『わたしの外国語学習法』を読んだ

ロンブ・カトー著、米原万里訳『わたしの外国語学習法』を読んだ。面白かった。でも、何が面白いのか説明しにくい。タイトルからハウツウ本のような印象を受けるが、そうではない。外国語学習の技術論とも言いがたいし、言語学の学術書ってわけじゃないし、通訳や翻訳者という職業従事者対象というわけでもなく、しかし、それらの面をいずれも含みつつ、とにかくひじょうに幅の広い本だ。外国語の成績が悪くて人文系に進学せず、大学では物理と化学を専攻したくらいなのに、その後の学習で10か国語の通訳者、16か国語の翻訳者となり、90歳を過ぎても外国語の習得に意欲をもやすというハンガリー人の著者の、体験談というのでもなく、自慢話でもない。こんな書き方は、択一式問題で解答が分からない時の消去法みたいだが、つまりひとつの解答に治まらない内容ってことで逃げておこう。

タイ語が少しできるといっても、体系だてて勉強したことがないので、それについて語るほどの知識も自信もない中途半端なものに留まっている。もっと勉強したい、でもこのへんに学校はないし他にやることもあるし時間もないし、と自分への言い訳をしている情けなさ。それに何より、この歳じゃあな、と。でもこの本は、そんな弱気心をひとまず忘れさせてくれて、読んでいる間は広い世界を自由に飛んでいる気分になる。著者の才能が私達フツウの者と同じとはとても思えないが、言語の習得の困難さは強調しつつも、誰にでも可能であることを、それ以上に強調しているから、絶望せずにいられる。外国語でコミュニケーションすることの楽しさを認めない人はいないだろうと思う。米原万里さんは、この本を訳したことで通訳の魅力を認識して職業として選んだそうだ。外国語に少しでも興味ある人なら多分楽しめると思うし、実用書的な面もある。
by kienlen | 2006-08-27 22:32 | 読み物類 | Comments(0)

信州で読んだり書いたり、時には旅したり


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