『打ちのめされるようなすごい本』はすごい

携帯用にはこれ、就寝前にはこれ、集中して読むにはこれ、食事しながらはこれ、お風呂はこれ、という具合にTPOに合わせた読書だが、今、それどころじゃなく夢中になっているのがある。だからベッドからバッグに移動してトイレにも持ち込んで、という具合。お風呂だけは傷めたくない本は持ち込まないけど。米原万里『打ちのめされるようなすごい本』。「全書評1995-2006」と帯にあるように、書評なのだが、このタイトルはそのまんま、この本それ自体を形容するのにぴったり。まだちょうど半分くらいしか読んでないが、涙がでるほど感動する本、といっても、もちろん何だか流行のようになっているらしい感動本のような、人を泣かせる目的をもって書いているわけはなく、自分の無知や無力を知って、それから世の中を動かす論理の前で塵のような人間存在に涙がでるということ。

どれもこれも読みたくなるものばかりで、付箋を貼るにも貼りきれないし、それ以上に、読みきれるわけがない。という時に書評を読んでワクワクできるだけでも幸福で、これはまさにそういう本だ。さらに、こうしてまとまっていると、全体を貫く思想みたいなのも感じることができる。私達が簡単に摂取できる情報が、意識的であれ無意識であれ、いかに操作されたものであるか、声を出せない人の出口なしの状況、そして、それでも現場から伝えようとする人、それを可能にする仕組みもまだあるのだ、ということを知ることができる。アフガンやチェチェンの問題とは一体何なのかを、何も知らない自分が読むより、ロシアが専門の米原さんが間に入って解説してくれると分かりやすい。それから、実際のところ、知ることで絶望が深まるから、どうせどうしようもないんだから無知のままで日々を楽しく過ごした方がいいや、って気持ちがあるので、目をそむけてしまう事も、彼女の目を通すことで、すんなりと心に入り込んで小さな染みを残してくれる。この染みは、無力であってもないよりはマシだ。テレビや新聞の情報がどういう意味をもつのか、と考える一助くらいにはなるから。結構なボリュームでまだ半分残っている。早く読んでしまいたいようなもったいないような。
by kienlen | 2006-12-02 12:34 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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