オットン・ナ、という別れの挨拶の謎

バンコクで働いていた時の上司=社長はアメリカ人だった。といってもお母さんが日本人ということだし日本の駐在員生活も長かったとかで、話す分の日本語には不自由しないようだった。ただ書くことには興味ないようで、簡単なファックスでのメッセージ1枚でも「これ訳して」と頼んでいた。その社長のことで印象に残っているのは、何か新しいことを思いつくと「この仕事やりたいですか?」と持ちかけてきたことだ。これについては最後まで違和感を覚えたことを覚えている。日本の会社で上司がこういう言い方をするのだろうか、実のところ、私自身がもう何が日本的でタイ的でアメリカ的で、とかが分からなくなっているのだが、社会も人も変化しているとはいえ、あまり聞かない言い回しではあると思う。そんな事を思い出すのは、このところずっと日本語教師養成講座テキストを読んでいるからで、言葉をめぐってさまざまな思いが浮かんでくる。母語の影響、育った文化が外国語での表現方法にも影響するのは経験上からも想像上からも、当然だと思うが、それがまた逆に母語の方にも影響を与えるということもまた考えられる。

このご時勢だから周囲には海外留学や滞在の経験者がたくさんいる。もしやそのせいかと思うのが、例えば会話の中でドライブに行く話しがでた後の別れ際に「じゃ、楽しんできてね」と言われたり、朝方に別れる時に「良い1日を」と頭を下げられたりする時。日本的には「じゃ、」とか「元気でね」程度かと思っていたが多彩になっている、が、これっていかにも英語風ではないか。在住の長いタイ人の中には別れ際に「オットン・ナ」と言う人がいる。この単語はもちろん知っているが、この場面で使うのか、と、初めて聞いた時はびっくりした。ちなみにオットン=耐える、我慢する、ナ=終助詞。つまりどうやら日本人が言う「がんばってね」のようなニュアンスだ。7年間のバンコク滞在中に1度も聞いたことも使ったこともなかった自分はもぐりかも、と思ってその他のタイ人に聞いてみると「言う」という人もいるし「言わない」という人もいる。もしかしたら昔は使って今はすたれたのかもしれないし、バンコクではあまり使わないのかもしれないから確かめないと定かではないが、私的にはタイ的に感じられなくて日本語の影響説を採りたくなっている。
by kienlen | 2006-09-04 18:07 | 言葉 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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