講演『EUの移民、脅威か機会か』

標題の講演会に行った。主催は経営者協会で、EU駐日欧州委員会代表部一等参事官広報部長という肩書きのコフラーさんというイタリア出身の女性が講師だった。通訳付きの講演会って、今までの乏しい経験からすると原稿を読むだけというスタイルが主で、一般論的でアドリブもなく面白みに欠ける、という印象をもっている。本日もその事例収集の日になりそうで、ただ状況的にはそれは無理もないことだと思ったが、質疑応答の時間が多めにあったのが良かった。ちなみに、話の内容は、EUとしての移民政策というのはなく国家単位で対応しているということや、日本では外国人の割合など2%に満たないのにEUでは10%であること、不法入国者の問題、社会的統合の問題、特にイスラム教徒の統合の難しさなど、特に目新しい情報や議論はなくて入門編というところ。短く抑えてくれたおかげで、こういう催しには珍しく質問の時間が30分以上あった。

早速、一緒に行った友人が手を挙げた。「オランダでは市民権付与に際して言語や歴史のテストをするというくだりに興味あり、内容を教えて欲しい」というもの。私も知りたい。講師の出身地イタリアでも導入を検討しているとのこと。私は、日本人と身分関係がありさえすれば自動的に永住権が与えられるよりも、永住しようとする国に関する基本的な知識習得を求める方が統合という観点からはいいと思っているから賛成。次に自分で尋ねた。「日本では外国人を移民と捉えた政策を取っていない。EUでも短期の出稼ぎ者も含めて一口に移民といってもさまざまと思うが、学校教育や2世3世におけるアイデンティティ問題などはどう考えたらいいか」と。「日本の外国人も移民で永住する人。トヨタの工場労働者も韓国・朝鮮人も」という認識には、アレと思ったが「移民のアイデンティティは公教育で扱う問題ではなくて親」という答えには同感。「社会的統合という意味で、移民の社会活動参加推進のためのプログラムは」などの質問もあった。でも私的に一番面白かったのは「日本は単一民族国家なので外国人受け入れに対する寛容度がEU諸国やアメリカよりも低いのではないか。人口減少を移民で補え、いや人口問題はさておき日本もオープンな国にせよ、との議論があるがこれについて意見を」というもの。

答えはひじょうに現実的で納得できるものだった。つまり、寛容とか心の問題じゃなくて島国で国境コントロールができるか、大陸内にあってそれができないかの地理的条件による差が大きい。受け入れる、入れないの議論などしても、来る人は来るのだから、そんな悠長な(という言い方はしなかった)感情論は無意味で、日本だって20年先には単一民族国家ではなくなるに違いない。毎日、移民と一緒にいて周囲にもそういう人が多い身から見ると、今もこんな議論しているわけ?というのが正直な気持ち。それに、相手は人間なんだから、制限をいろいろつけたところで、モノのようにおとなしくしているわけでもないし、意志がないわけでもない。経済界の労働者受け入れ議論でいつも不思議なのは、あたかも、外国人労働者なんて経済大国日本の前にひれ伏してコントロールされてしかるべきものだと考えているんじゃないか、とみえてしまうことだ。この質問にもそういう匂いを感じて笑いがひきつった。
by kienlen | 2006-09-21 19:56 | タイ人・外国人 | Comments(0)

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