『カポーティ』これは良かった

突然レイトショーで映画を見た。仕事が思いがけずはかどった上に、思いがけないキャンセルまで発生したので暇になった。他を前倒しするために学校の日本語指導の方を全部キャンセルしてしまったので、実に完全失業と同じくらいの暇になった、それも突如として。これって儲けものか損失か。ま、深く考えずに喜んでおくことにしよう。今日見たのは、ここのところの消極姿勢と違って、見たくて見たものだ。それは『カポーティー』。これは素晴らしかった。トルーマン・カポーティは『ティファニーで朝食を』とかが有名なんだろうけど、実のところ、私は今回の映画の主要テーマとなっている『冷血』しか読んでない。で、このノンフィクション・ノベルの傑作が書かれる過程と、作家の苦悩や身勝手さが描かれているとなれば見ないわけにいかない。

『冷血』というのは、1959年にカンザス州で起きた、善良な家族4人の惨殺事件を取材して書かれたもので、犯人の死刑執行を見届けるまで、作家は刑務所に通って詳細に話を聞き、事件の全容を物語りとして再現している。私がこれを読んだのは、フィールドワークについて学ぶ必要があった時で、いくつかの文献にこの本が紹介されていた。それで初めて、文学のありようを転換させるほどの価値ある作品だったんだと知って、慌てて読んだというわけだった。本の方はこの映画を機にか、新訳が出版されていてちょっと興味をもったが、私は、同じのを2度読むよりは別のを読みたいと思う方なので、今のところ買うのはやめている。でも、この映画を見てもう1度読みたいと思った。冷血執筆後、カポーティーが1冊も完成できず、アルコール中毒で死亡したとのクレジットが出たが、それはこの映画を見ると納得できる。本では、この犯人がここまで魅力的に書かれていたか記憶がないが、演じたのが『シー・ビスケット』のクリス・クーパー。繊細さと危うさと残酷さを表情だけで感じさせてくれる。主人公はもちろんだけど、他の役者もみんな良かった。観客は8人。死刑執行を前に作家と犯罪人が対面する場面では、客席からすすり泣きが聞こえた。
by kienlen | 2006-11-26 00:16 | 映画類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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