ダラーというのは、ひじょうに精巧な偽ドル。これの出所を追及していくうちに、東アジアの軍事バランスを覆すミサイルの密輸に行き着く、という話だ。拉致問題、北朝鮮の核問題、その他今の日本を取り巻く外交上の問題がてんこ盛りで、それがひとつの線上でつながっているのだから、臨場感と現実味がいっぱいで、しかも描写が軽快でスラスラ読めて、説明もかなり丁寧なので、乏しい知識だけであっても、読み進めれば分かるようになっている。サービス精神たっぷりという感じ。登場人物がいずれもカッコ良すぎて、あえて小説であることを主張しているようにも見える。電車の中とか細切れの時間でも読みやすくて、ここまでの情報量だからお得感がある。最後がちょっとロマンチックすぎる感じもあるけど…。ここで頭切り替えて仕事をする。
by kienlen | 2007-01-22 12:32 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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